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第四章 温泉宿
王家への対策
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昼食は街の海沿いのおしゃれなレストランでみんなで取ることにしていた。
カトリーヌさんとミカゲさんが予約の手配と送迎の手配をしてくれていた。
フローラさんの宿からはフローラさんのみの参加となった。
王家への対策をランチしながらざっくばらんに話す予定だったのだが、その前に重大ニュースの発表が行われた。
「では、エリーゼ、みんなに説明してね」
フローラさんがエリーゼさんに説明するように促した。オスカルさんたちも外出していたため、廊下での騒ぎを知っているのは当事者以外はルミさんだけだ。
みんな見慣れない1人の美女がエリーゼさんの隣にいることで、うすうす何が起きたのは察しているようだ。
「はい、みなさん、リンリンサマの不注意でまた1人、毒牙にかかってしまった幸せな女性を紹介します」
(え? 俺が悪いの!?)
「初めまして、キョウコといいます。リンサマとは本日籍を入れていただく予定です」
すぐにエリーゼさんが補足を入れる。
「あの、キョウコは私の従者で、先ほど儀式は済ませました。夜伽は私の番に入りますので、皆さま、私ともどもよろしくお願いいたします」
みんなの張りつめた空気が一気に緩んだ。
なーんだそういうことなら何も問題ないわよ、という声があちこちで聞こえる。
「こうなった以上、歓迎するわよ、キョウコ」
フローラさんがみんなを代表して歓迎の意を表した。
そのあと、俺の方を見て、
「リンリン君、軽はずみな言動は控えてね。今回は丸く収まったけど、状況によっては処分しなければいけないときもあるからね」
と言った。
「は、はい。わかりました」
(やっぱり俺が悪いんだ・・・。処分って、女の人を殺しちゃうってことだよね。本当に気をつけないと)
「キョウコは事務担当にするので、リンズには入れないわ。会計を担当してもらいます。さて、キョウコの件はこれで終わりにして、本題に入りましょう。王家への対応をどうするか。料理が出て来るまで、ざっくばらんに意見を出し合いましょう」
フローラさんの言葉が終わるや否や、あちこちでにぎやかな議論が始まった。昼食が出そろうまで、ブレーンストーミング形式で、いろんな意見を出してもらうという進め方だ。
昼食が出そろった段階で、どういった意見が出されたのか、1人1人にヒアリングをして、エリーゼさんとキョウコさんが箇条書きにした。これを見ながら、昼食を食べ、食後に1つずつ方針を決めていくつもりだ。箇条書きされたのは以下の通り。
第二王子派につく
第五王子派につく
王様に直接つく
謁見には行く、誰が行くのか
リンズは王様の傘下にはいる
王様と敵対する
ロミエール家は放っておく
レイダース家は潰す
シルビアは助けてあげる
後宮の女性にリンリンを合わせてはいけない
王妃も合わせない方がいい
王女も合わせないほうがいい
女性がいるところにリンリンは出せないので謁見はそもそも無理
悪魔であることはバラしてはダメ
あらかじめ用意していた大きな紙にエリーゼさんとキョウコさんが発言内容を箇条書きして、壁に貼り付けてくれた。
みんなはフリップを見て、あれこれ考えながら、昼食を食べた。
俺はみんなの様子を見ていたのだが、これだけの美女が勢ぞろいして、黙々と食べるビデオとか発売したら売れるんじゃないの?
