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第五章 古代寺
夢殿
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神社は神道、寺は仏教ということではないらしい。神社は神を祀るために今の人間の祖先が建立したものだが、寺は古代文明の遺跡とのことで、誰がいつ建設したのか、よく分からないそうだ。
魔区にある古代寺は今から千年以上前から存在しているらしい。最古の文書である「古代記」という書物に既に古代寺の存在が記載されているという。
木造建築なのに全く劣化していない。何らかの魔法で保護されているようだが、現代の魔法学では解明できないらしい。また、宝物殿はあるのだが、どうやっても入れない、など不思議なことだらけだという。
「何だかワクワクするわね」
ミサトの独り言だ。俺は別の話題を切り出した。
「片栗粉そろそろ使いませんか?」
「使わないわよ。宝物殿に入れたら考えてもいいわよ」
「俺たちだったら、簡単に通り抜けられるんじゃないか?」
「だといいけど」
俺たちは魔王が用意してくれた豪華な馬車で古代寺に向かっている。古代寺は魔区の東の外れにある。魔区の東には広大な森が広がっており、魔物が跋扈しているため、未開の地となっているらしい。ちなみに魔物は森や林に住み、平地には出て来ない。
「東の森を探検するのも面白いかもな。何かありそうな気がするよな」
「そうね。キララは知ってるのかな」
キララに聞いてみた。
「全くわかっていません。何度か探索隊を出してますが、帰還者ゼロなのです」
『ゼロってのはすごいな。俺とミサトでちょっと入って見ようかな』
「ゆうくんたちであれば大丈夫かと思いますが、お気をつけ下さい」
『まあ、まずは古代寺からだな』
古代寺に着いた。ここには神社の神主のような住み込みの管理者はいなかった。魔区政府から管理を委託された管理会社から派遣された管理人が寺の事務所に朝来て、夕方に帰るらしい。
きっちりと管理人に連絡が行っていたようで、スムーズに境内まで入ることが出来た。見て驚いたのだが、古代寺はものすごく広い。ただ、建物の配置が随分と法隆寺とは違うようだ。
『魔王、段取りいいな』
「あの子、そんなに悪い子じゃないと思います。私にはずっと礼儀正しかったですし」
エリコさんが魔王をフォローした。実は魔王は上に従順で下に厳しい体育会系キャラなのかもしれない。
「ゆうき、あれ!」
ミサトが指差したのは夢殿と呼ばれる八角形の建物だった。ミサトが指差した理由は色がついている夢殿とネガ色の夢殿が重なるように二つあったからだ。
『エリコ、夢殿は一つ見えるだけ?』
ミサトがエリコさんにさっそく確認していた。
「そうよ。法隆寺のとそっくりね」
事前に法隆寺の写真をいくつかネットからダウンロードしていたようで、エリコさんはそれと比べている。視線から推測すると、エリコさんにはネガ色の方が見えるようだ。
『私たちには二つ見えるのよ』
「え? どういうこと?」
『分からない。ちょっと入ってみてくれる』
「ええ、おじさん、中に入りたいの。開けてくれる?」
管理人のおじさんが扉を開けると、中は空っぽだった。俺たちも入ってみたが特に何もなかった。
色のついている方の夢殿の方は外から中を見ると像が置かれている。像にも色がついているようだ。しかし、扉にはさわれるのだが、開かない。通り抜けも出来ない。
「ミサト、どうする?」
を言い終わらないうちに、ミサトが扉を蹴飛ばしていた。いつからこんなに足癖が悪くなったのだろう。しかし、扉はびくともしなかった。
「ガタガタいうならまだわかるが、なんなんだこれは。本当にびくともしないじゃないか」
俺は扉の上側の隙間から手を入れてみた。あれ? 手が入らない。手が止まるのだ。何かに当たって手を入れられないのではなく、これ以上手を先に動かせなくなるのだ。ミサトも同じようだ。
「ゆうき、これなんだと思う?」
「さっぱり分からない。エリコさんたちは入れるのかな」
『エリコ、ここに手を伸ばしてくれる、っていっても分からないか。真っ直ぐ手を伸ばして、左に三歩動いてくれる? そう、そう、そんな感じ。もう少しだけ右かな。そこ! その位置から手を上げたまま前に進んでくれる?』
エリコさんは問題なく進めた。手が色のついた夢殿の中にすんなり入っている。だが、木の部分を通過してしまっているので、エリコさんと夢殿は別の時空にあるものなのだろう。ミサトはエリコさんに礼を言った。
「あっ、このアングルです!」
