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第八章 ダルムンド
長年の決着
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ロザンヌ姫を連れて、リンリンはエーデンリッヒ城に転移した。
突然現れたリンリンとロザンヌ姫を父と継母が驚いて見ていた。
「あ、父さま、母さま、お揃いでしたか」
「ロザンヌ様っ」
父がすぐに気づき、騎士の礼をする。継母が慌てて貴族の礼をした。
「父さま、母さま、紹介が遅れました。ロザンヌ姫は僕の24番目の妃となりました」
「お父様、お母様、旦那さまの妾となりました。ロザンヌです。よろしくお願いいたします」
「リンリン、お前、ロザンヌ様を妾などと!」
「父さま、ロザンヌ姫がそれでもいいと嫁いできたのです。まあ、そんな話をしに来たのではないです。僕の言葉だと信用できないようなので、ロザンヌ姫についてきてもらったのです。ダルムンド王を連れて来てもよかったのですが、彼は転移ができないので、面倒なのですよ。ロザンヌ姫の言うことであれば信用しますよね? 父さま」
「も、もちろんだとも」
「母さまも信用してくれますね」
「え、ええ」
「じゃ、ロザンヌ姫、よろしくお願いします」
「はい、旦那さま。エーデンリッヒ伯爵家は取り潰しとなりましたので、所領は没収となり、このロザンヌの私有地となりました。この城も私のものとなりました。お父様、よろしいでしょうか?」
「はい、王の命とあらば、我が領土を国に返還いたします」
「あ、あなた。そんな理不尽な」
「お前は黙っていなさい」
「あら、お母様はご納得いただけないのでしょうか」
エーデンリッヒ伯爵が慌てて間に入る。
「ご無礼をお許しください。突然のことで妻も動転しております。あとで私からしっかりと説明しておきます」
「勅命違反ということであれば、しかるべき対応をしないといけないのですが、私といたしましては、大事な旦那さまのお母様にはあまり無下なことはしたくないのですが」
「勅命に逆らう気などございません。おい、お前もわかっているだろう。謹んでお受けしなさい」
「は、はい、謹んでお受けします」
継母ががっくりとうなだれた。
リンリンは継母の心を観察した。相変わらず真っ黒だ。絶望感は出ているようだが、善意がどこにも見当たらない。ちょっと揺さぶってみるか。
「ロザンヌ姫、母さまは1年前、僕を崖から突き落としたんです。300メートルぐらい落ちて、危うく死にかけたのですよ」
「なっ、なんですって!?」
リンリンは笑いをこらえた。
(なんだこの棒読みは。ロザンヌ姫の大根役者っぷりは半端ないな)
しかし、継母の方は大きく動揺したようだ。
「い、いえっ、リンリンの誤解でございます。私は決してそのようなことは・・・」
「父さま、どうして僕のお母様を裏切って、このような悪だくみ満載の母さまと付き合ったりしたんです? この期に及んでも、腹の中は真っ黒けですよ、この人」
「こんな女でも優しいところはあるんだ」
おっ、父がかばった。でもダメだ。この女にはまったく響いていない。この女、本当にダメかも。セイラのために何とか改心させたいんだが。
「母さま、僕は実は神になったんですよ。あなたの知っているベルゼブブを倒してね。ロザンヌ姫は神の使徒にしました。それで、何とか母さまを改心させたいんですが、善意がひとかけらも残っていないので、改心させようがないんです。その根源がエーデンリッヒ伯爵家だと思って、取り潰したんですが、どうも効果はないようだ。あなたはんぜそんなに真っ黒なんですか?」
「その黒い感情というのが、私にはわからないわ。生まれたときと何ら変わっていないわよ。欲しいものを単純に欲するだけよ」
これが1万に1人の確率での俺のスキルが効かない人か。打つ手ないか。
「しかたないか。じゃあ、心全部きれいにしてみようか。1つも善意がなかったら、心がなくなってしまうけど、そこからまた何かうまれるかもしれない」
父が何か言っているが、継母に向かって、俺はインストの加護を発動した。
ごっそりとネガティブな心が取り除かれた。継母の心は空っぽになってしまった。
継母が倒れそうになるのを父が支えた。
「リンリン、何をした!?」
「悪い心を取り除きました。残念ながら、何も残っていないようです」
「おい、しっかりしろ。リンリン、お前はなんと残酷なことを」
「父さま、人には悪意は必要ないのです。健やかな気持ちで健やかな人生を送る。それが人の幸せです」
「そんな押しつけは傲慢だ!」
「父さまに女神ラクタの加護を与えます。母さまと、弟たちと妹にもね」
「あ、あれ? 怒りの気持ちが消えていく」
父の心がキレイになっていく。
「父さま、城は父さまと母さまに残します。食べていくのに十分な資産も残しますので、子供たちといっしょに幸せに暮らしてください。僕はもうあなた方と関わることはないでしょう。お幸せに」
