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第十一章 ベラ、ブラ、パラ

戦争

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旅を始めて4日目、ブラの首都のジャーの手前で、ブラ教皇軍の大軍20万がアイシャ一行を待ち構えていた。

「ルミさんの言うとおり、本当に軍隊出してきましたね」

アイシャが今日の護衛のキョウコに話しかける。キョウコはエリーゼのことさえ聞かなければ問題ない。

「そうね。さすがにあんなには浄化できないから、軍は姫3人に任せて、あなたの護衛に集中するわね」

軍が何人いるのかよくわからないが、たった3人で大丈夫なのだろうか。

先頭の馬車から3人の女性が降りてきた。メイリンとは昔からの知り合いだ。ほかの2人は面識はあるが、はるか遠くの異国の出身と聞いている

メイリンが千手観音を発動する。1000の魔法が一気に放たれ、空に極彩色の無数の帯が描かれる。

テレジアが魔法強化のスキルを発動する。1000の魔法が1000倍の100万の魔法に強化され、20万の大軍が一瞬にして死滅した。

ロザンヌが超回復魔法を発動する。20万の大軍がHP1の状態で生き返る。

戦争は約6秒で終わった。

「すごいね、彼女たち。これ、うちら、バトルロイヤルで負けるかもしれないわ」

キョウコが感心しているが、アイシャはそんな余裕のコメントしているキョウコが信じられない。

アイシャの聡明な頭脳で概算で計算してみたが、恐らく20万の大軍だと思われる。それが一瞬にして死滅し、そして、生き返った。

神と人間とはここまで差があるのだろうか。

「あ、あのう、やはり人間ではどうあがいても無理ってことですよね?」

「え? 何のことかしら?」

「皆さんには勝てないってことです」

「私たちには勝てないわよ。でも、あなたを殺すのが彼らの目的でしょう? それなら可能性はゼロではないわ。だから、我々も手を抜かないのよ。リンサマのものを傷つけようなんて、許されるものではないわよ」

怒っているキョウコさんを見たのは初めてだった。

(そっか、私は神様のものなんだ)

アイシャの馬車はたくさんの兵士が倒れている横を通り過ぎ、首都ジャーを迂回しながら北へのびる幹線を進んで行った。

この戦いの後、ブラからもベラからも暗殺部隊が送られることはなくなった。

***

先のダムール帝国の軍の壊滅の情報は、周辺国に伝播し、北半球の国家すべてで共有されることとなった。

また、ブラの軍の壊滅の情報も周辺国に伝播し、南半球の国家すべてで共有されることになり、星全体での共有情報となった。

現時点での人類の文明国家は50余国。すべての国から姫を献上したいとの祈りが教会などを通じて天界に伝えられた。

***

リンリンは天界の総務部から出社の依頼を受けた。

総務部長は女神テンシンが務める。天界は完全に男女平等で、部長職20名のうち、10名が男神、10名が女神だ。

「リンリン部長。人界の国々がこぞって姫を献上したいと各国の教会を通じて要望を出してきました。これが国のリストです」

「ありがとうございます」

「ところで、リンリン部長。月次の部長会に出席されないのはなぜでしょうか」

「え? そんなのがあるんですか? 知りませんでした」

「あら、天界通信はご覧になっていますか?」

「いえ、ラクタさんに任せっきりです」

「なるほど。ラクタが隠してますね。一度、ご出席をお願いします。次回は5日後、バトルロイヤルの3日前です」

「了解しました。調整して参加するようにします」
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