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第一章 異世界召喚
王との謁見
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レンとエリコは王と謁見していた。
「お主たち二人は我が人類の救世主である。褒美は思うままに与えよう。一刻も早く魔王を打ち倒してもらいたい」
王と王妃が上座に座っており、玉座に真っ直ぐと伸びる絨毯の左右に臣下が勢揃いしている。
臣下の列の王に近い二人は王子だと紹介されていたが、そんなにイケメンではなかった。エリコのテンションは若干下がり気味だ。それを知ってか、王子の一人が両手でパンパンと二回音を鳴らすと、室内に男女それぞれ十人が入室して来た。
レンが女性たちを前にして若干照れている。エリコは目が怖いぐらい男たちをガン見している。
「タツノさん、あれ」
「うん、何なのかしら、赤黒いわね」
俺たちには植物以外の生物は普通の色合いに見えるが、それ以外は全て赤黒く見える。あの二十人は人ではないことは確かだ。
この国は明らかにレンとエリコを利用している。
「大変だわ、レンに早く知らせてあげないと」
「すぐに何か起きることはないだろう。一人になる機会を待とう」
「ありがとう。なかむらくんがいなかったら、私とっくに捕まっていたかもね。こいつら、悪いやつよね」
「俺たち平和ボケしているはずだから、これからも慎重に行こう」
タツノさんは頷いた。
今晩は城で歓迎の宴があり、魔王討伐には明日出発するようだ。随分と強行日程だが、レンやエリコは当たり前のように承諾していた。
「何だか素直過ぎないか、あいつら」
「ええ、おかしいわね。レンはかなり自己主張が強いはずなんだけど、別人のようだわ」
自己主張が強い、ねえ。要するにわがままなんじゃないか。
「エリコは本能剥き出しの感じだな。何か魔法でもかけられているのか?」
ようやく二人はそれぞれの部屋に案内され、小休止するようだ。タツノさんを一人にするのは心配だったが、レンと二人にしてあげた方がいいと思って、俺はレンの部屋に入らないでいた。
「何しているのよ、一緒に来るのよ」
「いいのか?」
「正直、心細いのよ、一緒に来て」
「分かった」
俺たちはドアを通過した。レンはベッドに座ってニヤけていた。
「いやあ、女の子たち可愛かったなあ。勇者だもんな、遂に来たな、俺の時代がっ」
すげえ独り言だな。い、いかん、タツノさんがブチ切れそうだ。でも、いいか。放っておこう。
パチーン。
レンがいきなりビンタされてびっくりして、辺りをキョロキョロしている。
勇者だからビンタで済んでいるんだと思う。さっきの魔物との戦いの感じからすると、普通の人間だったら、歯が全部折れていると思う。
ここで問題が発生した。予定していた筆談が出来ない。壁に文字を書こうとしたのだが、それができないのだ。
まず、物を持つことが出来ない。すり抜けてしまう。おかしい、本堂の扉は開けることが出来たのに何故だ? 壁に傷をつけることも出来ない。
途方に暮れてしまっているタツノさんに俺は声をかけた。
「タツノさん、レンの背中に指で文字を書くのはどう?」
「そ、そうね、やってみる!」
タツノさんは目を輝かせているが、俺は多分レンは逃げだすだろうと予想した。
タツノさんがレンの後ろに行き、背中に指で文字を書こうとするが、レンはどうやら最初に指が触れたときしか感触がないようだ。
そういえば竹藪で魔物を攻撃したときも、殴る蹴るは出来たが、掴むことは出来なかった。俺たちは生物対して打突しか出来ないようだ。
タツノさんもそれに気づいたらしく、指でトントンしながら、文字を書き始めた。
真っ青な顔をしているレンは予想通りの行動に出た。
「ぎゃああああ、出たあっ」
と叫んで、一目散に部屋を飛び出したのだ。