あるいは、ちょうど俺が真ん中に座っているので、ユカリさんとマリが加われば、「最後の晩餐」のキリストの12使徒ではなく、12美女になり、そっちの絵の方がいいよなあ、と思ったりした。あ、でも、あれはユダの裏切りを予告する絵だった。俺の妻たちが裏切ることは、まずないよなあ。
「さて、そろそろみんな食べ終わったかな? リンリン君、まずは君の意見を聞かせてくれるかな? リンリン君の案をたたき台にして、妻たちで仕上げていく形にしたいのよ」
フローラさんのご指名に対して、俺なりに考えていることを述べてみた。
「そうですね。まず、誰につくかですが、僕はシルビアにつく、なのかなと思ってます。シルビアは女神ラクタ様の加護を持っていますので、善良な行動しかできません。彼女のしたいことを手伝ってあげたいと思います。その結果、第二王子につくかもしれませんし、ひょっとすると敵対するかもしれませんが、それはシルビア次第です」
ここでいったん皆の反応を見てみた。特にこれといった反対意見はなさそうだ。続けよう。
「次に謁見ですが、これは行かなくていいですね。行くとなるとリーダである僕が行く必要がありますが、こんな幼児の姿ですし、間違って女の人と話をしちゃったら、えらいことになります。例えば、王妃に声をかけられたら、話さないわけにはいかないでしょう」
みんな青ざめた顔でこくこくと頷いている。次に行こう。
「ロミエール家とレイダース家については、我々がどうこう言えることではないと思っています。カトリーヌさんとオスカルさんのしたいことを我々が支援すればいいと思います」
皆もこの点については、それはそうだという感じのようだ。あと2点だな。
「リンズは誰の傘下にも入りません。これは今後も不変です」
当然のことだが、これもみんなは納得している。問題は次だな。
「僕は後宮に行きます。邪な女どもの悪の感情を女神インスト様の加護で浄化したいと思っています」
えー!?という感じでみんなが騒然となった。店の人たちが驚いている
俺は無視して最後の意見を述べる。
「あと、悪魔の正体ですが、積極的にバラす必要はないですが、自分の身を守るためにはバレても仕方ないです。バレちゃった場合には、みんなで全力で守ります」
一瞬それはそうだ、と場がいったん落ち着いたが、俺の後宮入りの件で再度みんなは激論を交わし始めた。
意見を言い終わって、みんなを見ていると、キョウコさんだけ、1人ポツンとジュースを飲んでいた。
俺がキョウコさんに手を振ったら、キョウコさんも嬉しそうに笑顔で手を振り返してくれた。
あれ? 俺とキョウコさんのちょっとした意思疎通のやりとりを妻たちが議論を止めて、じっと見ている。
「「「こんなのを後宮に送れないでしょうよ!!!」」」
全員の怒号がレストランに響き渡った。
カトリーヌさんとミカゲさんが予約の手配と送迎の手配をしてくれていた。
フローラさんの宿からはフローラさんのみの参加となった。
王家への対策をランチしながらざっくばらんに話す予定だったのだが、その前に重大ニュースの発表が行われた。
「では、エリーゼ、みんなに説明してね」
フローラさんがエリーゼさんに説明するように促した。オスカルさんたちも外出していたため、廊下での騒ぎを知っているのは当事者以外はルミさんだけだ。
みんな見慣れない1人の美女がエリーゼさんの隣にいることで、うすうす何が起きたのは察しているようだ。
「はい、みなさん、リンリンサマの不注意でまた1人、毒牙にかかってしまった幸せな女性を紹介します」
(え? 俺が悪いの!?)
