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第四章 聖女と魔王妃
クーデター
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片栗粉が完成した。ネットのレシピに従って、片栗粉ローションを作成し、試してみた。
グッジョブです!
ありがとう、ネットの人。まさかこんな異世界から感謝されることになるとは、思ってもみなかったことでしょう。
「ミサト、これでいつでもできるな」
「簡単にはさせないわよ。片栗粉はゆうきが持っていてよ」
「俺が持つのは不自然じゃないか?」
「私だって不自然でしょう。そういうものは男が持つものよ」
「いや、片栗粉持って歩く男、俺は見たことないぞ」
「じゃあ、置いていけば。私は別にしなくてもいいのよ」
「喜んで持たせて頂きます」
旅立つ準備は出来た。エリコとキララはここに残ると言い出すかと思ったら、お供すると言ってくれた。
「当たり前でしょ。ミサトたちあっての私たちだし、いつも受けてる恩を返せるのは人間との交流のときだけだからね。手伝いたいから、手伝わせてね」
「エリコさんと同じです。ゆうくんたちの力になりたいです」
『ありがとう、じゃあ行くわよ』
何だか、してからというもの、ミサトがリーダーっぽくなってしまった。
まずは、いきなり竹藪の中の魔物との戦闘だ。エリコとキララに任せつつも、彼女たちが過負荷にならぬように適度に魔物を間引いてやった。
しかし、魔物たちは毎回同じように殺されて、学習しないのだろうか。竹藪に出てくるモンスターはバンブーダンサー、キリングパンダが多いが、最近、アンデッドが発生してしまったようで、ビーストゾンビ、ビーストスケルトン、ビーストゴーストも出現し始めた。
アンデッドには俺とミサトが見えるらしい。見つけるや否や一目散に逃げていく。やはり、俺たちは死んじゃってるみたいだ。死んでるのに、片栗粉さえあれば、気持ちよく出来ちゃうなんて知らなかったなあ。
竹藪を抜けて、一直線に城に向かう。
城に着いて、城門の衛兵に王への取り次ぎを頼んだ。こういうときも魔王妃と聖女という肩書きは威力を発揮する。丁寧に取り次いでもらい、現在四人は待合室で待たされていた。もちろん衛兵は、エリコとキララの二人しか認識していない。
突然の訪問にもかかわらず、あまり待たされずに謁見の間に通された。朝儀がちょうど終わったようで、先日と同じように、王と王子と家臣たちがいた。王妃は朝儀には出ないようで、不在だった。
王は五十代半ばぐらいのおっさんだが、さすがに王だけあって威厳というか、圧倒されるオーラが出ている。しかし、俺たちにはまったく効き目はない。
「魔王妃殿と聖女殿が如何なるご用件かな?」
王が柔和な声で問いかけてきた。
「魔王妃様がこの国を統治するよう神託を授かりました。つきましては、王に譲位をお願いしに参りました」
「聖女殿、気がふれたか。聖女とは名ばかりで、神託を授かる能力はないと思うが」
「王よ、控えなさい。神託は絶対です。お願いしにと言いましたが、これは命令です。早く譲位なさい」
王の顔が怒りで真っ赤になっていく。
「この無礼者が。異世界の一般人に過ぎない女が、聖女と呼ばれて舞い上がったか。捕らえよ!」
「やっぱりすんなりとは行かないわよね。神様、愚かな王に鉄槌をお願いいたします」
俺はエリコとキララに迫って来る守衛たちの足をローキックで払い続けた。守衛たちは足を折られて、絶叫を上げ、立っていられなくなり、その場に転がった。
十人ほどの守衛がうめき声をあげながら転がっている状況を王たちは信じられないという目で見ていた。
そのとき、玉座で爆音がした。魔王のときと同じようにミサトが玉座を蹴飛ばしたのだ。王子や家臣が王の方に目を向けると、玉座は後方で壁にぶち当たって粉砕されてしまっており、玉座のところで尻もちをついている王の姿が目に入って来た。
「もう一度、言うわよ。譲位しなさい」
エリコの言葉に勇気ある一人の大臣が叫んだ。
「そんな無茶な話に、はいそうですか、と従えるわけがない」
その大臣は俺に蹴飛ばされれて、後方に吹っ飛んでいく。死なないよう手加減したが、腰の骨を折る重傷で、立ち上がることができない。
「神に刃向かう愚か者には鉄槌が下されます。ですが、忠義ある大臣に一度だけ、治癒魔法をかけてあげましょう」
エリコは重傷の大臣に治癒魔法を放ち、全快させた。大臣は傷は治ったが、恐怖で力が入らず、よろよろと立ち上がり、その場で平伏した。
「ほかに文句のある人はいる? 次は治癒魔法はかけないわよ。文句がないなら、神の御前よ。跪きなさい」
見えない圧倒的な暴力の前に従わざるを得ないと判断した者たちが、一人、また一人と跪いて行く。
「守衛の皆さんは王が譲位したら、治癒してあげるから、もう少し我慢しててね」
エリコが守衛たちに声をかけている間に、王と守衛以外は全員が跪いた。
「あなたは跪かないの? それとも、椅子みたいになりたいの?」
王に向けたエリコの言葉に王も跪いた。
グッジョブです!
