初体験が5歳という伝説の「女使い」冒険者の物語 〜 スキル「優しい心」は心の傷ついた女性を虜にしてしまう極悪のモテスキルだった

もぐすけ

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第四章 温泉宿

王家の企み

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「今回の討伐で我々リンズの名前は国内に知れ渡る。そして、最も注目を集めるのは、当然のことながら、リーダであるリンリンだ」

(まあ、そうでしょうね)

「38歳なのに幼児の風貌、美女10人と美少女1人の中に1人だけの男、注目されないわけがない」

(え? そこですか!?)

「そして、王家から注目されているのは、カトリーヌだ」

カトリーヌさんがごめんなさいって感じでうつむいている。俺はカトリーヌさんの席の近くに行って、カトリーヌさんは悪くないんだよって慰めてきた。カトリーヌさんは感激して泣いてしまった。

みんながうらやましそうにカトリーヌを見つめている。

(そういえば、全身から涙が出るぐらい感激するって、ミカゲさんが言ってたな)

「おほん。カトリーヌに注目が集まるわけはわかると思う。第二王子派からすると、シルビアさん経由でカトリーヌを取り込んで、王に手柄を見せたいはずだ。あと、第二王子はまだカトリーヌに未練を持っていて、そっちの方でのアプローチもあるかもしれない。第五王子派はシルビアラインを断固阻止するはず。でも、王室としては我々を取り込みたいので、第五王子派は別の方法で、取込をかけてくると思う。すなわち、私に狙いをつけてくると思う」

「なるほど、王子の動きはわかりましたが、王様はどうするのですか?」

俺は疑問点をぶつけてみた。

オスカルがエリーゼに目で説明を促した。エリーゼが答える。

「王様は正攻法で冒険者組合に申し入れをしてきています。恐らく報酬の支払条件に王への謁見を追加したと思われます」

「え? それって、王様に会わないとお金をくれないってことですか」

「はい、そうです。ただし、それは王家から組合への報酬の支払いについてです。私たちの依頼の中には条件はありませんでしたので、組合は私たちに約束の報酬を速やかに支払うはずです。ここで出し渋ってしまうと、今後、誰も冒険者組合からの依頼を受けなくなりますから」

「そうか。でも、組合としては会ってほしいのだろうなあ」

「まあ、そうですね。でも、条件にありませんから、きっぱりと断ってきました」

「あ、そうなんですね」

オスカルが説明する。

「組合との関係は契約通りのことをしていれば大丈夫だ。それよりも問題なのは、シルビアさんの立場だ」

(そっかあ。あの人、いい人になっちゃって、悪いことできないんだよなあ。後宮でやっていけんのかなあ)

カトリーヌさんがいつの間にか俺の横に来ていた。俺の腕をつかんで訴えてくる。

「リンリンさま、私、王室が落ち着くまで、この国に残って、首都の宮殿にいるシルビアの力になりたいのです」

「そうですよね。シルビアさんに加護を与えた責任もありますし、僕も残りますよ」

カトリーヌさんが喜んだあと、申し訳なさそうな表情に戻ってしまう。

「もともと5年後に出発する予定だった旅です。僕の都合だけでいうと、この国に5年いても大丈夫なんですよ」

みんなを見回すと、そうしようそうしようという顔をしている。

「えっと、みんなもカトリーヌさん助けますよね?」

みんなは聞かれるまでもないようだ。

カトリーヌさんは俺の胸に抱きついて、わんわん泣きだした。

「はいはい、もうわかりましたから、少し落ち着いてくださいね」

今日のリンリン番のエリーゼがカトリーヌさんを羽交い絞めにして、席に戻しに行った。

「それでは、朝食会はいったん散開し、今後の予定はお昼のランチを食べながら、皆で協議しましょう」

フローラさんが締めくくり、朝会は散会となった。

俺はエリーゼさんといっしょに自分の部屋に帰った。

部屋に入ると、エリーゼさんがそわそわしている。

そうだよなあ。部屋に2人きりだと、どうにもあっちのことを考えちゃうよなあ。

「エリーゼさん」

声をかけたら、エリーゼさんがびくっとしている。

「ちょっと大浴場に行きません?」

エリーゼさんはほっとしたような残念なような顔をした。

「あ、いいですね。朝ごはんの後ですから、きっとすいていると思いますよ。でも、ほかの女の人に話しかけたりはしないでくださいね」

「もちろんですよ。風呂の中では僕を抱っこしていてください」

俺とエリーゼさんは2人で大浴場に向かった。
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