初体験が5歳という伝説の「女使い」冒険者の物語 〜 スキル「優しい心」は心の傷ついた女性を虜にしてしまう極悪のモテスキルだった

もぐすけ

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第二章 小屋

戦士 採用

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ユカリさんとカトリーヌさんに紅茶を出して、自分も一口飲んでいたら、今まで下を向いていたカトリーヌさんが、突然顔を上げた。

「リンリンさま、私をパーティに入れてくださいまし」

美人が懇願している。小さな肩が震えている。美しい目から大粒の涙が流れ落ちている。

ふいに前世の親父が瞼に浮かび、俺に語りかけてきた。

(タケシ、美人はみんなで大切にしないとなっ)

リンリンはうんうんと2回頷き、こう答えた。

「はい、カトリーヌさん、よろしくお願いします」

悲壮な表情だったカトリーヌさんが破顔する。

「ありがとうございます。本当にありがとうございます。私のすべてをあなたに捧げます」

「い、いや、そこまでしていただく必要はないですが・・・」

(あ、だめだ、号泣しちゃってる)

今のカトリーヌの涙は、先ほどの恐れや不安の涙とは違う。

今までの不幸が全部消えてなくなったような、やっと安心して暮らせる場所をみつけたような、自分のすべてを捧げても後悔しない人をみつけたような、そんな嬉しさにあふれる幸せな涙だった。

ユカリがカトリーヌを支えながら、リンリンに念押しする。

「フローラ姉さまの説得は任せたわ、リンリンさん」

「はい。問題ないですよ」

「じゃあ、今日は帰るわね」

「はい、また来週お会いしましょう」

まだ泣き止まないカトリーヌさんをユカリさんが優しくエスコートしながら、2人は帰って行った。

(あ、なんでフローラさんがいないときに訪ねてきたのか、何も説明がなかったな)

2人が帰った後、リンリンは自分のスキルについて考えていた。

ユカリさんには効き目が薄いというか、効き目は確かにあるけど、俺を好きになるほどではない。恐らく、ユカリさんはフローラさんが好きだからだ。

カトリーヌさんにも効き目がすごくあったと思うけど、彼女は一生懸命抵抗している感じだった。でも、最後は恐らく俺のことが好きになったんだと思う。たった20分でだ。

この前のチンピラには効果がなかった。あの後、考えたんだけど、仮に俺がほかの男に親切にされたとして、友人だったらありがたいと思うけど、見ず知らずの人だったり、敵対している人だったら、裏があるんじゃないかと疑うと思う。なので、効果があるどころか、敵意を助長してしまうような気がする。これは重要だと思う。敵に優しくすることは、やめておいた方がいい。

受付嬢はドアを開けてあげただけで、泣き崩れていた。原因はわからないが、彼女もあまり優しくされた経験がないのだと思う。あんなにすごい美人なのに。

ルミさんは恐らくカトリーヌさんよりは掛かりが浅いような気がする。でも、今後、パーティで常にいっしょにいれば、いつかは俺のことを好きになるはずだ。

「わははははっ、最高じゃないかっ!!!」

リンリンをゲスな奴だと責めてはいけない。絶大な力を手に入れたものは、程度の差はあれ、最初は自分が偉くなった気がして、こんな感じになっちゃうものなのだ。そのままゲス街道を突き進むか、自分を恥じて、思慮深くつつましやかになるかは、これからのリンリン次第だ。

「何が最高なの? リンリン君」

リンリンの後ろには、何かを察したフローラが、氷の微笑みをたたえて立っていた。
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