見知らぬ美女と一緒に異世界召喚され、お互い幽霊になりました。勇者たちよりも強い最強な俺たちですが、俺は彼女とラブコメしたいです

第一章 異世界召喚

別れ

　廊下に飛び出て来た半狂乱のレンを見て、守衛がびっくりして集まって来た。エリコも部屋を出て来た。

　レンがエイコを見つけて少し落ち着いたようだ。

「出たんだ、幽霊が！　誰もいないのにビンタされて、背中を小刻みに指で押された」

「何なのそれ？」

「なあ、エリコ、一緒にいてくれないか？」

　エリコは護衛たちに下がるように言って、レンに自分の部屋に入るように言った。もちろん俺たちもエリコの部屋に入った。

「レン、私と一緒にいたいのなら、そんな作り話しないで、素直にそういえばいいのよ」

「いや、作り話なんかじゃない。でも、そうだな。一緒にいたいというのは、幽霊とは関係ないな」

「いいのよ、別にどっちでも。一緒にいてあげるわ」

　あれ、何だか妙な雰囲気になって来たぞ。うっ、夜叉がいる。タツノさんが夜叉の顔になっている。

　あっ、レンとエリコがキスしそうだと思ったら、タツノさんがエリコをビンタした。

　パチーン。

　エリコが頬をぶたれてよろめいている。勇者ほどの防御力はないようだ。

「で、出た！？」

　レンが叫んでいるが、どうやらエリコはレンにぶたれたと思ったようだ。

「レン！　何するのよっ」

「いや、俺じゃないっ」

「あなたは相変わらず私に暴力を振るうのねっ」

　何？　こいつDV野郎なの？　タツノさんの方をみると、タツノさんもエリコの発言に驚いている。

「違うって」

「もういいっ。いいから出て行って。さあ」

　そう言って、エリコはレンの手を引っ張って、ドアの方にレンを無理矢理引っ張って行く。

　タツノさんが歩いているエリコの背中に蹴りを入れた。タツノさんはミニスカートなので、中身が丸見えだったが、まあ、タイツだしな。

　エリコは前につんのめって、ドアに頭をぶつけてしまった。

「もう出てって。もう嫌だあ。何でまたこうなるのよぉ」

　エリコはもう泣き声になってしまっている。

「いや、本当に俺じゃない」

「早く出てって。出ていきなさいよ！」

　エリコがレンの胸ぐらを掴んで強引に部屋の外に出そうとする。レンは乱暴にエリコの手をはたいた。

「痛いっ」

　エリコが手を押さえてうずくまる。

「わかったよ。出て行ってやるよっ」

　レンは乱暴にドアを開けて、部屋を出て行った。

　エリコは床にうずくまったまま、すすり泣きしている。

「ちょっと可哀想だな」

　俺はつぶやいた。

「ふん、自業自得よっ、人の彼氏に手を出す方が悪いのよ」

「レンはそのう、すぐに手をあげるやつなのか？」

「実はまだ付き合い始めて間もないの。女の人に暴力振るう人だとは知らなかった。褒美の女の子に喜んだり、幽霊を情けなく怖がったり、エリコとすぐにヨリを戻そうとしたり、正直幻滅しちゃった。ちょっと蹴飛ばして来る」

「お、おいっ」

　俺は慌てて後を追ったが、レンの部屋に入ったら、既に数発いいのが入ったようで、レンがお腹を押さえながらうめいていた。

（タツノさん、こえ～よ）

　だが、タツノさんは泣いていた。

「ふん、こんなやつ、願い下げよっ」

　そう言って、タツノさんはレンの部屋を出て行ってしまった。俺はすぐに後を追った。

「ついてこないでっ。しばらく一人にさせて」

（これは追わない方がいいかな）

「分かった。俺、この辺りにいるから」

　タツノさんは俺に背中をむけたまま、

「うん」

と小さく返事をして、天井の中に消えて行った。