見知らぬ美女と一緒に異世界召喚され、お互い幽霊になりました。勇者たちよりも強い最強な俺たちですが、俺は彼女とラブコメしたいです

もぐすけ

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第七章 王国と帝国

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「ゆうきがこんな変態だとは思わなかったわよ」

 ミサトがご立腹だが、結構楽しんでいたように思うのは、俺の気のせいだろうか。

「いや、正常な男子の行動だと思うのだが」

「次やったら、別居だからね」

 多分、次も許してもらえそうだが、ミサトが落ち着いて風呂に入れなくなるのは可哀想だ。

「分かりました。次からはちゃんと許可をもらうようにします」

「本当にもう、何が優しいだけのへたれよ」

 まだあのセリフを覚えているのか。俺のせいではなく、浴室のせいだと主張しよう。

「なあ、ワイン。この風呂場は何でガラス張りなんだよ。襲って下さいといわんばかりじゃないか」

「モモが風呂はこういうものだと主張しまして……」

「あの子は頭の中まで桃色なのよ、きっと。まさか大神殿の風呂もガラス張りじゃないでしょうねっ」

「そのつもりでしたが……」

「あなたたち、常識ってものがないの!? そんなお風呂は却下よ。これから温泉宿を見せるから、そこのお風呂みたいにして頂戴」

「か、かしこまりました」

「何だか心配になってきたわ。建築する前に完成図か模型を用意してくれる? 事前チェックしたいわ」

「直ぐに用意させます」

 ワインがまた五重の塔に向かうというので、一緒について行くことにした。

「無線機なんてどこにあるんだ?」

「地下にあります。五重の塔はアンテナなのです」

「え? そうなの?」

 ミサトの「そうなの?」の顔がいつもとても綺麗で困っちゃうな。

「はい、地下への入り口は金堂にあります」

 金堂ノーチェックだった。ここにあるのは書物だけだと思って、隅々まで確認しなかったのだ。無線室への扉は、ドラマでよく見る書棚がスライドして、隠し扉が出るタイプだった。っていうか、俺たちには、これ動かせないじゃないか。

「その書棚はひょっとして、ワインしか触れないのか?」

「霊王はそれぞれ神器を持ってますので、霊王でしたら触れます」

「人間も触れるのか?」

「触れますが、動かせません。人間には非常に重たいのです」

 中に入ると秘密基地みたいな感じだった。通信機器がずらりと並んでいる。

「アオ、まだいる? どうぞ」

 ワインが無線機の電源を上げて、マイクに話しかけている。周波数は決まっているようだ。

「こちらアオ、今ちょうど出るところだった。何か用か? どうぞ」

「神霊様が大神殿を建設する前に設計図か模型をご所望よ。ガラス張りの浴室は絶対にダメとのことです。どうぞ」

「モモは人間の趣味をよく知っていると言うから、大神殿の設計にはモモの意見を大幅に取り入れている。ここ数百年、人間暮らしをされた神霊様にお喜び頂くためだが、モモの情報は信用してはいけない、ということか。どうぞ」

「その通りよ。こちらに神霊様がご一緒されています。ミサト様、何か申し付けることはございますでしょうか」

「アオが来てから直接話すわ。とりあえず工事はいったん中止よ」

「かしこまりました。アオ、わかった? どうぞ」

 アオが俺たちがいると知って、何だかドタバタしている雰囲気が伝わって来た。

「か、かしこまりました。クロに留守を頼んでいるので、建設ストップの伝言をしてから、そちらに向かいます。どうぞ」

「了解よ。早く来てね。切るわね」

 ワインが無線を切った。クロというのは戦争担当の軍人らしからぬ細い線の美男子だ。戦時には築城することもあるため、アオの代わりを務めるようだ。

「これで大丈夫でございます」

 ワインは少しホッとしたようだ。

「ワイン、ここにある書物はどんなことが書いてあるんだ?」

「お二方の小説でございます。ゆうき様が異世界転生もの、ミサト様が恋愛ものをお書きになりました」

「金堂は封印だな」

「ええ、すぐに封印しましょう」

「ええっ? 何故でしょうか。私どもは非常にありがたく拝見させて頂いております」

「面白いのか?」

「え? どういうことでございましょうか?」

「読んで面白いのか?」

「滅相もございません。面白いとかではなく、ありがたいのです。神霊様のお言葉一つ一つをありがたく噛み締めながら、読ませていただいております」

「どういった内容だ?」

「ゆうき様の小説の多くは、まずは追放から始まります。追放された主人公が実はとんでもないスキルを持っていて、追放した奴らをざまあして、なぜか突然モテだして、ハーレムを作る、という展開が六割ほどでしょうか」

「焼却だな」

「す、少しお待ちを。ミサト様の小説は、悪役令嬢が婚約破棄されて、これまた追放されるのですが、やんごとなき殿方から何故か溺愛されて」

「ストップよ、ストップ。それ以上は言わないで。焼却よ」

 俺たちは何でこんな黒歴史をせっせと作ったんだ? 理解に苦しむ。ワインが非常に残念そうにしているが、知ったことか。焼却決定だ。

「分かってるの? ワイン。一つ残らず燃やすのよ」

「い、一柱につき、ゆうき様の小説一冊、ミサト様の小説一冊だけ確保してもよいといったことはございませんでしょうか」

「ワイン、くどいわね。あなたも焼却するわよ」

「か、かしこまりました。直ちに焼却いたします」

 ワインはワイン色の涙を流しながら、全書を焼却したという。
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