「初めまして、キョウコといいます。リンサマとは本日籍を入れていただく予定です」
すぐにエリーゼさんが補足を入れる。
「あの、キョウコは私の従者で、先ほど儀式は済ませました。夜伽は私の番に入りますので、皆さま、私ともどもよろしくお願いいたします」
みんなの張りつめた空気が一気に緩んだ。
なーんだそういうことなら何も問題ないわよ、という声があちこちで聞こえる。
「こうなった以上、歓迎するわよ、キョウコ」
フローラさんがみんなを代表して歓迎の意を表した。
そのあと、俺の方を見て、
「リンリン君、軽はずみな言動は控えてね。今回は丸く収まったけど、状況によっては処分しなければいけないときもあるからね」
と言った。
「は、はい。わかりました」
(やっぱり俺が悪いんだ・・・。処分って、女の人を殺しちゃうってことだよね。本当に気をつけないと)
「キョウコは事務担当にするので、リンズには入れないわ。会計を担当してもらいます。さて、キョウコの件はこれで終わりにして、本題に入りましょう。王家への対応をどうするか。料理が出て来るまで、ざっくばらんに意見を出し合いましょう」
フローラさんの言葉が終わるや否や、あちこちでにぎやかな議論が始まった。昼食が出そろうまで、ブレーンストーミング形式で、いろんな意見を出してもらうという進め方だ。
昼食が出そろった段階で、どういった意見が出されたのか、1人1人にヒアリングをして、エリーゼさんとキョウコさんが箇条書きにした。これを見ながら、昼食を食べ、食後に1つずつ方針を決めていくつもりだ。箇条書きされたのは以下の通り。
第二王子派につく
第五王子派につく
王様に直接つく
謁見には行く、誰が行くのか
リンズは王様の傘下にはいる
王様と敵対する
ロミエール家は放っておく
レイダース家は潰す
シルビアは助けてあげる
後宮の女性にリンリンを合わせてはいけない
王妃も合わせない方がいい
王女も合わせないほうがいい
女性がいるところにリンリンは出せないので謁見はそもそも無理
悪魔であることはバラしてはダメ
あらかじめ用意していた大きな紙にエリーゼさんとキョウコさんが発言内容を箇条書きして、壁に貼り付けてくれた。
みんなはフリップを見て、あれこれ考えながら、昼食を食べた。
俺はみんなの様子を見ていたのだが、これだけの美女が勢ぞろいして、黙々と食べるビデオとか発売したら売れるんじゃないの?
あるいは、ちょうど俺が真ん中に座っているので、ユカリさんとマリが加われば、「最後の晩餐」のキリストの12使徒ではなく、12美女になり、そっちの絵の方がいいよなあ、と思ったりした。あ、でも、あれはユダの裏切りを予告する絵だった。俺の妻たちが裏切ることは、まずないよなあ。
「さて、そろそろみんな食べ終わったかな? リンリン君、まずは君の意見を聞かせてくれるかな? リンリン君の案をたたき台にして、妻たちで仕上げていく形にしたいのよ」
フローラさんのご指名に対して、俺なりに考えていることを述べてみた。
「そうですね。まず、誰につくかですが、僕はシルビアにつく、なのかなと思ってます。シルビアは女神ラクタ様の加護を持っていますので、善良な行動しかできません。彼女のしたいことを手伝ってあげたいと思います。その結果、第二王子につくかもしれませんし、ひょっとすると敵対するかもしれませんが、それはシルビア次第です」
ここでいったん皆の反応を見てみた。特にこれといった反対意見はなさそうだ。続けよう。
「次に謁見ですが、これは行かなくていいですね。行くとなるとリーダである僕が行く必要がありますが、こんな幼児の姿ですし、間違って女の人と話をしちゃったら、えらいことになります。例えば、王妃に声をかけられたら、話さないわけにはいかないでしょう」
みんな青ざめた顔でこくこくと頷いている。次に行こう。
「ロミエール家とレイダース家については、我々がどうこう言えることではないと思っています。カトリーヌさんとオスカルさんのしたいことを我々が支援すればいいと思います」
皆もこの点については、それはそうだという感じのようだ。あと2点だな。
「リンズは誰の傘下にも入りません。これは今後も不変です」
当然のことだが、これもみんなは納得している。問題は次だな。
「僕は後宮に行きます。邪な女どもの悪の感情を女神インスト様の加護で浄化したいと思っています」
えー!?という感じでみんなが騒然となった。店の人たちが驚いている
俺は無視して最後の意見を述べる。
「あと、悪魔の正体ですが、積極的にバラす必要はないですが、自分の身を守るためにはバレても仕方ないです。バレちゃった場合には、みんなで全力で守ります」
一瞬それはそうだ、と場がいったん落ち着いたが、俺の後宮入りの件で再度みんなは激論を交わし始めた。
意見を言い終わって、みんなを見ていると、キョウコさんだけ、1人ポツンとジュースを飲んでいた。
俺がキョウコさんに手を振ったら、キョウコさんも嬉しそうに笑顔で手を振り返してくれた。
あれ? 俺とキョウコさんのちょっとした意思疎通のやりとりを妻たちが議論を止めて、じっと見ている。
「「「こんなのを後宮に送れないでしょうよ!!!」」」
全員の怒号がレストランに響き渡った。
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