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第八章 神の統治
海の交番
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門を開けて中に入るとタコがいた。本物のタコではなく、キャラクターのようなタコだ。真っ赤な体に白の縦長の楕円に黒点の目が二つあり、ハチマキをしている。どこかで見たような姿形だ。
「これは神さん、どちらに行かれはりますか?」
霊話が関西弁!?
「だ、だれ? あっ、俺、ゆうき。あれ? 俺、自分の名字忘れちゃってるよ」
「ワイはイカ次郎といいます。よろしゅうお願いします」
(ん? イカだっけか? イカは白かったような……)
「タコでおうてます。ワイはタコのイカ次郎なんです」
しまった。霊話してるんだった。
「そう、そういうこともあるよね。あ、こちらはワイン」
「ワインです。よろしくお願いします」
ワインが丁寧にお辞儀をした。
「イカ次郎さん、ここはどういうところなんですか?」
海の中にある小ぢんまりとした交番のような建物だった。周りは塀に囲まれてい、入り口は先ほど通った門だけだ。
「ああ、ご存知ではおまへんでしたか。交番です」
まんまじゃないか。でも、仕事あるのか? 誰もいないぞ。
「神さんの道案内と精霊の取り締まりが主な任務です。あと、稀に人間が来ることがあります」
「人間? こんな海の中にですか?」
「ええ、故国に帰りたいという人間を案内することがあります」
「ひょっとして日本に行けるんですか?」
「故国に送り届けるのもワイの仕事です」
「お、俺、故国日本なんですよ」
「神さんには故国はないです。そんなこと、イカでも知ってまっせ。神さんが嘘はいけません」
おっ、ちょっと怒ってるよ。それと、イカのこと馬鹿にするのね、イカ次郎なのに。
「嘘じゃなくて、日本に転生したんですよ。転生はダメなんですか?」
「神さんには神さんの縄張りがございますでしょう。ビザをご申請下さい」
ビザね、時間かかり過ぎるんだよ、神々との手続きは。そうだ。レンが帰りたいって言ってたな。
「一人人間で故国に帰りたいってのがいるんです。その付き添いってことで、俺も日本に行けないですか?」
「そんな面倒なことなさらず、ビザを取られたらよろしいのでは? ホンマ変わった神さんですなあ。まあ、霊体であれば、付き添いは問題ないですよ。でも、滞在は一日だけですよ」
「俺、霊体だよっ」
「知ってまんがな。神さんでっしゃろ。見れば分かりますがな」
「よっしゃあ! すぐにレンを連れてくるぜっ! あ、付き添いって何柱までですか?」
「一柱までです」
「そ、そうか。ミサトはエリコさんに連れて行って貰えばいいか。よし、ワイン、レンを迎えに行ってきてくれないか」
俺はワインに用事を頼むことにした。
「はい、どちらに行けばよいでしょうか?」
そうか。ワインにはレンのことは話していないかもしれなかった。
「レンって勇者が流された島だ。どこか分からないから、エリコさんかキララに居場所を聞いて、日本に帰るぞって、連れて来てくれないか」
「かしこまりました。ゆうき様はどうされますか?」
「イカ次郎さんと話しまくる」
ワインは頷いて、すぐに大陸へと戻って行った。
「神さん、勘弁してくださいよお。ワイにも仕事があるんですから」
タコのくせにうんざりした表情するなよ。
「イカ次郎さん、イカ次郎さんは霊の中ではどんな位なんですか?」
何となくだが、イカ次郎の俺への態度から、神にもそれなりに発言力があるような印象を受けた。ワインもイカ次郎には丁寧な態度だった。
「霊帝です」
「霊帝?」
「神さん、ひょっとしてまだ転生したばかりで、記憶の整理中でっか? 霊帝は神霊様の次席です」
「ってことは、霊王よりも偉いの?」
「霊王と同じ位です。でも、ワインはんがいないから言わせてもらいますが、霊王はたくさんおりまっしゃろ。霊帝は数が少のうおますから、希少価値がございますねん」
「そうなんですか。何柱ぐらいですか?」
「ここいらでは、ワイとイカのタコ五郎ぐらいでっしゃろ」
「タコ五郎? タコ太郎やタコ次郎はいないのですか?」
「おりまへん。タコ太郎は初代で、今は五代目ということです」
イカ次郎とは何だかとても話しやすい。
「この海の先はどうなってるんですか?」
「普通の海が広がってますが、所々に時空の切れ目がございまして、そこから精霊が侵入してくることがあるんです。それを取り締まってます」
「誰に頼まれたんですか?」
「ユラヒメ様です」
「日本の神?」
「はい、こことタコ五郎の交番との間は、いくつかの世界に繋がる神々の通り道になってございます。そのため、道を清く保つための護り番を一万年ごとの輪番制で担当しておりまして、今はユラヒメ様がご担当です」
「ユラヒメ様はビザを出してくれますか?」
「日本というのは人間がつけた島の名前です。正式にはヨロズ国です。ビザはサルタヒコ様のご担当です」
「サルタヒコ様にはどうすれば会えますか?」
「ワイには分かりまへん。ユラヒメ様にお取り継ぎすることは出来ます」
「ぜ、ぜひお願いします」
「次回は二百二年後にこちらにこられますので、そのときにお伝えしておきます」
そうだった。神々の時間感覚はこれだった。でも、頼んでおく。
「よろしくお願いします」
「ゆうき様、申し訳ないのですが、巡回の時間です。三時間後にもう一度お越し頂くか、狭いところですが、こちらでお休みいただけますでしょうか」
「俺も巡回について行きますから、ご心配なく」
俺も神なんだぜ。わがままなのだ。イカ次郎はジト目で俺を見ていたが、諦めたらしく、ため息をついて、トボトボと歩き出した。本当に人間臭い動きをするタコだな。
俺はイカ次郎の後に続いた。
「これは神さん、どちらに行かれはりますか?」
霊話が関西弁!?
