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第六章 帝国
教皇
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俺はもう神社の話でお腹一杯なので、教会なんぞはどうでもよかった。男ばかりで面白味がないし、庇護欲も全く湧かない。自分から教皇に会いたいと言っておきながらどうかと自分でも思うが、興味がなくなってしまった。
ミサトの人間の男の好みは変わっていて、声変わりする前の男の子か、すっかり黄昏てしまったお父さんのどちらかだ。生殖能力の高い男は好みではなかったりする。ただし、あくまでも人間に対する庇護欲の話だ。
ミサトも俺もなにも話さないので、フランシスコは焦っているようだった。ワインに救いを求めるような目を向けている。マリアには冷たいワインだが、フランシスコには少し情があるようだ。
「あの、神霊様、教皇に何かご質問はございますでしょうか」
ワインが取りなして来た。そうだ、一つ聞きたいことがあった。
「教会って何が目的なんだ?」
フランシスコは待ってましたとばかりに話し始めた。
「神霊様のお教えを広く民衆に伝播するのが我らの役目です」
「そんなこと言われても、俺たちから人間に教えることは何もないし、そもそも人間には興味ないぞ」
「神霊様の素晴らしさを民に説いて回っています」
「俺たちは素晴らしくはないぞ。建前抜きの本当の目的を教えてくれ。表面的な話だけなら、もう帰るぜ」
フランシスコは腹を括った。
「分かりました。美辞麗句抜きにご説明します。教会は神霊様のご威光を利用して、人間社会を牛耳ることを目的にしております。教会が世界を思うように動かすために、神霊様の力をお借りしています」
随分とぶっちゃけたな。でも、この方が分かりやすぞ。
「なるほど。だが、俺たちは力を貸した覚えはないぞ」
「今はお名前をお借りして、信仰することで救われるという教義を説いて、信徒を増やしております」
「俺たちは信仰されても救わないぞ。庇護欲が湧くかどうかだな」
「私どもはこう考えております。同じように生き、同じように行動している人間がいたとして、一方は神霊様を敬おうともしない、もう一方は神霊様を心の底から尊敬している。こんな二人がいたとき、神霊様は後者の方に情を持たれるのではないでしょうか」
「まあ、それはその通りだな」
「また、このようにも考えております。神霊様は強大なお力をお持ちで、人間など簡単に滅ぼすことが可能です。しかし、そうされないということは、私たち人間は、神霊様に生かされているのだと考えます。神霊様に感謝して生きるようにと説いております」
「なるほどね。確かに敬われているうちは殺そうとは思わないわ。敵対したら容赦なく殺すし、態度が悪ければお仕置きするけどね。そうされないように大勢を諭しているわけね」
ミサトはかなり記憶が戻って来ているんじゃないだろうか。俺も人間には興味はないが、態度が悪いだけでお仕置きしようとは思わないぞ。
「ご明察の通りでございます」
フランシスコがミサトに対して深々とお辞儀をした。
「確かに俺たちが腹を立てるとすれば、知的生物に対してだよなあ。ワイン、この世界には人間のほかに知的生物はいるの?」
「はい、この大陸以外に別の大陸が四つありまして、それぞれに、エルフ、ドワーフ、オーク、ドラゴンがおります。今はまだお互いに遭遇しておりません」
フランシスコは知らなかったようだ。ワインの方を見て、ものすごく驚いている。
「そっちの方にも行ってみたいが、まずは人間だな。教会は人間を俺たちに従順にさせるという活動をしているということだな。これって必要か?」
俺はミサトに聞いてみた。
「そうねえ。どっちでもいいかな。人間が自分たちを守るために自分たちでやっていることでしょう。私は気に入らない人間は教会とか神社とか関係なく殺しちゃうから、せいぜい殺されないようにすることね」
ミサトは完全に人間やめちゃってるな。人間時代の情が全く抜けちゃったようだ。でも、今のミサトの方が数段美しく見え、ゾクゾクしてしまうのはどうしてだろう。ミサトを愛する気持ちが急激に膨れ上がって行く。
「ミサト、綺麗だなあ」
「あ、あなたはいきなり何を言い出すのよ。こんな人間たちの前で!」
あら? ミサトがドギマギして、可愛いミサトに戻ってしまった。でも、こっちのミサトも好きなんだよなあ。
「すまん、つい。あまりにも美しいので見惚れてしまった。俺にとってはミサト以外は興味ないから、教会の目的が何であれ、好きにやってくれって感じだな。神社は俺たちの手足になることを選択し、教会は俺たちに敵対しないことを選択したってことだな」
「ねえ、フランシスコ、少年合唱団とかはいないの?」
ミサトが俺の横に来て、腕を組んでくれて、俺たちアツアツじゃないか、と思っていたときに出てきた言葉がこれだった。
「つ、作ります。すぐに作るように致します」
俺たちから教会興味なし宣言されたフランシスコは必死だ。
「よい返事だわ、フランシスコ。期待しているわよ」
女王様風のミサトも素敵だ。