ネガ色の夢殿に入っていたキララが叫んだ。夢殿の中から見た金堂と五重の塔の位置が、動画の「ネガの国」の画像と一致しているという。俺たちも振り返って見た。確かに動画で見た風景だ。この夢殿の先は俺たちの世界なのだろうか。
魔区にある古代寺は今から千年以上前から存在しているらしい。最古の文書である「古代記」という書物に既に古代寺の存在が記載されているという。
木造建築なのに全く劣化していない。何らかの魔法で保護されているようだが、現代の魔法学では解明できないらしい。また、宝物殿はあるのだが、どうやっても入れない、など不思議なことだらけだという。
「何だかワクワクするわね」
ミサトの独り言だ。俺は別の話題を切り出した。
「片栗粉そろそろ使いませんか?」
「使わないわよ。宝物殿に入れたら考えてもいいわよ」
「俺たちだったら、簡単に通り抜けられるんじゃないか?」
「だといいけど」
俺たちは魔王が用意してくれた豪華な馬車で古代寺に向かっている。古代寺は魔区の東の外れにある。魔区の東には広大な森が広がっており、魔物が跋扈しているため、未開の地となっているらしい。ちなみに魔物は森や林に住み、平地には出て来ない。
「東の森を探検するのも面白いかもな。何かありそうな気がするよな」
「そうね。キララは知ってるのかな」
キララに聞いてみた。
「全くわかっていません。何度か探索隊を出してますが、帰還者ゼロなのです」
『ゼロってのはすごいな。俺とミサトでちょっと入って見ようかな』
「ゆうくんたちであれば大丈夫かと思いますが、お気をつけ下さい」
『まあ、まずは古代寺からだな』
古代寺に着いた。ここには神社の神主のような住み込みの管理者はいなかった。魔区政府から管理を委託された管理会社から派遣された管理人が寺の事務所に朝来て、夕方に帰るらしい。
きっちりと管理人に連絡が行っていたようで、スムーズに境内まで入ることが出来た。見て驚いたのだが、古代寺はものすごく広い。ただ、建物の配置が随分と法隆寺とは違うようだ。
『魔王、段取りいいな』
「あの子、そんなに悪い子じゃないと思います。私にはずっと礼儀正しかったですし」
エリコさんが魔王をフォローした。実は魔王は上に従順で下に厳しい体育会系キャラなのかもしれない。
「ゆうき、あれ!」
ミサトが指差したのは夢殿と呼ばれる八角形の建物だった。ミサトが指差した理由は色がついている夢殿とネガ色の夢殿が重なるように二つあったからだ。
『エリコ、夢殿は一つ見えるだけ?』
ミサトがエリコさんにさっそく確認していた。
「そうよ。法隆寺のとそっくりね」
事前に法隆寺の写真をいくつかネットからダウンロードしていたようで、エリコさんはそれと比べている。視線から推測すると、エリコさんにはネガ色の方が見えるようだ。
『私たちには二つ見えるのよ』
「え? どういうこと?」
『分からない。ちょっと入ってみてくれる』
「ええ、おじさん、中に入りたいの。開けてくれる?」
管理人のおじさんが扉を開けると、中は空っぽだった。俺たちも入ってみたが特に何もなかった。
色のついている方の夢殿の方は外から中を見ると像が置かれている。像にも色がついているようだ。しかし、扉にはさわれるのだが、開かない。通り抜けも出来ない。
「ミサト、どうする?」
を言い終わらないうちに、ミサトが扉を蹴飛ばしていた。いつからこんなに足癖が悪くなったのだろう。しかし、扉はびくともしなかった。
「ガタガタいうならまだわかるが、なんなんだこれは。本当にびくともしないじゃないか」
俺は扉の上側の隙間から手を入れてみた。あれ? 手が入らない。手が止まるのだ。何かに当たって手を入れられないのではなく、これ以上手を先に動かせなくなるのだ。ミサトも同じようだ。
「ゆうき、これなんだと思う?」
「さっぱり分からない。エリコさんたちは入れるのかな」
『エリコ、ここに手を伸ばしてくれる、っていっても分からないか。真っ直ぐ手を伸ばして、左に三歩動いてくれる? そう、そう、そんな感じ。もう少しだけ右かな。そこ! その位置から手を上げたまま前に進んでくれる?』
エリコさんは問題なく進めた。手が色のついた夢殿の中にすんなり入っている。だが、木の部分を通過してしまっているので、エリコさんと夢殿は別の時空にあるものなのだろう。ミサトはエリコさんに礼を言った。
「あっ、このアングルです!」
ネガ色の夢殿に入っていたキララが叫んだ。夢殿の中から見た金堂と五重の塔の位置が、動画の「ネガの国」の画像と一致しているという。俺たちも振り返って見た。確かに動画で見た風景だ。この夢殿の先は俺たちの世界なのだろうか。
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