見知らぬ美女と一緒に異世界召喚され、お互い幽霊になりました。勇者たちよりも強い最強な俺たちですが、俺は彼女とラブコメしたいです

もぐすけ

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第八章 神の統治

一時帰国

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「カザナミ様にご挨拶致します。ユラヒメ様の従者をしておりますタコ五郎と申します」

 タコ五郎がちょこんと頭を下げた。悔しいけど、可愛いじゃない。何で私はさえないおっさんに弱いのかしら。

 私は負けちゃいけないと気を取り直して、エリコを指差してタコ五郎に用件を切り出した。

「彼女は聖女エリコ。日本に一時帰国させてくれるかしら。当然私もついて行くけど、問題ないわよね。夫も勇者レンについて行ったと聞いているわよ」

 タコ五郎は明らかに私にビビっている。勇気を振り絞って私に相対している感じだ。

「神霊様のお渡りの場合はサルタヒコ様の許可が必要です。カミナリ様も手順をお守りになられて、ヨロズ国にお渡りになられました」

 カミナリ様というのはゆうきのことだろう。

「いいわよ。サルタヒコに許可をもらって頂戴」

 サルタヒコは道案内の神だ。ヨロズ国への入国ビザは彼の管轄なのだろう。

「一日ご滞在の許可はすでに頂いておりますが、条件がございます」

「条件? いいわ、言ってみなさい」

「ヨロズ国では、常時カミナリ様とご一緒いただけますでしょうか」

 なるほど、そう来たか。だが、これぐらいの条件でヨロズの連中と揉めてもメリットはない。

「いいわよ。今は私はミサト、夫はゆうきと名乗っているの。ゆうきと一緒に行動することを約束するわ」

 タコ五郎が思いっきりホッとしている。私だって、誰彼構わず闘いを仕掛けるわけではないのに。失礼しちゃうわ。

「で、では、さっそくミサト様ご召喚の儀を手配致します。ゆうき様にも儀式の場でお待ちいただいております」

「あら、段取りいいのね。とても気に入ったわ。今度からヨロズ国に行きたくなったら、あなたのところに来るようにするわね」

 タコ五郎がギョッとした目で私を見ている。

「何よ、その目は。早く手配なさい」

「か、かしこまりました。ただいまっ」

 タコ五郎は海の中で門を開けるような動作をした。すると何もないところに扉が開き、洞窟の入り口が現れた。

「こちらにどうぞ」

 私たちはタコ五郎に続いて洞窟に入った。

「こちらの洞窟は海辺の神社の地下に続いております」

 海辺の神社というのは、私たちが藪神社と呼んでいる神社のことだと思われた。

「あの、ミサト、私には見えないんだけど、誰かいるのよね」

 エリコがおずおずと話しかけてきた。そうか、エリコにはこの大王イカが見えないのか。

「うん、大王イカの着ぐるみを着たおじさんがいるのよ」

「着ぐるみ?」

「そう。顔の大きさにくり抜いた穴から顔を出してるの。おじさんが着ぐるみ着てるのよ」

「な、なぜ?」

「ユラヒメの従者だからじゃないかな。ユラヒメの話知ってる? 昔の話にちなんでイカの衣装を来てるんじゃない?」

「ミ、ミサト様、これは着ぐるみではございませぬ。私はこういう形なのです」

 タコ五郎が我慢できなくなったのか、会話に割り込んで来た。

「え?」

 びっくりした。こういう形の霊なのか。でも、エリコに説明するのは面倒だから、着ぐるみということにしておこう。どうせ見えないんだから。イカの話はどうでもよい。エリコにはこれからのことを相談しよう。

「エリコ、日本ではゆうきと一緒に行動しないといけないみたい。となるとレンもくっついてくるかもしれないけど、大丈夫かな?」

「ええ、気にならないわ。家族に会う時間はもらえる?」

「もちろんよ。私はゆうきと一緒にいないといけないけど、あなたとはちょっと離れても問題ないから。滞在期間は一日だけだけど、もし、日本に残りたいなら、あなたは残ってもいいからね」

「ありがとう、でも、残らないよ」

「ミサト様、では行ってらっしゃいませ。ヨロズではイカ次郎が案内役を致します」

「ミサト様、お帰りをここでお待ちしております」

 ワインとタコ五郎が手を振っている。召喚の祝詞の声が聞こえて来た。周りの風景が歪み始める。霊には転移の影響は全くないが、生身の人間は酷く酔うらしい。

 バシンという音がして、風景が切り替わった。板の間の道場のような建物の中に転移したようだ。目の前に狐の面と尻尾をつけた巫女三名が床に正座しており、私たちの姿を見ると、平伏した。

「ミサト様、ようこそお越し下さいました。神霊様が隣室でお待ちです」

 エリコを見ると、案の定相当気分が悪いようだ。

「エリコ、大丈夫? 前に座っている三人は見える?」

「いいえ、見えないわ。ああ、気持ち悪い……」

「しばらく休んでて。私は隣の部屋にいるゆうきと話して来るわね」

 私は三人の狐面について、隣室に入った。だが、そこにゆうきはいなかった。

「イザナギ、これはどういうこと?」

 中にいたのはヨロズ国の神々の筆頭のイザナギだった。
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