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第三章 旅

新たな加護

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翌朝、リンリンをむしゃぶりつくしたインストが、お礼をしたいと言い出した。

「少年、とっても気持ちよかったわあ。よし、お礼に加護を与えちゃおう」

<「女神インストの加護」を取得しました>

(あ、加護をいただいた)

「あれ? なんだか猛烈な倦怠感が・・・」

そう言い残して、インストさんはぱったりと気絶してしまった。

(ど、どうしよう。きっとLv9999の加護を与えてしまった反動だ)

俺はスキルステータスを見てみた。やはり、Lv9999で取得している

種族 人 Lv5
スキル 優しさ Lv9999、感謝の気持ち Lv9999、女神ラクタの加護 Lv9999、怒りの鉄拳 Lv9999、悦ばせる心 Lv9999、女神インストの加護 Lv9999

(もうすぐ、ラクタさんが来る時間だ。ラクタさん、ラクタさんっ!)

「おっ、少年、あなたから呼ぶなんてめずらしいって、あっ、姉さんがまだいる!」

(ラクタさん、お姉さんの様子がおかしいんですよ。加護をくれた途端に意識がなくなってしまって)

「え? 姉さんがあなたに加護を与えたの? あっ、それ、まずい。加護がそろって、女神2人も揃うとき・・・」

<「姉妹神インストラクタの加護」を取得しました>

(え? また加護が増えた?)

「リンリンっ! 姉さんの額にあなたの額を合わせて・・・。私も気が遠くなるぅ・・・」

(え? こうでしょうか)

「・・・ょぃ」

(あっ、ラクタさんの存在感が消えた。あれっ? インストさんの顔が別人になっている! 2人ともうまく天界に帰れたのかな?)

・・・

(この別人の女性もすごい美人だな)

時間になっても出てこないインストさんにしびれを切らしたフローラさんがテントに入って来た。

「インストさん、もうそろそろタイムオーバーですよ」

そう声をかけたフローラさんが、インストさんの顔を見て言葉を失っている。

(まずい! 状況の説明をしなければ)

「あ、フローラさん、実は・・・」

うおっ、どんどん気温が下がっていく。

「リンリン君、この人、だあれ?」

「え? インストさんです」

「髪の色も違うし、顔も違うわよ。誰なのよ、この人は!」

「ほ、本当にインストさんです。ほ、ほら、ここにホクロがっ」

「私はインストさんのホクロがうなじにあるなんて知らないの。人相しか知らないのよ。この人は誰っ」

「えーと、どうしたらいいのかな。えっとえっと、そうだっ!
 女使いの名において、我が妻たちに命ずる。撤退! 自身のテントに帰還せよ!」

「あっ、こら、リンリン君、覚えてなさいっ」

フローラさんはものすごい勢いでテントを飛び出して、自分のテントに戻っていった。

(ふー、参ったな。えっとこの人、どうしようか)

しばらく、善後策を練っていると、ユカリさんが血相を変えて、俺のテントに入り込んできた。

「ちょっと、リンリンさん、フローラ姉さまがご自分のテントのなかで、のの字を書いてるんだけど、何したのよっ」

「あ、ユカリさん! そうだ、ユカリさん、フローラさんに説明してくださいよ。フローラさんが頭に血が上っちゃって、僕の言うことを信じてくれないんですよ」

俺はユカリさんに今朝インストさんに起きたことを説明した。

「で、インストさんは女神様で、人間に憑依していて、天界に帰ったから、別人になった、とそういうこと?」

「はい、そうです」

「・・・、嘘なら、もっとうまい嘘をつくはずよね。リンリンさん、何度も聞いたけど、あなた何者? まあ、いいわよ。お姉さまに説明してあげる。一緒に来て。まずはお姉さまを正気に戻してちょうだい」

俺とユカリさんでフローラさんのテントに入り、2人で必死に説明をして、何とかフローラさんに理解してもらった。

(いやあ、フローラさん、寛大なのかと思ったら、全然違うのね)

とりあえず、インストさんが憑依していた女の人は、フローラさんからシックスダイスにお返ししてもらうことにした。

シックスダイスのテントは、リンズの拠点から30メートルほど離れて設置してもらっていた。

「えーっと、この方はどなた?」

突然、見ず知らずの気絶した女性をフローラから渡されて、オスカルは困惑していた。

「オスカル、あなたリーダーのくせに、見てわからないの? インストさんよ。ほら、ここにホクロがあるでしょ」

「ホクロの位置まで知らないわよっ」

「いい? 確かにお返ししたからね」

フローラは問答無用で元インストをオスカルに押し付けて立ち去った。
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