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第七章 王国と帝国
女王
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風呂場は大騒ぎになってしまったが、面倒ごとは全てワインに任せて、ミサトは悠々と温泉を楽しんだ。
宿側は修理費用を請求したいそうだ。ワインは宿屋の事務所で、年配の支配人と若い女将と対面していた。
「何の修理費用?」
キララに化けたワインは、支配人に対してぞんざいに答えた。
「何をって、お風呂の壁の修復です」
「あそこならもう直したわよ」
「な、何をおっしゃって」
実はもうアオが完璧に修復したことを宿側は知らなかった。
「いいから、見て来なさいよ。話はそれからよ」
女王の機嫌を損ねるのは恐ろしいが、傍若無人な態度をこの宿で許すつもりは支配人にはなかった。支配人は命をかけて宿を守るのが使命だと自分に言い聞かせた。若い美人女将の前で格好いいところも見せたい。
使命に燃えた支配人は、額の汗を拭きながら、震える声で言い放った。
「しゅ、修繕費をいただけないようでしたら、出て行っていただきますっ」
「分からない男ね、女将、もう直したから、見て来なさいよ」
ワインは視線を女将に移した。女将はこんなことで命を掛けたくはなかった。「はい、ただいま」と返事をして、直ぐに仲居に見に行かせた。
しばらくワイン、支配人、女将の三人は気まずい沈黙を過ごした。様子を見に行った仲居が帰ってきた。
「完璧に直っていました。前よりも綺麗になっています!」
「何だと!?」
「だから言ったじゃない。騒がしかったのは謝るわよ。男湯からのぞいていた除き魔を懲らしめただけなのよ。もういいでしょ」
「し、しばらくお待ちください。自分の目で確かめて参ります」
そう言い残して、支配人は報告に来た仲居を連れて、部屋を出て行った。
その支配人たちと入れ替わりに、別の仲居が慌てて女将のところに報告にきた。
「あの、女将、女王様がご来館です」
「え? 女王様はこちらにいらっしゃるわよ」
「はい、そうなのですが、聖女様とご一緒に女王様がご来館されて、今、フロントにいらっしゃいます」
まずい、本物だと気づいたワインは、すぐに権現のスキルを解いた。
「え? 女王様がお二人? あれ? いないっ」
今さっきまで目の前にいた女王が消えていた。女将も仲居も目をパチクリして、しばらくワインの座っていた場所を凝視していたが、すぐにフロントへと向かった。
女将がフロントに到着すると、服装は違っているが、先程見たばかりの女王と聖女がロビーでくつろいでいた。
「もし、お付きの方、女王様はただいまお着きでしょうか?」
女将は恐る恐るキララのお付きの女官に声をかけた。
「そうです。女王様は特別室をご希望です。空いているでしょうか?」
そういえば、さっきまでの女王は、なんでも自分でやっていた。あの綺麗すぎるお付きの女性の方は何もせず、まるでお付きが女王で、女王がお付きのような関係だった。あの女王は偽物との結論に女将は瞬時に到達した。
「実は女王様の偽物と思われる方に特別室をご案内してしまいました。影武者の方でしょうか?」
話を聞いていたキララが直接話に加わってきた。
「偽物? どういうこと?」
女将は先ほどまでの経緯をキララとエリコにも説明した。
「その綺麗すぎるという付き人の方の容姿をもう少し詳しく教えて」
「身長は165前後でセミロングの若く美しい女性です。抜けるような白い肌と潤んだような大きな目をされています。髪の色と目の色は薄い茶色でした。プロポーションも抜群でした。あんなに美しい方は見たことがございません」
「その方、ミサト様って呼ばれてなかった?」
キララは身を乗り出して聞いた。
「そ、そうです。女王様の偽物の方が確かそう呼ばれてました」
「すぐに特別室に私たちを案内して。その方、女神様よ」
宿側は修理費用を請求したいそうだ。ワインは宿屋の事務所で、年配の支配人と若い女将と対面していた。
「何の修理費用?」
キララに化けたワインは、支配人に対してぞんざいに答えた。
「何をって、お風呂の壁の修復です」
「あそこならもう直したわよ」
「な、何をおっしゃって」
実はもうアオが完璧に修復したことを宿側は知らなかった。
「いいから、見て来なさいよ。話はそれからよ」
女王の機嫌を損ねるのは恐ろしいが、傍若無人な態度をこの宿で許すつもりは支配人にはなかった。支配人は命をかけて宿を守るのが使命だと自分に言い聞かせた。若い美人女将の前で格好いいところも見せたい。
使命に燃えた支配人は、額の汗を拭きながら、震える声で言い放った。
「しゅ、修繕費をいただけないようでしたら、出て行っていただきますっ」
「分からない男ね、女将、もう直したから、見て来なさいよ」
ワインは視線を女将に移した。女将はこんなことで命を掛けたくはなかった。「はい、ただいま」と返事をして、直ぐに仲居に見に行かせた。
しばらくワイン、支配人、女将の三人は気まずい沈黙を過ごした。様子を見に行った仲居が帰ってきた。
「完璧に直っていました。前よりも綺麗になっています!」
「何だと!?」
「だから言ったじゃない。騒がしかったのは謝るわよ。男湯からのぞいていた除き魔を懲らしめただけなのよ。もういいでしょ」
「し、しばらくお待ちください。自分の目で確かめて参ります」
そう言い残して、支配人は報告に来た仲居を連れて、部屋を出て行った。
その支配人たちと入れ替わりに、別の仲居が慌てて女将のところに報告にきた。
「あの、女将、女王様がご来館です」
「え? 女王様はこちらにいらっしゃるわよ」
「はい、そうなのですが、聖女様とご一緒に女王様がご来館されて、今、フロントにいらっしゃいます」
まずい、本物だと気づいたワインは、すぐに権現のスキルを解いた。
「え? 女王様がお二人? あれ? いないっ」
今さっきまで目の前にいた女王が消えていた。女将も仲居も目をパチクリして、しばらくワインの座っていた場所を凝視していたが、すぐにフロントへと向かった。
女将がフロントに到着すると、服装は違っているが、先程見たばかりの女王と聖女がロビーでくつろいでいた。
「もし、お付きの方、女王様はただいまお着きでしょうか?」
女将は恐る恐るキララのお付きの女官に声をかけた。
「そうです。女王様は特別室をご希望です。空いているでしょうか?」
そういえば、さっきまでの女王は、なんでも自分でやっていた。あの綺麗すぎるお付きの女性の方は何もせず、まるでお付きが女王で、女王がお付きのような関係だった。あの女王は偽物との結論に女将は瞬時に到達した。
「実は女王様の偽物と思われる方に特別室をご案内してしまいました。影武者の方でしょうか?」
話を聞いていたキララが直接話に加わってきた。
「偽物? どういうこと?」
女将は先ほどまでの経緯をキララとエリコにも説明した。
「その綺麗すぎるという付き人の方の容姿をもう少し詳しく教えて」
「身長は165前後でセミロングの若く美しい女性です。抜けるような白い肌と潤んだような大きな目をされています。髪の色と目の色は薄い茶色でした。プロポーションも抜群でした。あんなに美しい方は見たことがございません」
「その方、ミサト様って呼ばれてなかった?」
キララは身を乗り出して聞いた。
「そ、そうです。女王様の偽物の方が確かそう呼ばれてました」
「すぐに特別室に私たちを案内して。その方、女神様よ」
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