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アラクネの集落

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アラさんによると、妹さんたちがお産のために島に帰ってきているという。

1人が2人産んで、また大陸に戻るそうだ。大陸の生活が楽しくてしかたがないみたいだ。

アラさんは以前は蜘蛛の巣を作って、そこで暮らしていたが、この度、母屋の横にアラさん専用の離れができ、そこで寝泊まりしてもらうようになっている。アラさんの姉妹にはとても助かっているというマイクおじさんが、わざわざアラさんのために手配したものだ。

産まれたら僕に会わせてね、とアラさんにお願いしたら、もう産まれているので、今から見に行かないかと誘われた。

フェンリルとアラクネの縄張りを通る分には森でも安全だという。エリカさんとレラもついてきていいとのことだったので、行ってみることにした。

森を歩いているとき、アラさんがアラクネについて話してくれた。

アラクネは蜘蛛が本体ではなく、実は人間の方が本体なのだそうだ。そのため、生まれてくるときは人間の赤ちゃんとして生まれてくる。いつもは人間の姿で暮らしており、戦闘時に蜘蛛に変身するらしい。

「逆だと思っていました」

(あんな大きな姿でウロウロしてたら、狙ってくれと言っているようなもの。それにいちいち木が邪魔になって暮らしにくい)

「そう言われれば、そうですよね」

森は木が鬱蒼としていて、思った以上に暗い。ただ、リヴァイアサンへの住居につながる石畳の道がまっすぐに整備されていて、非常に歩きやすい。人の手でできているようで、はるか昔はよく往来があったのだと思われた。

(500年ぐらい前まではよく人間が行き来していたらしい)

「アラさんは森で何年ぐらい暮らしているのですか」

(女性に年齢を聞くのは失礼)

「あ、失礼しました」

(まだ100歳ぐらいだよ)

レラが代わりに教えてくれた。アラさんがレラを睨んでいる。

アラクネの縄張りまでは1時間ほどだった。アラさんが以前作っていたような蜘蛛の巣を想像していたのだが、普通に人間暮らす小屋が7軒建っていた。

子供は卵ではなく、おなかから生まれてくるという。やはり本体は人間だということだ。ただ、お産は非常に楽で、すぽんと生まれて来るらしい。すでに全員がお産を済ませていて、俺に会わせてくれるそうだ。

最初の小屋に入った。ひかるさんという人の家だ。入ってすぐに気づいたのは、機織り機があるところだ。どこの小屋にもあるという。蜘蛛の糸で布を作り、衣服などを縫製すると説明してくれた。アラクネの皆さんは生まれたときから縫製が得意なのだそうだ。

しばらく居間で待っていると、寝室からひかるさんときれいな女性2人が出てきた。

あれ? 女性恐怖症が出てしまっている。非常に2人の女性が怖い。今までの話を聞いて、アラクネを脳が人間判定してしまったようだ。すかさず、リトマス試験を行う。2人とも赤だった。事前に俺の話を聞かせて、カレイの煮込みなどの日本食を何度か食べさせてから、会うようにしてくれたそうだ。

リトマス試験が赤の女性とは、普通に話せるようになったので、この2人とはもう大丈夫だ。アラクネは1ケ月ほどで成人女性まで成長するのだそうだ。人間の進化形なのかな。

同じように残りの5件をまわって、全部で12人の美しい女性を仲間判定した。名前は店の人に決めてもらうそうだ。もうすぐにも出発したいようで、俺たちに挨拶した後、18人で森を出て行ってしまった。

「アラは寂しくないんですか?」

(ランがいるから大丈夫)

「あ、そうですか」

なんだかドキドキしてしまった。

(ちょっとリヴァイアサン様のところまで行ってみるか? 出て来られるかどうかはわからないけど)

「はい、ぜひ」

集落を出て、さらに北に行くこと1時間。森が開けて、ピラミッドの上部3分の1を平たくしたような建物が現れた。1辺が100メートほどの大きさで、非常に巨大な建物だ。

正面に10メートル四方はありそうな重厚そうな扉がある。扉は固く閉ざされていた。

アラが扉に近づいて行って、

「リヴァイアサン様、最近島に上陸したランスロットという人間とその一行を連れて来ました。カレイの煮物をくれた人間です」

と声に出して来訪を伝えた。

すると扉がギリギリと音を立てながら開いた。

(ラン、入っていいみたい)

俺とエリカさんとレラはアラさんに連れられて、リヴァイアサンの寝殿? へと入って行った。
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