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第二章 王国編
第二十四話 最終話
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国王の一行をレギンの軍が保護したのを確認した私は、カイエン軍師に相談した。
「アホな男たちね。兵士が可哀想だわ。軍部の上の方だけ掃除できますか?」
「両軍の正面衝突を避け、弓矢で狙い撃ち出来ると思います」
「敵の情報を逐次教えますので、やってみてくれますか」
レギン軍は進軍を開始した。敵を誘い出すことが目的なので、ゆっくりとした前進だ。
髭もじゃは勇敢というよりは無謀で、軍の先頭に出て兵士たちを鼓舞していた。
私は土塁に隠れて待機していた弓兵のうち、ちょうどよい位置にいる部隊にメッセージをとばした。
弓兵十名が姿を現し、髭もじゃを標的にして弓矢を射た。
「うごっ」
見事弓矢が当たり、髭もじゃは馬から落ちた。
「王国の兵士諸君、総大将の首は取った。このまま引き下がるなら、追撃はしない。貴国の国王ジョージ三世は、そもそも挙兵の命は下していない。ハマーン大将軍の独断での挙兵である。国王陛下は退却を希望されている」
伝令兵がよく通る大きな声で、王国軍にアナウンスした。
「う、嘘だ。惑わされるなよっ」
「体制を整えよ」
数名の指揮官が継続して戦闘する意欲を見せたため、同じように弓兵に狙いをつけて射殺させた。
「戦闘の意志を持つものは、射殺する。誰がどのように号令をかけているか、わが軍はすべて把握できる。命を粗末にするな。退却せよ」
再び伝令兵の声がこだました。
そのとき、国王ジョージ三世が乗るチャリオットが、レギン帝国陣営から戦場中央まで進んできた。
「退却せよ。王命である。退却せよ」
王の凛とした声が戦場に響いた。
王国兵士からどよめきが上がる。
「国王様だ」
「大将軍の独走だったんだ」
「退却だ、退却するぞ」
王国軍の趨勢が退却へと動き出していく。
私は戦場の動向をずっと見守っていた。そして、声を上げている国王の姿を多角的に観察してみた。
(あの国王、格好いいじゃない)
こうして、王国軍は撤退し、王国は降伏を表明した。
レギン帝国は大陸を統一し、旧王国領は公爵に降格した旧王室に任せた。
***
「以上が王国降伏までの顛末報告です」
私は上皇に終戦の報告をしていた。
「カレン、あっという間に大陸を統一してしまったな」
「これでしばらく戦争はないですよね、上皇陛下」
「そうだな。我々は単に自由に放牧できれば、それで満足だからな。海の向こうの国までどうしようとは思わない」
「私の能力は平和的な利用もできると思います。これからは国を富ませるために使いたいと思います」
「そうだな。ますます忙しくなりそうだな」
「上皇陛下、私、夫探しの旅に出たいのですが、お許しいただけますか。政務はどこでもできますので、旅先でしっかりと働きますから」
「そうか。ダミアンや他の皇子たちも不甲斐ないな」
「あ、ダミアンはとりあえず押さえておきます。一人じゃだめってことはないですよね。私、皇帝ですから」
「ははは、そう来たか。もちろん何人でもいいぞ」
私もいっしょに笑った。
「アホな男たちね。兵士が可哀想だわ。軍部の上の方だけ掃除できますか?」
「両軍の正面衝突を避け、弓矢で狙い撃ち出来ると思います」
「敵の情報を逐次教えますので、やってみてくれますか」
レギン軍は進軍を開始した。敵を誘い出すことが目的なので、ゆっくりとした前進だ。
髭もじゃは勇敢というよりは無謀で、軍の先頭に出て兵士たちを鼓舞していた。
私は土塁に隠れて待機していた弓兵のうち、ちょうどよい位置にいる部隊にメッセージをとばした。
弓兵十名が姿を現し、髭もじゃを標的にして弓矢を射た。
「うごっ」
見事弓矢が当たり、髭もじゃは馬から落ちた。
「王国の兵士諸君、総大将の首は取った。このまま引き下がるなら、追撃はしない。貴国の国王ジョージ三世は、そもそも挙兵の命は下していない。ハマーン大将軍の独断での挙兵である。国王陛下は退却を希望されている」
伝令兵がよく通る大きな声で、王国軍にアナウンスした。
「う、嘘だ。惑わされるなよっ」
「体制を整えよ」
数名の指揮官が継続して戦闘する意欲を見せたため、同じように弓兵に狙いをつけて射殺させた。
「戦闘の意志を持つものは、射殺する。誰がどのように号令をかけているか、わが軍はすべて把握できる。命を粗末にするな。退却せよ」
再び伝令兵の声がこだました。
そのとき、国王ジョージ三世が乗るチャリオットが、レギン帝国陣営から戦場中央まで進んできた。
「退却せよ。王命である。退却せよ」
王の凛とした声が戦場に響いた。
王国兵士からどよめきが上がる。
「国王様だ」
「大将軍の独走だったんだ」
「退却だ、退却するぞ」
王国軍の趨勢が退却へと動き出していく。
私は戦場の動向をずっと見守っていた。そして、声を上げている国王の姿を多角的に観察してみた。
(あの国王、格好いいじゃない)
こうして、王国軍は撤退し、王国は降伏を表明した。
レギン帝国は大陸を統一し、旧王国領は公爵に降格した旧王室に任せた。
***
「以上が王国降伏までの顛末報告です」
私は上皇に終戦の報告をしていた。
「カレン、あっという間に大陸を統一してしまったな」
「これでしばらく戦争はないですよね、上皇陛下」
「そうだな。我々は単に自由に放牧できれば、それで満足だからな。海の向こうの国までどうしようとは思わない」
「私の能力は平和的な利用もできると思います。これからは国を富ませるために使いたいと思います」
「そうだな。ますます忙しくなりそうだな」
「上皇陛下、私、夫探しの旅に出たいのですが、お許しいただけますか。政務はどこでもできますので、旅先でしっかりと働きますから」
「そうか。ダミアンや他の皇子たちも不甲斐ないな」
「あ、ダミアンはとりあえず押さえておきます。一人じゃだめってことはないですよね。私、皇帝ですから」
「ははは、そう来たか。もちろん何人でもいいぞ」
私もいっしょに笑った。
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