初体験が5歳という伝説の「女使い」冒険者の物語 〜 スキル「優しい心」は心の傷ついた女性を虜にしてしまう極悪のモテスキルだった

第一章 城

なんと伯爵家の嫡男だった

優しい心レベルMaxへの過信は禁物だ。

なんたって、前世では

「あなたって、優しすぎるのよ」

って言われて振られたことが何度でもある。

「優しいだけじゃあねえ」

とか言われて振られたこともある。

結婚した後は

「優しいそうなご主人ですね」

って、なにも褒めるところがないときに使われる言葉た。

優しさが武器にならないということではない。

優しさはバフ効果でしかないんだ。

前世で培った俺の経験が教えてくれる。世の中は「金」と「力」だ。

「金」がなけりゃあ、スタート地点にもつけない。

とにかく「力」をつけろ。人よりも早くスタートを切れ。慢心するな、己を常に磨くのだ。

そう、いい女をゲットするために、俺は手を抜かないぜ。

「あのさあ、格好いいこと言ってるつもり？　目的が不純すぎて、自分で悲しくない？」

（げっ、ラクタさん。でも、世の中の男のほとんどがそのためだけに頑張っていると思います）

「まあ、あなたの人生だから、どうでいいけど。で、何か困っていることない？」

（あのう、乳母の話なんですが・・・）

「また、それえ？　チェンジなんてできないよ。どこの風俗よ」

（いや、乳母はもうこのままでいいのですが、母さんとのスキンシップを・・・）

「このエロガキが。あなたの母さんは死んじゃったのよ」

（え？　あの金髪のキレイな人ではないのですか？）

「あれは継母よ。あなたの父親はろくでなしよ。あなたのお母さんが妊娠中にあの女性と浮気してたのよ。あなたのお母さんは難産で、あなたを産んで亡くなってしまったの。キレイな優しいお母さんだったわよ」

（そうなんですか。で、もう継母が家に入ってきてるんですか？）

「そうよ。喪があけないうちにね。来る方も来る方だけど、迎える方も迎える方よ。でね、あなた、殺されないように注意しなさいよ」

（注意って、俺まだ赤ん坊ですよ。あっという間にやられちゃいますよ）

「今はまだ大丈夫よ。あの女の目的はあなたの家の名誉と財産よ。子供ができないうちは、あなたがいなくなるとお家断絶だから、あなたを生かしておくわよ。せいぜい懐柔されないように注意することね。女が子供を何人か産んだら、あなたはお払い箱よ」

（俺ん家って財産狙われるほどなんですか？）

「あなた、伯爵家の長男よ」

（まじっすか。裕福だとは感じてましたが。じゃあ、俺の目標の「金」と「力」、もう持っているじゃないですか！）

「いやいやいや、そんなんじゃ人生面白くないじゃない。あの女に乗っ取られる筋書きなのよ」

（え？　今のまま行った方が人生面白いですよ。乗っ取られる筋書きって、いったい誰の筋書きなんですか！？）

「そんなの秘密に決まってるじゃない。人の分際で未来のことを知ろうなんて、甘ったれるんじゃないわよ」

（いや、俺は何も言ってないですよ。ラクタさんが勝手に話しているだけですよ）

「さて、5分すぎたわ。また、明日ね～」

（ちょっと、ラクタさん・・）

あのひと、会ったときからそうだけど、マイペースすぎやしないか？