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第六章 帝国
記憶
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「こっちにいたという記憶が全くないんだが」
俺の疑問にワインが答えてくれる。ワインは何でも知っている感じだな。ミサトも驚いているようだが、興味津々といった感じだ。
「異世界の高度な文明を転生を繰り返して五百年間学習されるとおしゃっておられましたが、まだ四百年ほどです。異世界では転生のたびに記憶がリセットされたかと思いますので、今は前世のご記憶がないと思います」
「ひょっとしてワインと俺たちは初対面じゃないの?」
「初対面です。私どもも同様に転生を繰り返しております。お話しした過去の話は、前世から引き継いだ情報です。ですので、物理的には初対面ですが、精神的には長くご一緒させて頂いております」
「俺たちの記憶はどうなっちゃうんだ?」
「徐々に記憶が整理され、不要な情報は消えて、有用な情報に書き換えられます。今回は四百年分ですし、転生ではなく転移ですので、記憶の復元にはかなりの時間がかかると思います」
「親兄弟や友人などの人間関係の記憶が真っ先に消えるなんて、容赦ねえな」
「ところで、四百年前の私たちはどんな感じだったの?」
「そ、それは私の口からは何とも……」
珍しくワインの歯切れが悪いな。
「あなたたちには優しくしてたかしら?」
「それはもう優しくしていただきました」
ワインの顔がパッと輝いた。
「じゃあ、問題ないじゃない。言いにくいことでもあるの?」
ワインが目を逸らして、斜め下を向いている。話しにくいことが丸分かりだ。
「い、いずれ思い出されます。私からお話しするのはよろしくないかと」
「何かあるのね。じゃあ、ちょっと質問を変えようかしら。私たちはいつから存在しているのかしら」
「それは知らされておりません。愚かにもお伺いした霊王がいるのですが、レディに歳を聞くとはなにごとか、と滅ぼされまして……」
「そ、そうなの?」
「はい、霊王は以前は十三柱おりました」
「専門は何だったの?」
「旅行担当でした。ゲートという魔法で、いろいろな場所に瞬時に移動出来て、重宝されておられたのですが」
なんて便利な奴を滅ぼすんだよ。
「転生して来ないの?」
「はい、魂の修復に千年かかるそうです」
「そ、そう、それは災難だったわね」
「昔も今もあまり変わっていないってことじゃないか?」
「どういう意味よ!?」
いや、そういう意味なんだが。
「そ、そんなに変われないってことさ。俺たちの歳はいいとして、霊王はいつから存在しているんだ?」
「初代の誕生は今から二千年前です」
ってことは、俺たちはもっと古くからいるのかよ。
「そうだ。俺たちには子供はいないのか?」
「何人かいらっしゃったそうですが、私どもが現れてからはいらっしゃいませんでした」
「ひょっとして、普通の人間が生まれるのか?」
「はい、必ず先にお亡くなりになられますので、もう懲りた、とおっしゃっておられました」
しかし、変だな。俺は射精しないのに、なぜ子供が出来るんだ?
「ゆうきは種なしなのに、なぜ子供が出来るのよ。マリアとかも子を授かりたいとか言ってるけど、無理な話じゃないの?」
ワインみたいな美人の前では言いにくいから黙ってたのに!
「ゆうき様は射精する時空を自由に選べるスキルをお持ちです。今は異次元に射精されておられるのではないでしょうか」
俺って何者!?