リンリンとロザンヌはエーデンリッヒ城から消えた。
突然現れたリンリンとロザンヌ姫を父と継母が驚いて見ていた。
「あ、父さま、母さま、お揃いでしたか」
「ロザンヌ様っ」
父がすぐに気づき、騎士の礼をする。継母が慌てて貴族の礼をした。
「父さま、母さま、紹介が遅れました。ロザンヌ姫は僕の24番目の妃となりました」
「お父様、お母様、旦那さまの妾となりました。ロザンヌです。よろしくお願いいたします」
「リンリン、お前、ロザンヌ様を妾などと!」
「父さま、ロザンヌ姫がそれでもいいと嫁いできたのです。まあ、そんな話をしに来たのではないです。僕の言葉だと信用できないようなので、ロザンヌ姫についてきてもらったのです。ダルムンド王を連れて来てもよかったのですが、彼は転移ができないので、面倒なのですよ。ロザンヌ姫の言うことであれば信用しますよね? 父さま」
「も、もちろんだとも」
「母さまも信用してくれますね」
「え、ええ」
「じゃ、ロザンヌ姫、よろしくお願いします」
「はい、旦那さま。エーデンリッヒ伯爵家は取り潰しとなりましたので、所領は没収となり、このロザンヌの私有地となりました。この城も私のものとなりました。お父様、よろしいでしょうか?」
「はい、王の命とあらば、我が領土を国に返還いたします」
「あ、あなた。そんな理不尽な」
「お前は黙っていなさい」
「あら、お母様はご納得いただけないのでしょうか」
エーデンリッヒ伯爵が慌てて間に入る。
「ご無礼をお許しください。突然のことで妻も動転しております。あとで私からしっかりと説明しておきます」
「勅命違反ということであれば、しかるべき対応をしないといけないのですが、私といたしましては、大事な旦那さまのお母様にはあまり無下なことはしたくないのですが」
「勅命に逆らう気などございません。おい、お前もわかっているだろう。謹んでお受けしなさい」
「は、はい、謹んでお受けします」
継母ががっくりとうなだれた。
リンリンは継母の心を観察した。相変わらず真っ黒だ。絶望感は出ているようだが、善意がどこにも見当たらない。ちょっと揺さぶってみるか。
「ロザンヌ姫、母さまは1年前、僕を崖から突き落としたんです。300メートルぐらい落ちて、危うく死にかけたのですよ」
「なっ、なんですって!?」
リンリンは笑いをこらえた。
(なんだこの棒読みは。ロザンヌ姫の大根役者っぷりは半端ないな)
しかし、継母の方は大きく動揺したようだ。
「い、いえっ、リンリンの誤解でございます。私は決してそのようなことは・・・」
「父さま、どうして僕のお母様を裏切って、このような悪だくみ満載の母さまと付き合ったりしたんです? この期に及んでも、腹の中は真っ黒けですよ、この人」
「こんな女でも優しいところはあるんだ」
おっ、父がかばった。でもダメだ。この女にはまったく響いていない。この女、本当にダメかも。セイラのために何とか改心させたいんだが。
「母さま、僕は実は神になったんですよ。あなたの知っているベルゼブブを倒してね。ロザンヌ姫は神の使徒にしました。それで、何とか母さまを改心させたいんですが、善意がひとかけらも残っていないので、改心させようがないんです。その根源がエーデンリッヒ伯爵家だと思って、取り潰したんですが、どうも効果はないようだ。あなたはんぜそんなに真っ黒なんですか?」
「その黒い感情というのが、私にはわからないわ。生まれたときと何ら変わっていないわよ。欲しいものを単純に欲するだけよ」
これが1万に1人の確率での俺のスキルが効かない人か。打つ手ないか。
「しかたないか。じゃあ、心全部きれいにしてみようか。1つも善意がなかったら、心がなくなってしまうけど、そこからまた何かうまれるかもしれない」
父が何か言っているが、継母に向かって、俺はインストの加護を発動した。
ごっそりとネガティブな心が取り除かれた。継母の心は空っぽになってしまった。
継母が倒れそうになるのを父が支えた。
「リンリン、何をした!?」
「悪い心を取り除きました。残念ながら、何も残っていないようです」
「おい、しっかりしろ。リンリン、お前はなんと残酷なことを」
「父さま、人には悪意は必要ないのです。健やかな気持ちで健やかな人生を送る。それが人の幸せです」
「そんな押しつけは傲慢だ!」
「父さまに女神ラクタの加護を与えます。母さまと、弟たちと妹にもね」
「あ、あれ? 怒りの気持ちが消えていく」
父の心がキレイになっていく。
「父さま、城は父さまと母さまに残します。食べていくのに十分な資産も残しますので、子供たちといっしょに幸せに暮らしてください。僕はもうあなた方と関わることはないでしょう。お幸せに」
リンリンとロザンヌはエーデンリッヒ城から消えた。
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