「なあ、ミサト、ほら、森を抜けたご褒美を頂きたいんだが」
「分かってるわよ。もう、ゆうきはホントそればっかりね。ワイン、帰るわよ」
俺たちは教会を後にした。
ミサトの人間の男の好みは変わっていて、声変わりする前の男の子か、すっかり黄昏てしまったお父さんのどちらかだ。生殖能力の高い男は好みではなかったりする。ただし、あくまでも人間に対する庇護欲の話だ。
ミサトも俺もなにも話さないので、フランシスコは焦っているようだった。ワインに救いを求めるような目を向けている。マリアには冷たいワインだが、フランシスコには少し情があるようだ。
「あの、神霊様、教皇に何かご質問はございますでしょうか」
ワインが取りなして来た。そうだ、一つ聞きたいことがあった。
「教会って何が目的なんだ?」
フランシスコは待ってましたとばかりに話し始めた。
「神霊様のお教えを広く民衆に伝播するのが我らの役目です」
「そんなこと言われても、俺たちから人間に教えることは何もないし、そもそも人間には興味ないぞ」
「神霊様の素晴らしさを民に説いて回っています」
「俺たちは素晴らしくはないぞ。建前抜きの本当の目的を教えてくれ。表面的な話だけなら、もう帰るぜ」
フランシスコは腹を括った。
「分かりました。美辞麗句抜きにご説明します。教会は神霊様のご威光を利用して、人間社会を牛耳ることを目的にしております。教会が世界を思うように動かすために、神霊様の力をお借りしています」
随分とぶっちゃけたな。でも、この方が分かりやすぞ。
「なるほど。だが、俺たちは力を貸した覚えはないぞ」
「今はお名前をお借りして、信仰することで救われるという教義を説いて、信徒を増やしております」
「俺たちは信仰されても救わないぞ。庇護欲が湧くかどうかだな」
「私どもはこう考えております。同じように生き、同じように行動している人間がいたとして、一方は神霊様を敬おうともしない、もう一方は神霊様を心の底から尊敬している。こんな二人がいたとき、神霊様は後者の方に情を持たれるのではないでしょうか」
「まあ、それはその通りだな」
「また、このようにも考えております。神霊様は強大なお力をお持ちで、人間など簡単に滅ぼすことが可能です。しかし、そうされないということは、私たち人間は、神霊様に生かされているのだと考えます。神霊様に感謝して生きるようにと説いております」
「なるほどね。確かに敬われているうちは殺そうとは思わないわ。敵対したら容赦なく殺すし、態度が悪ければお仕置きするけどね。そうされないように大勢を諭しているわけね」
ミサトはかなり記憶が戻って来ているんじゃないだろうか。俺も人間には興味はないが、態度が悪いだけでお仕置きしようとは思わないぞ。
「ご明察の通りでございます」
フランシスコがミサトに対して深々とお辞儀をした。
「確かに俺たちが腹を立てるとすれば、知的生物に対してだよなあ。ワイン、この世界には人間のほかに知的生物はいるの?」
「はい、この大陸以外に別の大陸が四つありまして、それぞれに、エルフ、ドワーフ、オーク、ドラゴンがおります。今はまだお互いに遭遇しておりません」
フランシスコは知らなかったようだ。ワインの方を見て、ものすごく驚いている。
「そっちの方にも行ってみたいが、まずは人間だな。教会は人間を俺たちに従順にさせるという活動をしているということだな。これって必要か?」
俺はミサトに聞いてみた。
「そうねえ。どっちでもいいかな。人間が自分たちを守るために自分たちでやっていることでしょう。私は気に入らない人間は教会とか神社とか関係なく殺しちゃうから、せいぜい殺されないようにすることね」
ミサトは完全に人間やめちゃってるな。人間時代の情が全く抜けちゃったようだ。でも、今のミサトの方が数段美しく見え、ゾクゾクしてしまうのはどうしてだろう。ミサトを愛する気持ちが急激に膨れ上がって行く。
「ミサト、綺麗だなあ」
「あ、あなたはいきなり何を言い出すのよ。こんな人間たちの前で!」
あら? ミサトがドギマギして、可愛いミサトに戻ってしまった。でも、こっちのミサトも好きなんだよなあ。
「すまん、つい。あまりにも美しいので見惚れてしまった。俺にとってはミサト以外は興味ないから、教会の目的が何であれ、好きにやってくれって感じだな。神社は俺たちの手足になることを選択し、教会は俺たちに敵対しないことを選択したってことだな」
「ねえ、フランシスコ、少年合唱団とかはいないの?」
ミサトが俺の横に来て、腕を組んでくれて、俺たちアツアツじゃないか、と思っていたときに出てきた言葉がこれだった。
「つ、作ります。すぐに作るように致します」
俺たちから教会興味なし宣言されたフランシスコは必死だ。
「よい返事だわ、フランシスコ。期待しているわよ」
女王様風のミサトも素敵だ。
「なあ、ミサト、ほら、森を抜けたご褒美を頂きたいんだが」
「分かってるわよ。もう、ゆうきはホントそればっかりね。ワイン、帰るわよ」
俺たちは教会を後にした。
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