「何でこうなるのよっ」
俺は悔しがっているタツノさんをなだめて、いっしょに部屋を出た。
「お主たち二人は我が人類の救世主である。褒美は思うままに与えよう。一刻も早く魔王を打ち倒してもらいたい」
王と王妃が上座に座っており、玉座に真っ直ぐと伸びる絨毯の左右に臣下が勢揃いしている。
臣下の列の王に近い二人は王子だと紹介されていたが、そんなにイケメンではなかった。エリコのテンションは若干下がり気味だ。それを知ってか、王子の一人が両手でパンパンと二回音を鳴らすと、室内に男女それぞれ十人が入室して来た。
レンが女性たちを前にして若干照れている。エリコは目が怖いぐらい男たちをガン見している。
「タツノさん、あれ」
「うん、何なのかしら、赤黒いわね」
俺たちには植物以外の生物は普通の色合いに見えるが、それ以外は全て赤黒く見える。あの二十人は人ではないことは確かだ。
この国は明らかにレンとエリコを利用している。
「大変だわ、レンに早く知らせてあげないと」
「すぐに何か起きることはないだろう。一人になる機会を待とう」
「ありがとう。なかむらくんがいなかったら、私とっくに捕まっていたかもね。こいつら、悪いやつよね」
「俺たち平和ボケしているはずだから、これからも慎重に行こう」
タツノさんは頷いた。
今晩は城で歓迎の宴があり、魔王討伐には明日出発するようだ。随分と強行日程だが、レンやエリコは当たり前のように承諾していた。
「何だか素直過ぎないか、あいつら」
「ええ、おかしいわね。レンはかなり自己主張が強いはずなんだけど、別人のようだわ」
自己主張が強い、ねえ。要するにわがままなんじゃないか。
「エリコは本能剥き出しの感じだな。何か魔法でもかけられているのか?」
ようやく二人はそれぞれの部屋に案内され、小休止するようだ。タツノさんを一人にするのは心配だったが、レンと二人にしてあげた方がいいと思って、俺はレンの部屋に入らないでいた。
「何しているのよ、一緒に来るのよ」
「いいのか?」
「正直、心細いのよ、一緒に来て」
「分かった」
俺たちはドアを通過した。レンはベッドに座ってニヤけていた。
「いやあ、女の子たち可愛かったなあ。勇者だもんな、遂に来たな、俺の時代がっ」
すげえ独り言だな。い、いかん、タツノさんがブチ切れそうだ。でも、いいか。放っておこう。
パチーン。
レンがいきなりビンタされてびっくりして、辺りをキョロキョロしている。
勇者だからビンタで済んでいるんだと思う。さっきの魔物との戦いの感じからすると、普通の人間だったら、歯が全部折れていると思う。
ここで問題が発生した。予定していた筆談が出来ない。壁に文字を書こうとしたのだが、それができないのだ。
まず、物を持つことが出来ない。すり抜けてしまう。おかしい、本堂の扉は開けることが出来たのに何故だ? 壁に傷をつけることも出来ない。
途方に暮れてしまっているタツノさんに俺は声をかけた。
「タツノさん、レンの背中に指で文字を書くのはどう?」
「そ、そうね、やってみる!」
タツノさんは目を輝かせているが、俺は多分レンは逃げだすだろうと予想した。
タツノさんがレンの後ろに行き、背中に指で文字を書こうとするが、レンはどうやら最初に指が触れたときしか感触がないようだ。
そういえば竹藪で魔物を攻撃したときも、殴る蹴るは出来たが、掴むことは出来なかった。俺たちは生物対して打突しか出来ないようだ。
タツノさんもそれに気づいたらしく、指でトントンしながら、文字を書き始めた。
真っ青な顔をしているレンは予想通りの行動に出た。
「ぎゃああああ、出たあっ」
と叫んで、一目散に部屋を飛び出したのだ。
「何でこうなるのよっ」
俺は悔しがっているタツノさんをなだめて、いっしょに部屋を出た。
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