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第四章 聖女と魔王妃
勇者の携帯
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キララの部下がレンの携帯を持ってきた。キララはすぐに充電を開始した。もうすっかり携帯に慣れていて、キーの打ち込みが半端なく速い。
『キララは魔王が恋しくないのか?』
「私、あの人嫌いなんです。オレサマくんで威張ってて、ミサト様にビビっているの見て、ウケるぅって思っちゃってました」
キララがギャル化したら嫌だな。
『でも、夫だろ?』
「まだですよ。正式な結婚式を挙げる前にエリコさんの旅に出たんです。実は心の中で超ラッキーって思ってました」
超とか使わないで欲しいな。
『あれ? そうなの。でも、魔王の継承者だよね』
「はい。エリコさんとの契約は労働契約です。魔王の継承者というのは、政治的な意味での地位の継承者としての魔王妃には正式に就任しています。配偶者としての魔王妃はこれからだったんです」
『じゃあ、魔王殺しちゃっても大丈夫?』
「はい、大丈夫です」
あらあ、魔王嫌われちゃってるよ。まあ、よっぽど邪魔しない限りは殺さないけど。
「ゆうくん、そういえば妙な動画見つけちゃったんです。『ネガの国』って動画です」
『何だって!?』
早速四人でその動画を見てみた。みんなの顔が近いが、俺が気になるのはミサトだ。あまりにも顔が近いので、横を向いてほっぺにチューしたら、
「ちょっとお」
と言いながらも笑っている。先生、二人の仲はここまで来ましたっ。
「ゆうき、これって!?」
おふざけはここまでだった。動画に写っていたのは、こちらの世界だった。
「これは魔区にある古代寺というお寺だと思います。これが五重の塔、これが金堂です」
キララが細い指で動画を指差して説明してくれた。当然ネイルはしていない。ネイルも可愛いが、女性の指はそのままでも十分に美しい。
『法隆寺によく似ているな。これが法隆寺だ』
俺は自分の携帯で法隆寺を検索してキララに見せた。
「古代寺にそっくりです。夢殿も古代寺にあります」
動画は日本ではなく、オーストラリア人がビクトリア砂漠で写したものだ。どういう光の加減でこうなったのか分からないが、非常に幻想的なネガのような国の建物が蜃気楼のように現れたと英語で話しているらしい。
『キララは英語ができるのかな?』
「ネットで勉強しました」
『まだ一ヶ月しか経ってないけど、すごいね』
「中国語はまだ勉強中です。英語、中国語、スペイン語が分かると、ネットがさらに面白くなります」
キララは携帯中毒になってしまった。これはまずい。ネットの露骨な表現から守らねば。
『ちょっと勇者の携帯を見せてくれるかな』
「はい、どうぞ」
キララから携帯を受け取り、色々と設定を直している俺にミサトが話しかけてきた。
「何してるのよ」
「不適切な動画が見られないように設定しているんだ。100%ブロックはできないが、やらないよりはマシだ」
「もう見ちゃってるわよ。この前、エリコと大騒ぎしてたわよ。エリコがいろいろ教えちゃってるよ」
俺は手を止めて、キララと話しているエリコを恨めしそうに見た。
「エリコさん! キララを汚さないでくれ……」
「何言ってんのよ。エッチに興味を持つことは自然なことよ。キララは利口な子だから大丈夫よ」
「あの二人、仲が悪かったんじゃないのか?」
「前は魔王がいたからあまり話せなかっただけで、別に仲は悪くなかったみたいよ。今では姉妹みたいに仲良いわよ」
でもね、とミサトが続けた。
「レンがいやらしい目つきでキララを見ることがあったみたいで、キララはレンのことが大嫌いみたいよ。腹立つわね、あの男」
「何だと! レンのやつ、死刑確定だな」
「本当に最低のやつよ。何であんなのとデートしたのかしら」
「まあ、表面上、爽やかさを装うやつは沢山いるさ。本当に爽やかなやつは見たことがないがな」