「ちょっと待ってよ。ひょっとして、これまでもゆうきは散々子種を人間に提供して来たんじゃないでしょうね」
「そ、それは私からは申し上げられません」
「な、なあ、ミサト、過去のことは水に流さないか。ミサトの過去もどうなのか分からないしさ。それに、俺は今はミサトしか目に入らないわけだし」
「私はそんなふしだらじゃないわよ、ね、ワイン」
「わ、私からは何とも申し上げられません……」
あらら、またワインが目を逸らせちゃったよ。
「な、何よっ。まあいいわ。この件にはお互いに触れないことにしましょう。さあ、本堂に戻って、次の神殿に行くわよ」
俺の疑問にワインが答えてくれる。ワインは何でも知っている感じだな。ミサトも驚いているようだが、興味津々といった感じだ。
「異世界の高度な文明を転生を繰り返して五百年間学習されるとおしゃっておられましたが、まだ四百年ほどです。異世界では転生のたびに記憶がリセットされたかと思いますので、今は前世のご記憶がないと思います」
「ひょっとしてワインと俺たちは初対面じゃないの?」
「初対面です。私どもも同様に転生を繰り返しております。お話しした過去の話は、前世から引き継いだ情報です。ですので、物理的には初対面ですが、精神的には長くご一緒させて頂いております」
「俺たちの記憶はどうなっちゃうんだ?」
「徐々に記憶が整理され、不要な情報は消えて、有用な情報に書き換えられます。今回は四百年分ですし、転生ではなく転移ですので、記憶の復元にはかなりの時間がかかると思います」
「親兄弟や友人などの人間関係の記憶が真っ先に消えるなんて、容赦ねえな」
「ところで、四百年前の私たちはどんな感じだったの?」
「そ、それは私の口からは何とも……」
珍しくワインの歯切れが悪いな。
「あなたたちには優しくしてたかしら?」
「それはもう優しくしていただきました」
ワインの顔がパッと輝いた。
「じゃあ、問題ないじゃない。言いにくいことでもあるの?」
ワインが目を逸らして、斜め下を向いている。話しにくいことが丸分かりだ。
「い、いずれ思い出されます。私からお話しするのはよろしくないかと」
「何かあるのね。じゃあ、ちょっと質問を変えようかしら。私たちはいつから存在しているのかしら」
「それは知らされておりません。愚かにもお伺いした霊王がいるのですが、レディに歳を聞くとはなにごとか、と滅ぼされまして……」
「そ、そうなの?」
「はい、霊王は以前は十三柱おりました」
「専門は何だったの?」
「旅行担当でした。ゲートという魔法で、いろいろな場所に瞬時に移動出来て、重宝されておられたのですが」
なんて便利な奴を滅ぼすんだよ。
「転生して来ないの?」
「はい、魂の修復に千年かかるそうです」
「そ、そう、それは災難だったわね」
「昔も今もあまり変わっていないってことじゃないか?」
「どういう意味よ!?」
いや、そういう意味なんだが。
「そ、そんなに変われないってことさ。俺たちの歳はいいとして、霊王はいつから存在しているんだ?」
「初代の誕生は今から二千年前です」
ってことは、俺たちはもっと古くからいるのかよ。
「そうだ。俺たちには子供はいないのか?」
「何人かいらっしゃったそうですが、私どもが現れてからはいらっしゃいませんでした」
「ひょっとして、普通の人間が生まれるのか?」
「はい、必ず先にお亡くなりになられますので、もう懲りた、とおっしゃっておられました」
しかし、変だな。俺は射精しないのに、なぜ子供が出来るんだ?
「ゆうきは種なしなのに、なぜ子供が出来るのよ。マリアとかも子を授かりたいとか言ってるけど、無理な話じゃないの?」
ワインみたいな美人の前では言いにくいから黙ってたのに!
「ゆうき様は射精する時空を自由に選べるスキルをお持ちです。今は異次元に射精されておられるのではないでしょうか」
俺って何者!?
「ちょっと待ってよ。ひょっとして、これまでもゆうきは散々子種を人間に提供して来たんじゃないでしょうね」
「そ、それは私からは申し上げられません」
「な、なあ、ミサト、過去のことは水に流さないか。ミサトの過去もどうなのか分からないしさ。それに、俺は今はミサトしか目に入らないわけだし」
「私はそんなふしだらじゃないわよ、ね、ワイン」
「わ、私からは何とも申し上げられません……」
あらら、またワインが目を逸らせちゃったよ。
「な、何よっ。まあいいわ。この件にはお互いに触れないことにしましょう。さあ、本堂に戻って、次の神殿に行くわよ」
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