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第五章 古代寺
五重の塔
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宝物殿で少し四人で話した後、次の目的地の五重の塔に向かった。宝物殿が開いたことは管理人には伝えないようにした。
宝物殿を出ると、俺たちは再び見えなくなったようだ。俺はミサトと二人だけの会話を始めた。
「宝物殿に入ったら片栗粉のこと考えるって言ってたけど、如何でしょうか」
「ふん、浮気者が何を言ってんだか」
「え? 俺は何もしていないし、キララも衝動的だったって、謝ったじゃないか」
「衝動的? 計算ずくよ」
「いや、考えすぎだろう」
「おめでたいわね。うかうかしてると、取られちゃうとまでは行かないけど、シェアすることになっちゃうわね」
「そんな馬鹿なことは……」
「ないって言える? キララは若くて美しくて、頭がよくて強くて、男の気持ちの掴み方もよく知ってる強敵よ。私に殺されないように謝って来たけど、どうしようかしら」
「え? キララ殺さないでよ」
「殺しはしないけど、人のものに手を出すとどうなるか、お仕置きが必要ね」
「いやいやいや、可哀想だろう。今回だけは大目に見てくれないかな。俺からもよく言って聞かせるから」
「ゆうきががばってくれるところまで計算していると思うわよ。でも、私がそんな簡単ではないことを教えないと、つけ上がるだけよ。ただ、あの部屋に入ると、戦闘力が逆転しちゃうから、そうそう私も手を出せないのよね。なるほど、そこまで読んだのね。手強いわ」
「あの一瞬でか? いくらなんでもそこまでは……」
「私とエリコが抱き合うのを見てから、ゆうきに抱きついたでしょ。彼女の印象をゆうきに植え付けたかったのよ。こっちの男は封建的で碌でもないから、ゆうきはモテるかもね」
「マジか。でも、俺はミサトにだけモテたいんだよ」
「どうだか。ほら、五重の塔よ」
五重の塔の外観はネガ色の塔だったが、内側は一階はネガ色だったが、二階から色がついていた。案の定、俺とミサトは二階には進めなかった。
「この寺、変だ。ミサト、しばらく、ここで暮らさないか? 何かあるような気がしないか?」
「そうね、エリコたちはどうするかしら」
「ベッドに充電設備があったから、バッテリーは渡してもいいと思うぞ」
「聞いてみるわ」
ミサトは拡声器をエリコに向けた。
『エリコ、私たちはしばらくここで暮らすわ。あなたたちはどうする? バッテリー持って行ってもいいわよ』
「キララ、どうする?」
エリコはキララに相談した。
「そうですね。私はいったん帰ります。藪神社を拠点にして、ネットから得られる知識で国を富ませたいのです。で、神様に会いたくなったら、ここに遊びに来ます。いつになるかわかりませんが、この国にもネットを敷設して、ここでもWiFiしたいですね」
残りたいと言うかと思いきや、いったん帰るのか。
「私も藪神社に帰って、醤油作りを始めるかな。国家プロジェクトにして、職人を好きなだけ使わせて欲しいわ。そして、日本料理店をオープンさせたい。私もミサトに会いたくなったら、会いに来るから」
エリコとキララの話が弾んできた。
「馬車にサスペンションをセットすれば、ここまで快適に来られると思います。車が出来るのはもっと先ですが」
「いっそのこと情報公開しちゃったら?」
「エリコさん、ネットの知識は慎重に扱わないと危険です。例えば、農民が自由に目覚めたら、私たち支配者階級は困っちゃいます。情報は資産です。私たちで独占しましょう」
そう言って、エリコとキララは暗くならないうちに帰途についた。
「ほら、キララはあっさり帰っただろ」
「今はここにいても嫉妬するだけだからよ。私に睨まれたら大変だしね。つくづく手強いわ。ゆうきは隙だらけだから、上手いことやられて、やっちゃったりしないでよ」
「まさか、妹みたいなものだぞ。ところで、片栗粉の件なのだが」
「二言目には片栗粉、片栗粉って、それしか頭にないの?」
ミサトは呆れ顔だが、顔が赤い。
「まあ、今のところはそうかも」
「分かったわよ。シャワーもあるし、使った後に洗い流せるわね」
「お、俺に洗わせてくれ」
「そんなこと口に出して言う!?」
