見知らぬ美女と一緒に異世界召喚され、お互い幽霊になりました。勇者たちよりも強い最強な俺たちですが、俺は彼女とラブコメしたいです

もぐすけ

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第四章 聖女と魔王妃

庇護者

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 馬車は王家の直轄領に入った。この前、メルサたちと泊まった温泉宿をエリコも知っていて、是非泊まりたいという。

「日本みたいな温泉宿で、温泉もいいし、料理も美味しいのよね」

 エリコは楽しみで堪らないといった様子だが、一方、魔王妃は黒いベールを被って、顔を隠した。

「王家の直轄領では私は政敵ですので、歓迎されません。お役に立つどころか、足を引っ張ってしまい、申し訳ございません。いずれ挽回致しますので、どうか命だけはお助けください」

 まただよ。

『あの、魔王妃さん。俺たちにあなたを害する気はない。こうやって一緒に旅してるんだから、もっとリラックスして、旅を楽しみなよ』

 ベール越しに目を見開いているのが分かる。魔王やお婆さんにどういう説明を受けたのだろうか。

「あ、ありがとうございます」

 これは誤解を解いておいた方がいいな。この子病気になっちゃうぞ。見た目はセクシーな大人の女性だが、まだ十五歳なのだ。

『ねえ、俺たちのこと、どういう風に思っているの。正直に話してごらん』

 躊躇しながらもポツリとポツリと魔王妃は話し始めた。

「神霊様は意志を持った天災だとおばばに言われました。ご機嫌を損ねると国を滅ぼされるので、絶対服従で、常に役に立つようにしていないと、すぐに殺されると説明されました」

 そんなことないと言おうとしたが、確かに初対面の魔王をいきなり殺人未遂したっけ。

『理由なく殺したりはしないわよ。以前、魔王に蹴りを入れたのは、私が保護しているゲンムくんを侮辱したからよ』

 ミサトの声を魔王妃は初めて聞いて驚いていたが、すぐに平伏した。

「神霊様、反省しておりますので、何卒お許しください」

『ゲンムくんからも許してあげて欲しいと言われてるんで、あれはもういいわよ。そうね、私たちの姿を見れば安心するかな。あなたたちと同じ姿よ』

 ミサトは俺が入るようにしてビデオを自撮りした。

『やっほー、魔王妃ちゃん、名前はなんて言うの? 私はミサトで、こっちはゆうきだよ』

 魔王妃を安心させるように笑顔で手をふっているが、「やっほー」って呼びかけはこっちであるのかな。

 魔王妃はベールを脱いでビデオをガン見していた。

「私はキララといいます。ミサト様、ゆうき様、改めてよろしくお願い致します」

 魔王妃、キララは少し安心したようだ。同じ姿で同じように動いているビデオを見せたことで、話が通じると思ったようだ。後でエリコに聞いたのだが、やはり俺はこの世界では超イケメンらしい。キララが興奮して俺の容姿について語っていたらしい。

『キララ、あなたには私たちの役に立ってもらうわよ。裏切らない限り、この世であなたに敵はいないわ。敵は皆んな排除してあげる。でも、私たちの庇護者に手を出してはダメよ』

「庇護者の方々のお名前を頂戴出来ますでしょうか」

『それは内緒よ。あなたが善行を行っている限り、手を出すことはないはずよ。善行を行いなさい』

「かしこまりました」

 俺も一言追加した。

『ちなみにエリコさんとキララは俺の庇護者だからとりあえず安心してね。でも、嫌になったら庇護から外すから、気をつけて下さい』

「どういうところに気をつければいいですか?」

 エリコからの質問だ。

『言葉で説明するのは難しいんだけど、自分自身の目標に向かって一生懸命頑張っていれば応援したくなります。怠け者は庇護する気になれないです』

「ミサトは庇護しないの?」

 キララはエリコがミサトを呼び捨てにしているので目を丸くしている。

『私は男性担当みたいなのよ。主に子供とおじさんね。老人と若い男には全く興味がないのよ。魔王とか勇者も全く興味なし、気に食わなかったら、いつでも蹴るよ』

 馬車が宿屋の前で止まった。御者の人が宿屋と交渉している。大丈夫なようだ。聖女の名前を出して、特別室を用意してもらった。ちなみに旅費は全てキララ持ちだ。魔王妃は実に使える。

 キララもようやく恐怖が薄れて来たようで、エリコと一緒にお風呂に入ったり、食事をしたりして、少しずつ笑顔が出るようになった。ミサトと俺がエリコと同じ世界から来たことを知って、随分と安心したようだ。キララは笑うと年相応の可愛らしい笑顔だった。





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