31 / 143
第二章 小屋
戦士 採用
しおりを挟む
ユカリさんとカトリーヌさんに紅茶を出して、自分も一口飲んでいたら、今まで下を向いていたカトリーヌさんが、突然顔を上げた。
「リンリンさま、私をパーティに入れてくださいまし」
美人が懇願している。小さな肩が震えている。美しい目から大粒の涙が流れ落ちている。
ふいに前世の親父が瞼に浮かび、俺に語りかけてきた。
(タケシ、美人はみんなで大切にしないとなっ)
リンリンはうんうんと2回頷き、こう答えた。
「はい、カトリーヌさん、よろしくお願いします」
悲壮な表情だったカトリーヌさんが破顔する。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。私のすべてをあなたに捧げます」
「い、いや、そこまでしていただく必要はないですが・・・」
(あ、だめだ、号泣しちゃってる)
今のカトリーヌの涙は、先ほどの恐れや不安の涙とは違う。
今までの不幸が全部消えてなくなったような、やっと安心して暮らせる場所をみつけたような、自分のすべてを捧げても後悔しない人をみつけたような、そんな嬉しさにあふれる幸せな涙だった。
ユカリがカトリーヌを支えながら、リンリンに念押しする。
「フローラ姉さまの説得は任せたわ、リンリンさん」
「はい。問題ないですよ」
「じゃあ、今日は帰るわね」
「はい、また来週お会いしましょう」
まだ泣き止まないカトリーヌさんをユカリさんが優しくエスコートしながら、2人は帰って行った。
(あ、なんでフローラさんがいないときに訪ねてきたのか、何も説明がなかったな)
2人が帰った後、リンリンは自分のスキルについて考えていた。
ユカリさんには効き目が薄いというか、効き目は確かにあるけど、俺を好きになるほどではない。恐らく、ユカリさんはフローラさんが好きだからだ。
カトリーヌさんにも効き目がすごくあったと思うけど、彼女は一生懸命抵抗している感じだった。でも、最後は恐らく俺のことが好きになったんだと思う。たった20分でだ。
この前のチンピラには効果がなかった。あの後、考えたんだけど、仮に俺がほかの男に親切にされたとして、友人だったらありがたいと思うけど、見ず知らずの人だったり、敵対している人だったら、裏があるんじゃないかと疑うと思う。なので、効果があるどころか、敵意を助長してしまうような気がする。これは重要だと思う。敵に優しくすることは、やめておいた方がいい。
受付嬢はドアを開けてあげただけで、泣き崩れていた。原因はわからないが、彼女もあまり優しくされた経験がないのだと思う。あんなにすごい美人なのに。
ルミさんは恐らくカトリーヌさんよりは掛かりが浅いような気がする。でも、今後、パーティで常にいっしょにいれば、いつかは俺のことを好きになるはずだ。
「わははははっ、最高じゃないかっ!!!」
リンリンをゲスな奴だと責めてはいけない。絶大な力を手に入れたものは、程度の差はあれ、最初は自分が偉くなった気がして、こんな感じになっちゃうものなのだ。そのままゲス街道を突き進むか、自分を恥じて、思慮深くつつましやかになるかは、これからのリンリン次第だ。
「何が最高なの? リンリン君」
リンリンの後ろには、何かを察したフローラが、氷の微笑みをたたえて立っていた。
「リンリンさま、私をパーティに入れてくださいまし」
美人が懇願している。小さな肩が震えている。美しい目から大粒の涙が流れ落ちている。
ふいに前世の親父が瞼に浮かび、俺に語りかけてきた。
(タケシ、美人はみんなで大切にしないとなっ)
リンリンはうんうんと2回頷き、こう答えた。
「はい、カトリーヌさん、よろしくお願いします」
悲壮な表情だったカトリーヌさんが破顔する。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。私のすべてをあなたに捧げます」
「い、いや、そこまでしていただく必要はないですが・・・」
(あ、だめだ、号泣しちゃってる)
今のカトリーヌの涙は、先ほどの恐れや不安の涙とは違う。
今までの不幸が全部消えてなくなったような、やっと安心して暮らせる場所をみつけたような、自分のすべてを捧げても後悔しない人をみつけたような、そんな嬉しさにあふれる幸せな涙だった。
ユカリがカトリーヌを支えながら、リンリンに念押しする。
「フローラ姉さまの説得は任せたわ、リンリンさん」
「はい。問題ないですよ」
「じゃあ、今日は帰るわね」
「はい、また来週お会いしましょう」
まだ泣き止まないカトリーヌさんをユカリさんが優しくエスコートしながら、2人は帰って行った。
(あ、なんでフローラさんがいないときに訪ねてきたのか、何も説明がなかったな)
2人が帰った後、リンリンは自分のスキルについて考えていた。
ユカリさんには効き目が薄いというか、効き目は確かにあるけど、俺を好きになるほどではない。恐らく、ユカリさんはフローラさんが好きだからだ。
カトリーヌさんにも効き目がすごくあったと思うけど、彼女は一生懸命抵抗している感じだった。でも、最後は恐らく俺のことが好きになったんだと思う。たった20分でだ。
この前のチンピラには効果がなかった。あの後、考えたんだけど、仮に俺がほかの男に親切にされたとして、友人だったらありがたいと思うけど、見ず知らずの人だったり、敵対している人だったら、裏があるんじゃないかと疑うと思う。なので、効果があるどころか、敵意を助長してしまうような気がする。これは重要だと思う。敵に優しくすることは、やめておいた方がいい。
受付嬢はドアを開けてあげただけで、泣き崩れていた。原因はわからないが、彼女もあまり優しくされた経験がないのだと思う。あんなにすごい美人なのに。
ルミさんは恐らくカトリーヌさんよりは掛かりが浅いような気がする。でも、今後、パーティで常にいっしょにいれば、いつかは俺のことを好きになるはずだ。
「わははははっ、最高じゃないかっ!!!」
リンリンをゲスな奴だと責めてはいけない。絶大な力を手に入れたものは、程度の差はあれ、最初は自分が偉くなった気がして、こんな感じになっちゃうものなのだ。そのままゲス街道を突き進むか、自分を恥じて、思慮深くつつましやかになるかは、これからのリンリン次第だ。
「何が最高なの? リンリン君」
リンリンの後ろには、何かを察したフローラが、氷の微笑みをたたえて立っていた。
0
お気に入りに追加
644
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。


少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる