見知らぬ美女と一緒に異世界召喚され、お互い幽霊になりました。勇者たちよりも強い最強な俺たちですが、俺は彼女とラブコメしたいです

もぐすけ

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第六章 帝国

霊王

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 マリアが案内してくれた神社は非常に立派で、歴史を感じさせる建物だった。

「本堂にご案内します」

 マリア、俺の方をチラチラ見るのをやめないと、ミサトに殺されてしまうぞ。

 本堂の中に入ると、ふわふわと浮いている女性がいた。またしても美人の登場だ。ミサトの機嫌は悪くなる一方だが、安心していいぞ。彼女には庇護欲が半端なく湧くが、恋愛対象にはならない。

「あなたが霊王?」

 ミサトが不機嫌さを隠すことなく会話を始めた。美女二人がふわふわ浮きながら話す様は実に絵になる。

「はい、神霊様、ワインと申します。以後、お見知りおきを」

 なぜワインという名前なのかは、説明抜きで分かった。ワインの容姿だ。ワイン色の光沢のある艶やかな長い髪、ワイン色の瞳、整った鼻と形のいい唇に微笑みを浮かべている。

「あなたたちは私たちに触れることはできるの」

「はい、可能です」

「あなたたちの使命は何?」

「私たちは神霊様にお仕えするために作られました。私たちが忠誠を捧げることをお許し下さい」

 作られたというのがどういうことかは分からないが、ワインは確かに作られたとしか思えないような完璧な美人だった。

「私とゆうきのどちらに忠誠を捧げるの?」

「お二方に忠誠を捧げます」

「私とゆうきが反目したら、どちらにつくの?」

「その場合はどちらにもつきません」

 ワインが少し困った顔をしている。

「あなたは女性よね。霊王に男性はいるの?」

「はい、私は女です。霊王は女性六柱、男性六柱です」

 こんな霊王なんて存在がいる俺たちって、一体何なんなんだろう。

「ミサト、ワインには庇護欲が半端なく湧くが、恋愛対象にはならないぞ」

「そうみたいね。同性なのに私もワインには庇護欲があるのよ」

「俺たちって、守りたいものを守るための存在なの?」

「本当に変よね。睡眠欲と庇護欲とゆうき欲だけよ、私にあるのは」

「おっ、ついに俺に対する欲があることを認めたな」

「口に出さないと分からなの? ずっとゆうきに恋してるでしょ、私は」

 どういった心境の変化だ? こんなに俺への好意をはっきりと宣言するなんて。あれかな、敵が多くなって、アピールが必要と思ったのかな。

「ゆうきが思っている通りよ。不本意だけどね」

 す、鋭い。相変わらず鋭いぜ。

 マリアとワインが俺たちの指示を待っている感じだった。

「ミサト、宝物殿を見せてもらおうよ」

「そうね。どちらに案内をお願いすればいいかしら」

 ミサトがマリアとワインに視線を向けた。

「私がご案内致します。こちらでございます」

 ワインが名乗りをあげた。俺たちはワインの後に続いた。マリアたちは本堂で待っているとのことだった。宝物殿には人間が入れないところがあるらしい。

 宝物殿は本堂から少し離れているようだが、ワインにいろいろと聞きたいことがあったので、ゆっくりと歩いて向かった。

「ワイン、あなたは誰に作られたの?」

「神々です」

 神だって!?

「私たち神霊のために?」

「はい、神霊様は神々に代わって、生あるものを庇護される方々です。神霊様の庇護活動をお手伝いをするために作られました」

「私たちのほかに神霊はいるの?」

「かつてはいらっしゃいましたが、現在はお二方のみです」

 俺は話に割りこんだ。

「なあ、ワイン、俺たちって本当に神霊なのか? 神霊違いしていないか?」

「何をおっしゃいますか。どこからどう見ても、神霊様でございます」

「マリアたちは神霊にとってどのような存在だ?」

「ただの人間ですが、ゆうき様に絶対の忠誠を誓っております。ゆうき様の御心のまま、便利にお使い下さいませ」

「その、神霊は人間と子を成せるのか?」

「はい、マリアたちの目的はまさにそれでございます。ただ、そのようなご慈悲は、お気が向かないようでしたら、不要でございます。御心のまま、お好きなようにご対応下さいませ」

「ねえ、私にはそういう存在はないの?」

 ミサトはやはりそこが気になるようだ。

「人間の子を宿すなど、御身が穢れます。仮に人間がそのような目的でミサト様に近づいて来た場合は、私ども霊王がゆうき様に代わって、成敗いたします」

 ワインが鋭い目で斜め上の方を見ている。恐らく成敗する場面を思い浮かべているのだろう。

「霊王は人間には触れられないんじゃないの?」

「神霊様の許可を頂いた人間には触れることが出来るのです」

「私が人の子を産むと願っても?」

「はい。神々の意向に沿わない行為なのです。我々は神霊様に忠義を尽くしますが、創造主たる神々の意向には逆らえないように作られております。ご了承下さいませ」

「こういうところって、女には不公平よね」

 ミサトがふうっとため息をついた。

 俺たちは宝物殿の前に着いた。
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