ありがとう、ネットの人。まさかこんな異世界から感謝されることになるとは、思ってもみなかったことでしょう。
「ミサト、これでいつでもできるな」
「簡単にはさせないわよ。片栗粉はゆうきが持っていてよ」
「俺が持つのは不自然じゃないか?」
「私だって不自然でしょう。そういうものは男が持つものよ」
「いや、片栗粉持って歩く男、俺は見たことないぞ」
「じゃあ、置いていけば。私は別にしなくてもいいのよ」
「喜んで持たせて頂きます」
旅立つ準備は出来た。エリコとキララはここに残ると言い出すかと思ったら、お供すると言ってくれた。
「当たり前でしょ。ミサトたちあっての私たちだし、いつも受けてる恩を返せるのは人間との交流のときだけだからね。手伝いたいから、手伝わせてね」
「エリコさんと同じです。ゆうくんたちの力になりたいです」
『ありがとう、じゃあ行くわよ』
何だか、してからというもの、ミサトがリーダーっぽくなってしまった。
まずは、いきなり竹藪の中の魔物との戦闘だ。エリコとキララに任せつつも、彼女たちが過負荷にならぬように適度に魔物を間引いてやった。
しかし、魔物たちは毎回同じように殺されて、学習しないのだろうか。竹藪に出てくるモンスターはバンブーダンサー、キリングパンダが多いが、最近、アンデッドが発生してしまったようで、ビーストゾンビ、ビーストスケルトン、ビーストゴーストも出現し始めた。
アンデッドには俺とミサトが見えるらしい。見つけるや否や一目散に逃げていく。やはり、俺たちは死んじゃってるみたいだ。死んでるのに、片栗粉さえあれば、気持ちよく出来ちゃうなんて知らなかったなあ。
竹藪を抜けて、一直線に城に向かう。
城に着いて、城門の衛兵に王への取り次ぎを頼んだ。こういうときも魔王妃と聖女という肩書きは威力を発揮する。丁寧に取り次いでもらい、現在四人は待合室で待たされていた。もちろん衛兵は、エリコとキララの二人しか認識していない。
突然の訪問にもかかわらず、あまり待たされずに謁見の間に通された。朝儀がちょうど終わったようで、先日と同じように、王と王子と家臣たちがいた。王妃は朝儀には出ないようで、不在だった。
王は五十代半ばぐらいのおっさんだが、さすがに王だけあって威厳というか、圧倒されるオーラが出ている。しかし、俺たちにはまったく効き目はない。
「魔王妃殿と聖女殿が如何なるご用件かな?」
王が柔和な声で問いかけてきた。
「魔王妃様がこの国を統治するよう神託を授かりました。つきましては、王に譲位をお願いしに参りました」
「聖女殿、気がふれたか。聖女とは名ばかりで、神託を授かる能力はないと思うが」
「王よ、控えなさい。神託は絶対です。お願いしにと言いましたが、これは命令です。早く譲位なさい」
王の顔が怒りで真っ赤になっていく。
「この無礼者が。異世界の一般人に過ぎない女が、聖女と呼ばれて舞い上がったか。捕らえよ!」
「やっぱりすんなりとは行かないわよね。神様、愚かな王に鉄槌をお願いいたします」
俺はエリコとキララに迫って来る守衛たちの足をローキックで払い続けた。守衛たちは足を折られて、絶叫を上げ、立っていられなくなり、その場に転がった。
十人ほどの守衛がうめき声をあげながら転がっている状況を王たちは信じられないという目で見ていた。
そのとき、玉座で爆音がした。魔王のときと同じようにミサトが玉座を蹴飛ばしたのだ。王子や家臣が王の方に目を向けると、玉座は後方で壁にぶち当たって粉砕されてしまっており、玉座のところで尻もちをついている王の姿が目に入って来た。
「もう一度、言うわよ。譲位しなさい」
エリコの言葉に勇気ある一人の大臣が叫んだ。
「そんな無茶な話に、はいそうですか、と従えるわけがない」
その大臣は俺に蹴飛ばされれて、後方に吹っ飛んでいく。死なないよう手加減したが、腰の骨を折る重傷で、立ち上がることができない。
「神に刃向かう愚か者には鉄槌が下されます。ですが、忠義ある大臣に一度だけ、治癒魔法をかけてあげましょう」
エリコは重傷の大臣に治癒魔法を放ち、全快させた。大臣は傷は治ったが、恐怖で力が入らず、よろよろと立ち上がり、その場で平伏した。
「ほかに文句のある人はいる? 次は治癒魔法はかけないわよ。文句がないなら、神の御前よ。跪きなさい」
見えない圧倒的な暴力の前に従わざるを得ないと判断した者たちが、一人、また一人と跪いて行く。
「守衛の皆さんは王が譲位したら、治癒してあげるから、もう少し我慢しててね」
エリコが守衛たちに声をかけている間に、王と守衛以外は全員が跪いた。
「あなたは跪かないの? それとも、椅子みたいになりたいの?」
王に向けたエリコの言葉に王も跪いた。
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