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第四章 聖女と魔王妃
進退伺い
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王に譲位させ、魔王妃が史上初の女王の座に着いた。魔王妃の名は捨て、魔王との婚約は破棄した。エリコとの労働契約は自動的に解除となった。
俺たちは別に政治がしたいわけではない。メルサとゲンムの親父さんたちに政治は任せて、竹藪の神社の境内に女王と聖女の別邸を建築し、二人はそこで暮らすことになっている。
別邸が出来るまでの間、我々は古代寺に向かうことにした。途中で魔城に寄って、魔王と勇者の処罰をついでにしてしまおうと思っている。
魔王城に着くと、女王と聖女は丁重に迎えられた。
魔王はよく状況を理解しているようで、進退伺いを提出して来るなど、常に下手に出て来た。女王や聖女にも敬意を持って接している。
キララは久しぶりに見る魔王に上座から話しかけた。
「魔王、神様にお伺いして、あなたには魔区を引き続き統治してもらうことにしたわ。私に忠誠を誓うなら、元婚約者のよしみで、悪いようにはしないわよ」
「ありがたき幸せ。女王様に忠誠を誓います」
魔王は跪いて忠誠を誓った。
一方でレンの方はアホだった。自分の立場がよくわかっていないらしい。女王の婚約者になってやるみたいなことを言い出したので、俺はつい殴ってしまった。
あ、やべえ、殺しちゃったかも、と思ったのだが、さすがに勇者だけある。虫の息ではあるが、死ななかった。
「ゆうきさん、レンにも悲しむ家族がいます。私から言い聞かせますので、治癒することをお許し下さい」
エリコさんが懇願するまでもなく、治療はしてもらうつもりだった。レンは一命を取り留めた。
「エリコ、ありがとう。俺とやり直さないか」
この勘違い男はエリコが自分に気があるとでも思ったようだ。これには今度はエリコがキレた。
「ミサト、殺していいわよ」
「え? ミサト?」
この言葉がレンの最後の言葉になるはずだったが、レンはミサトの渾身の蹴りに瀕死の重傷を負いながらも、耐え切った。
『あれ? まだ生きてるわ。キララも蹴る?』
「はい、ミサト様」
容赦のないキララの蹴りがレンに炸裂した。
『すごいな、勇者。まだ死なないよ』
女性三人からの本気の殺意に「女は全員俺のことが好き」というのは勘違いなのだと、ようやくレンは気づいた。俺の呟きに気づいて、俺を神だと信じて、すがって来た。
「か、神様、す、すいません。俺が間違ってました。もう日本に帰りたいです。このまま死にたくないです……」
『エリコさん、もう一度、助けてやってくれますか。こいつ、本当に反省したみたいだから』
「分かりました。レン、あなた目障りだから、島流しね。日本に帰る方法がわかったら帰してあげるから、それまでは島で一人で大人しくしてなさい」
「分かりました」
そう言って、レンは気絶した。エリコはレンに再び治療魔法をかけた。
古代寺ツアーは魔王に手配を依頼した。女王から依頼された魔王の初仕事だ。魔王は実は自分は女上司好きなんだと気づいてしまった。プレッシャーから解放されて、楽しくて仕方がないのだ。テンションマックスで仕事に取り組む魔王を見て、
「うざったいわね」
と嫌悪の目でキララは魔王を見ていた。
ミサトが素直になった魔王に庇護欲が出たため、魔王は死なずに済んだのであった。
俺たちは別に政治がしたいわけではない。メルサとゲンムの親父さんたちに政治は任せて、竹藪の神社の境内に女王と聖女の別邸を建築し、二人はそこで暮らすことになっている。
別邸が出来るまでの間、我々は古代寺に向かうことにした。途中で魔城に寄って、魔王と勇者の処罰をついでにしてしまおうと思っている。
魔王城に着くと、女王と聖女は丁重に迎えられた。
魔王はよく状況を理解しているようで、進退伺いを提出して来るなど、常に下手に出て来た。女王や聖女にも敬意を持って接している。
キララは久しぶりに見る魔王に上座から話しかけた。
「魔王、神様にお伺いして、あなたには魔区を引き続き統治してもらうことにしたわ。私に忠誠を誓うなら、元婚約者のよしみで、悪いようにはしないわよ」
「ありがたき幸せ。女王様に忠誠を誓います」
魔王は跪いて忠誠を誓った。
一方でレンの方はアホだった。自分の立場がよくわかっていないらしい。女王の婚約者になってやるみたいなことを言い出したので、俺はつい殴ってしまった。
あ、やべえ、殺しちゃったかも、と思ったのだが、さすがに勇者だけある。虫の息ではあるが、死ななかった。
「ゆうきさん、レンにも悲しむ家族がいます。私から言い聞かせますので、治癒することをお許し下さい」
エリコさんが懇願するまでもなく、治療はしてもらうつもりだった。レンは一命を取り留めた。
「エリコ、ありがとう。俺とやり直さないか」
この勘違い男はエリコが自分に気があるとでも思ったようだ。これには今度はエリコがキレた。
「ミサト、殺していいわよ」
「え? ミサト?」
この言葉がレンの最後の言葉になるはずだったが、レンはミサトの渾身の蹴りに瀕死の重傷を負いながらも、耐え切った。
『あれ? まだ生きてるわ。キララも蹴る?』
「はい、ミサト様」
容赦のないキララの蹴りがレンに炸裂した。
『すごいな、勇者。まだ死なないよ』
女性三人からの本気の殺意に「女は全員俺のことが好き」というのは勘違いなのだと、ようやくレンは気づいた。俺の呟きに気づいて、俺を神だと信じて、すがって来た。
「か、神様、す、すいません。俺が間違ってました。もう日本に帰りたいです。このまま死にたくないです……」
『エリコさん、もう一度、助けてやってくれますか。こいつ、本当に反省したみたいだから』
「分かりました。レン、あなた目障りだから、島流しね。日本に帰る方法がわかったら帰してあげるから、それまでは島で一人で大人しくしてなさい」
「分かりました」
そう言って、レンは気絶した。エリコはレンに再び治療魔法をかけた。
古代寺ツアーは魔王に手配を依頼した。女王から依頼された魔王の初仕事だ。魔王は実は自分は女上司好きなんだと気づいてしまった。プレッシャーから解放されて、楽しくて仕方がないのだ。テンションマックスで仕事に取り組む魔王を見て、
「うざったいわね」
と嫌悪の目でキララは魔王を見ていた。
ミサトが素直になった魔王に庇護欲が出たため、魔王は死なずに済んだのであった。
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