見知らぬ美女と一緒に異世界召喚され、お互い幽霊になりました。勇者たちよりも強い最強な俺たちですが、俺は彼女とラブコメしたいです

もぐすけ

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第四章 聖女と魔王妃

魔王妃

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 魔王妃をエリコに同伴させることで合意した。今日、魔区を出る。

 人間の俺だったら、可憐な美女のミサト、お姉さま系美女のエリコ、セクシー美女の魔王妃のそれぞれタイプの違った美人に囲まれて、ウハウハの旅だったであろう。

 だが、今の俺には、エリコと魔王妃は可愛い猫ぐらいの感覚しかなく、むしろミサトとの二人っきりの時間を奪う邪魔者でしかない。

 ただ、エリコはホームシックで弱っているし、魔法妃はいつ殺されるかと思っているらしく、ビクビクしていて庇護欲を誘う。守ってやりたくなるのだ。

 ミサトに庇護欲のことを聞いてみた。

「キューンとするやつでしょ。それね、私の場合、年下の男の子と不細工で哀れなおじさんに感じちゃうのよ」

「年下はさておき、おじさんは出来れば避けて欲しいな」

「分かってるわよ。これ以上メンバーは増やさないでおきましょう。エリコたちも竹藪神社に置いていけばいいわよ」

「充電はどうする?」

「あっ、ホントね。バッテリーをもう一つ二つ欲しいわね」

「充電器のスペアが見つけるまで、エリコはついて来ると思うぞ。そうだ、魔王妃は色々知っているだろうから、同じものがないかどうか、聞いてみよう」

 俺は魔王妃に向かって拡声器で話しかけた。

『魔王妃さん、これと同じもの、見たことないか?』

「ひっ、すいません。こちらでございますか。これはどういったものでしょうか」

 いやあ、怯えすぎだろう。

『そんなに怯えなくても、何もしないから大丈夫だよ。これは神器だ。他の神器を動かすための力を太陽から吸収して、神器に渡す機能がある。ソーラーバッテリーというんだ』

「申し訳ございません。よくわからないです。ただ、神器でしたら、魔神殿にいくつかございます。出発前にご覧になりますか?」

『是非見てみたいね。案内してくれる?』

「かしこまりました」

***

 俺たちは魔神殿の神主の案内で宝物殿の非公開の部屋まで見せてもらった。魔王妃がいるのでVIP待遇だ。だが、めぼしいものはなかった。

『エリコ、神器ってどうやって入手するか聞いてくれる?』

 俺やミサトが話すと神主に崇められてしまうため、エリコに聞いてもらうことにした。

「古来から受け継いだものと参拝に訪れた人から持ち込まれたものです。持ち込み品は入手経緯も聞いていますが、庭や広場に落ちていたとか、蔵から出てきたとか、人から譲り受けたなどです」

 まだ整理していない持ち込み品があるということで、それも見せてもらった。神器かガラクタかは、神社にいる鑑定人が判断するらしい。

 神主にお礼を言ってもらって、魔神殿を出た。

『欲しいものはなかったな』

「申し訳ございません。貴重なお時間を無駄にしてしまいました。挽回の機会をいただけますでしょうか。命だけはお許しを」

 魔王妃が土下座して何度も謝っている。

『いや、そんなに怯えなくても大丈夫だぞ。殺しはいないし、痛いこともしないから、もっと安心して欲しい』

 魔王妃が信じられないという顔で俺の声がした方を見ている。しばらくすればわかってもらえるだろう。

 俺たちはとりあえず竹藪神社に向かうことにした。聖女と魔王妃の二人旅と世間からは見えるため、美しい姿を一目見ようと、沿道に多くの見物人がいたのには驚いた。

 だが、エリコも魔王妃も馬車から顔を出すことなく、淡々としている。

『エリコさん、手とか振らないの?』

「そういうサービスをする気にならないんですよ。考え方とか文化が違いすぎて、何だかこちらの人に馴染めないんです」

 やっちゃってたじゃないか、とは何だか可哀想だから言わないでおいた。

『魔王妃さんは手は振らないの?』

「神霊様を差し置いて手を振るなど、滅相もございません」

『俺たちのことなんて気にしなくていいのになあ。ねえ、手を振ってやりなよ』

「神霊様がそうおっしゃるなら」

 魔法妃が馬車の窓を開けて、手を振った。たちまち歓声が湧き上がる。

 ミサトはぼんやりと二人を眺めていた。

「何考えている?」

「この子たちどうしようかと思って」

「人間たちとの会話の仲介者として便利だな。あと、魔王妃さんはいろんなところにVIP待遇で入れるから、思った以上に役に立つな」

「そうね。王家を潰して、魔王にも退位してもらって、魔王妃を人間のトップにすると、もっと便利かもね」

 ミサトは何だか悪いことを考えているようだった。
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