「レンを殺しちゃうことも含めて、色々とやることが出てきたわね。古代寺にも行くでしょ? 早く片栗粉を作って、やることやったら、まずはクーデター起こすわよ」
やることやったら、とか、俺が言うセリフじゃないだろうか。
『キララは魔王が恋しくないのか?』
「私、あの人嫌いなんです。オレサマくんで威張ってて、ミサト様にビビっているの見て、ウケるぅって思っちゃってました」
キララがギャル化したら嫌だな。
『でも、夫だろ?』
「まだですよ。正式な結婚式を挙げる前にエリコさんの旅に出たんです。実は心の中で超ラッキーって思ってました」
超とか使わないで欲しいな。
『あれ? そうなの。でも、魔王の継承者だよね』
「はい。エリコさんとの契約は労働契約です。魔王の継承者というのは、政治的な意味での地位の継承者としての魔王妃には正式に就任しています。配偶者としての魔王妃はこれからだったんです」
『じゃあ、魔王殺しちゃっても大丈夫?』
「はい、大丈夫です」
あらあ、魔王嫌われちゃってるよ。まあ、よっぽど邪魔しない限りは殺さないけど。
「ゆうくん、そういえば妙な動画見つけちゃったんです。『ネガの国』って動画です」
『何だって!?』
早速四人でその動画を見てみた。みんなの顔が近いが、俺が気になるのはミサトだ。あまりにも顔が近いので、横を向いてほっぺにチューしたら、
「ちょっとお」
と言いながらも笑っている。先生、二人の仲はここまで来ましたっ。
「ゆうき、これって!?」
おふざけはここまでだった。動画に写っていたのは、こちらの世界だった。
「これは魔区にある古代寺というお寺だと思います。これが五重の塔、これが金堂です」
キララが細い指で動画を指差して説明してくれた。当然ネイルはしていない。ネイルも可愛いが、女性の指はそのままでも十分に美しい。
『法隆寺によく似ているな。これが法隆寺だ』
俺は自分の携帯で法隆寺を検索してキララに見せた。
「古代寺にそっくりです。夢殿も古代寺にあります」
動画は日本ではなく、オーストラリア人がビクトリア砂漠で写したものだ。どういう光の加減でこうなったのか分からないが、非常に幻想的なネガのような国の建物が蜃気楼のように現れたと英語で話しているらしい。
『キララは英語ができるのかな?』
「ネットで勉強しました」
『まだ一ヶ月しか経ってないけど、すごいね』
「中国語はまだ勉強中です。英語、中国語、スペイン語が分かると、ネットがさらに面白くなります」
キララは携帯中毒になってしまった。これはまずい。ネットの露骨な表現から守らねば。
『ちょっと勇者の携帯を見せてくれるかな』
「はい、どうぞ」
キララから携帯を受け取り、色々と設定を直している俺にミサトが話しかけてきた。
「何してるのよ」
「不適切な動画が見られないように設定しているんだ。100%ブロックはできないが、やらないよりはマシだ」
「もう見ちゃってるわよ。この前、エリコと大騒ぎしてたわよ。エリコがいろいろ教えちゃってるよ」
俺は手を止めて、キララと話しているエリコを恨めしそうに見た。
「エリコさん! キララを汚さないでくれ……」
「何言ってんのよ。エッチに興味を持つことは自然なことよ。キララは利口な子だから大丈夫よ」
「あの二人、仲が悪かったんじゃないのか?」
「前は魔王がいたからあまり話せなかっただけで、別に仲は悪くなかったみたいよ。今では姉妹みたいに仲良いわよ」
でもね、とミサトが続けた。
「レンがいやらしい目つきでキララを見ることがあったみたいで、キララはレンのことが大嫌いみたいよ。腹立つわね、あの男」
「何だと! レンのやつ、死刑確定だな」
「本当に最低のやつよ。何であんなのとデートしたのかしら」
「まあ、表面上、爽やかさを装うやつは沢山いるさ。本当に爽やかなやつは見たことがないがな」
「レンを殺しちゃうことも含めて、色々とやることが出てきたわね。古代寺にも行くでしょ? 早く片栗粉を作って、やることやったら、まずはクーデター起こすわよ」
やることやったら、とか、俺が言うセリフじゃないだろうか。
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