ミサトが耳まで真っ赤になった。もう俺は我慢出来なくなり、ミサトの手を引っ張って、宝物殿へと走って行った。
宝物殿を出ると、俺たちは再び見えなくなったようだ。俺はミサトと二人だけの会話を始めた。
「宝物殿に入ったら片栗粉のこと考えるって言ってたけど、如何でしょうか」
「ふん、浮気者が何を言ってんだか」
「え? 俺は何もしていないし、キララも衝動的だったって、謝ったじゃないか」
「衝動的? 計算ずくよ」
「いや、考えすぎだろう」
「おめでたいわね。うかうかしてると、取られちゃうとまでは行かないけど、シェアすることになっちゃうわね」
「そんな馬鹿なことは……」
「ないって言える? キララは若くて美しくて、頭がよくて強くて、男の気持ちの掴み方もよく知ってる強敵よ。私に殺されないように謝って来たけど、どうしようかしら」
「え? キララ殺さないでよ」
「殺しはしないけど、人のものに手を出すとどうなるか、お仕置きが必要ね」
「いやいやいや、可哀想だろう。今回だけは大目に見てくれないかな。俺からもよく言って聞かせるから」
「ゆうきががばってくれるところまで計算していると思うわよ。でも、私がそんな簡単ではないことを教えないと、つけ上がるだけよ。ただ、あの部屋に入ると、戦闘力が逆転しちゃうから、そうそう私も手を出せないのよね。なるほど、そこまで読んだのね。手強いわ」
「あの一瞬でか? いくらなんでもそこまでは……」
「私とエリコが抱き合うのを見てから、ゆうきに抱きついたでしょ。彼女の印象をゆうきに植え付けたかったのよ。こっちの男は封建的で碌でもないから、ゆうきはモテるかもね」
「マジか。でも、俺はミサトにだけモテたいんだよ」
「どうだか。ほら、五重の塔よ」
五重の塔の外観はネガ色の塔だったが、内側は一階はネガ色だったが、二階から色がついていた。案の定、俺とミサトは二階には進めなかった。
「この寺、変だ。ミサト、しばらく、ここで暮らさないか? 何かあるような気がしないか?」
「そうね、エリコたちはどうするかしら」
「ベッドに充電設備があったから、バッテリーは渡してもいいと思うぞ」
「聞いてみるわ」
ミサトは拡声器をエリコに向けた。
『エリコ、私たちはしばらくここで暮らすわ。あなたたちはどうする? バッテリー持って行ってもいいわよ』
「キララ、どうする?」
エリコはキララに相談した。
「そうですね。私はいったん帰ります。藪神社を拠点にして、ネットから得られる知識で国を富ませたいのです。で、神様に会いたくなったら、ここに遊びに来ます。いつになるかわかりませんが、この国にもネットを敷設して、ここでもWiFiしたいですね」
残りたいと言うかと思いきや、いったん帰るのか。
「私も藪神社に帰って、醤油作りを始めるかな。国家プロジェクトにして、職人を好きなだけ使わせて欲しいわ。そして、日本料理店をオープンさせたい。私もミサトに会いたくなったら、会いに来るから」
エリコとキララの話が弾んできた。
「馬車にサスペンションをセットすれば、ここまで快適に来られると思います。車が出来るのはもっと先ですが」
「いっそのこと情報公開しちゃったら?」
「エリコさん、ネットの知識は慎重に扱わないと危険です。例えば、農民が自由に目覚めたら、私たち支配者階級は困っちゃいます。情報は資産です。私たちで独占しましょう」
そう言って、エリコとキララは暗くならないうちに帰途についた。
「ほら、キララはあっさり帰っただろ」
「今はここにいても嫉妬するだけだからよ。私に睨まれたら大変だしね。つくづく手強いわ。ゆうきは隙だらけだから、上手いことやられて、やっちゃったりしないでよ」
「まさか、妹みたいなものだぞ。ところで、片栗粉の件なのだが」
「二言目には片栗粉、片栗粉って、それしか頭にないの?」
ミサトは呆れ顔だが、顔が赤い。
「まあ、今のところはそうかも」
「分かったわよ。シャワーもあるし、使った後に洗い流せるわね」
「お、俺に洗わせてくれ」
「そんなこと口に出して言う!?」
ミサトが耳まで真っ赤になった。もう俺は我慢出来なくなり、ミサトの手を引っ張って、宝物殿へと走って行った。
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