「だ、だれ? あっ、俺、ゆうき。あれ? 俺、自分の名字忘れちゃってるよ」
「ワイはイカ次郎といいます。よろしゅうお願いします」
(ん? イカだっけか? イカは白かったような……)
「タコでおうてます。ワイはタコのイカ次郎なんです」
しまった。霊話してるんだった。
「そう、そういうこともあるよね。あ、こちらはワイン」
「ワインです。よろしくお願いします」
ワインが丁寧にお辞儀をした。
「イカ次郎さん、ここはどういうところなんですか?」
海の中にある小ぢんまりとした交番のような建物だった。周りは塀に囲まれてい、入り口は先ほど通った門だけだ。
「ああ、ご存知ではおまへんでしたか。交番です」
まんまじゃないか。でも、仕事あるのか? 誰もいないぞ。
「神さんの道案内と精霊の取り締まりが主な任務です。あと、稀に人間が来ることがあります」
「人間? こんな海の中にですか?」
「ええ、故国に帰りたいという人間を案内することがあります」
「ひょっとして日本に行けるんですか?」
「故国に送り届けるのもワイの仕事です」
「お、俺、故国日本なんですよ」
「神さんには故国はないです。そんなこと、イカでも知ってまっせ。神さんが嘘はいけません」
おっ、ちょっと怒ってるよ。それと、イカのこと馬鹿にするのね、イカ次郎なのに。
「嘘じゃなくて、日本に転生したんですよ。転生はダメなんですか?」
「神さんには神さんの縄張りがございますでしょう。ビザをご申請下さい」
ビザね、時間かかり過ぎるんだよ、神々との手続きは。そうだ。レンが帰りたいって言ってたな。
「一人人間で故国に帰りたいってのがいるんです。その付き添いってことで、俺も日本に行けないですか?」
「そんな面倒なことなさらず、ビザを取られたらよろしいのでは? ホンマ変わった神さんですなあ。まあ、霊体であれば、付き添いは問題ないですよ。でも、滞在は一日だけですよ」
「俺、霊体だよっ」
「知ってまんがな。神さんでっしゃろ。見れば分かりますがな」
「よっしゃあ! すぐにレンを連れてくるぜっ! あ、付き添いって何柱までですか?」
「一柱までです」
「そ、そうか。ミサトはエリコさんに連れて行って貰えばいいか。よし、ワイン、レンを迎えに行ってきてくれないか」
俺はワインに用事を頼むことにした。
「はい、どちらに行けばよいでしょうか?」
そうか。ワインにはレンのことは話していないかもしれなかった。
「レンって勇者が流された島だ。どこか分からないから、エリコさんかキララに居場所を聞いて、日本に帰るぞって、連れて来てくれないか」
「かしこまりました。ゆうき様はどうされますか?」
「イカ次郎さんと話しまくる」
ワインは頷いて、すぐに大陸へと戻って行った。
「神さん、勘弁してくださいよお。ワイにも仕事があるんですから」
タコのくせにうんざりした表情するなよ。
「イカ次郎さん、イカ次郎さんは霊の中ではどんな位なんですか?」
何となくだが、イカ次郎の俺への態度から、神にもそれなりに発言力があるような印象を受けた。ワインもイカ次郎には丁寧な態度だった。
「霊帝です」
「霊帝?」
「神さん、ひょっとしてまだ転生したばかりで、記憶の整理中でっか? 霊帝は神霊様の次席です」
「ってことは、霊王よりも偉いの?」
「霊王と同じ位です。でも、ワインはんがいないから言わせてもらいますが、霊王はたくさんおりまっしゃろ。霊帝は数が少のうおますから、希少価値がございますねん」
「そうなんですか。何柱ぐらいですか?」
「ここいらでは、ワイとイカのタコ五郎ぐらいでっしゃろ」
「タコ五郎? タコ太郎やタコ次郎はいないのですか?」
「おりまへん。タコ太郎は初代で、今は五代目ということです」
イカ次郎とは何だかとても話しやすい。
「この海の先はどうなってるんですか?」
「普通の海が広がってますが、所々に時空の切れ目がございまして、そこから精霊が侵入してくることがあるんです。それを取り締まってます」
「誰に頼まれたんですか?」
「ユラヒメ様です」
「日本の神?」
「はい、こことタコ五郎の交番との間は、いくつかの世界に繋がる神々の通り道になってございます。そのため、道を清く保つための護り番を一万年ごとの輪番制で担当しておりまして、今はユラヒメ様がご担当です」
「ユラヒメ様はビザを出してくれますか?」
「日本というのは人間がつけた島の名前です。正式にはヨロズ国です。ビザはサルタヒコ様のご担当です」
「サルタヒコ様にはどうすれば会えますか?」
「ワイには分かりまへん。ユラヒメ様にお取り継ぎすることは出来ます」
「ぜ、ぜひお願いします」
「次回は二百二年後にこちらにこられますので、そのときにお伝えしておきます」
そうだった。神々の時間感覚はこれだった。でも、頼んでおく。
「よろしくお願いします」
「ゆうき様、申し訳ないのですが、巡回の時間です。三時間後にもう一度お越し頂くか、狭いところですが、こちらでお休みいただけますでしょうか」
「俺も巡回について行きますから、ご心配なく」
俺も神なんだぜ。わがままなのだ。イカ次郎はジト目で俺を見ていたが、諦めたらしく、ため息をついて、トボトボと歩き出した。本当に人間臭い動きをするタコだな。
俺はイカ次郎の後に続いた。
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