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第一章 城
九死に一生
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少し落ち着いたので、ラクタさんと話をした。
(いきなり話してくれなくなっちゃって、どんなに心細かったかわかります?)
あれ?いない。
「もう5分経ったので、また明日ね~」
という声が遠くで聞こえた。
・・・相変わらずマイペースだなあ。
そうだ、こうしてはいられない。リンリンは状況を確認してみる。
落ちた崖の上を見てみると、まずい、継母と目が合ったような気がした。
ただ、継母が手下を使って俺を殺そうにも、人たらしの俺は手下を味方にしてしまう可能性がある。
継母は確実に俺を仕留めるには自ら手を下す必要があるはずだ。
そして、ここまで来るには相当時間がかかる。ひとまず安心かな、と思った俺は甘かった。
オオカミのような獣の群れが、セシリおばさんの血の匂いを嗅ぎつけたのか、周りを取り囲んでいたのだ。
オオカミには当然のことながら、人たらしのスキルは通用しない。
一か八かで反転し、右手に見える川のある方向に駆ける。
やった、川に着いた、と思って振り返ると、オオカミは追ってきていなかった。
そうか、セシリおばさんの遺体があったからだ。
またセシリおばさんに助けられた。
ただ、このままではまずい。オオカミからできるだけ離れないといけない。
そこで、川を渡ってオオカミとは反対の向こう岸に渡ろうとしたところ、思いのほか深いところがあり、ずぼっとはまってしまった。
しかも、川の流れは予想以上に早く、5歳児の腕力では抗いきれない。どんどん下流の方に勢いよく流されていってしまう。
何度も何度も水を飲み、岩にぶつかる。意識がどんどん遠のいていく。
いつしか気を失ってしまった俺は、突然すごい勢いで浅瀬に打ち上げられた。
死ぬかと思った。体中傷だらけだが、運よく向こう岸にたどり着いた。
どれだけ流されたのかわからない。なんだか先ほどとは風景が変わってしまっている。
リンリンはしばらく川沿いに下流に向かってあてもなくとぼとぼと歩いた。
すると遠くに1軒の小屋がある。
よし、まずはあそこまで行こう。
領主の息子だ。きっと助けてくれるだろう。
あれ? おかしいな。俺はふと気づいた。こんな目に合っているのに、なんだか心が穏やかなのだ。
さっき感じていた継母に対する憎しみとか殺意とかも全く消えてしまっている。
そういえば、ラクタさんの加護がスキルを拒否しているようだった。スキルステータスを確認してみる。
種族 ヒト Lv5
スキル 優しさ Lv9999、感謝の気持ち Lv9999、女神ラクタの加護 Lv9999、怒りの鉄拳 Lv9999
スキルが1つだけ増えている。
たしか、もっとたくさんスキルのアナウンスが流れていたはずだ。
まあ、いいか、明日、ラクタさんに聞いてみよう。でも、明日も話しかけてくれるかな。
など考えているうちに、小屋の前に着いた。
近くまで来てみると、かなり造りのしっかりとした2階建てのログハウスだった。
中に人の気配がする。
ノックをするとドアが開いた。
8才ぐらいの金髪碧眼の可愛い女の子の姿が目に飛び込んできた。
(いきなり話してくれなくなっちゃって、どんなに心細かったかわかります?)
あれ?いない。
「もう5分経ったので、また明日ね~」
という声が遠くで聞こえた。
・・・相変わらずマイペースだなあ。
そうだ、こうしてはいられない。リンリンは状況を確認してみる。
落ちた崖の上を見てみると、まずい、継母と目が合ったような気がした。
ただ、継母が手下を使って俺を殺そうにも、人たらしの俺は手下を味方にしてしまう可能性がある。
継母は確実に俺を仕留めるには自ら手を下す必要があるはずだ。
そして、ここまで来るには相当時間がかかる。ひとまず安心かな、と思った俺は甘かった。
オオカミのような獣の群れが、セシリおばさんの血の匂いを嗅ぎつけたのか、周りを取り囲んでいたのだ。
オオカミには当然のことながら、人たらしのスキルは通用しない。
一か八かで反転し、右手に見える川のある方向に駆ける。
やった、川に着いた、と思って振り返ると、オオカミは追ってきていなかった。
そうか、セシリおばさんの遺体があったからだ。
またセシリおばさんに助けられた。
ただ、このままではまずい。オオカミからできるだけ離れないといけない。
そこで、川を渡ってオオカミとは反対の向こう岸に渡ろうとしたところ、思いのほか深いところがあり、ずぼっとはまってしまった。
しかも、川の流れは予想以上に早く、5歳児の腕力では抗いきれない。どんどん下流の方に勢いよく流されていってしまう。
何度も何度も水を飲み、岩にぶつかる。意識がどんどん遠のいていく。
いつしか気を失ってしまった俺は、突然すごい勢いで浅瀬に打ち上げられた。
死ぬかと思った。体中傷だらけだが、運よく向こう岸にたどり着いた。
どれだけ流されたのかわからない。なんだか先ほどとは風景が変わってしまっている。
リンリンはしばらく川沿いに下流に向かってあてもなくとぼとぼと歩いた。
すると遠くに1軒の小屋がある。
よし、まずはあそこまで行こう。
領主の息子だ。きっと助けてくれるだろう。
あれ? おかしいな。俺はふと気づいた。こんな目に合っているのに、なんだか心が穏やかなのだ。
さっき感じていた継母に対する憎しみとか殺意とかも全く消えてしまっている。
そういえば、ラクタさんの加護がスキルを拒否しているようだった。スキルステータスを確認してみる。
種族 ヒト Lv5
スキル 優しさ Lv9999、感謝の気持ち Lv9999、女神ラクタの加護 Lv9999、怒りの鉄拳 Lv9999
スキルが1つだけ増えている。
たしか、もっとたくさんスキルのアナウンスが流れていたはずだ。
まあ、いいか、明日、ラクタさんに聞いてみよう。でも、明日も話しかけてくれるかな。
など考えているうちに、小屋の前に着いた。
近くまで来てみると、かなり造りのしっかりとした2階建てのログハウスだった。
中に人の気配がする。
ノックをするとドアが開いた。
8才ぐらいの金髪碧眼の可愛い女の子の姿が目に飛び込んできた。
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