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第五章 告白
結婚式と十四年後
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戴冠式は豪華な衣装に身を包んだルイーゼが、教皇から最後に王冠を受け取り、自ら装着することで完了した。
その後、ルイーゼはウェディングドレスに着替え、三千人の参加者が見守る中、正装で身を固めた緊張気味のリンクの隣に進み、教皇の前で二人で交互に宣誓し、指輪の交換を行った。
そして、ルイーゼはリンクと誓いの口づけを交わした。
結婚式は無事終了し、ルイーゼは初夜を迎えた。初めてはすでに先日フライングしてしまっている。婚前交渉が死罪という法律も撤廃しようと思うが、あの日は二人で夫婦になると誓ったのだから、ギリギリセーフということにしている。
寝室にリンクが入って来た。リンクはルイーゼに優しい。寝所でも最初から最後までソフトに扱ってくれる。自分勝手な動きがなく、常にルイーゼを第一に考えてくれた。
(私、幸せすぎて、とろけそうですわ)
***
そして、十四年の時が経過した。
今日はルイーゼの命日だった日だ。
朝からリンクは緊張していた。クラウスは死を回避して、すでに子供が二十人もいて、殺しても死にそうにないが、ルイーゼが死を回避しているかどうか、今日が過ぎないと安心できない。
リンクとルイーゼの間にはまだ子供がいない。避妊しているわけではないので、リンクに問題があるのではないかとリンクは心配していた。別の世界のルイーゼはアンリを産んでいるから母体に問題はないからだ。
今日という日が無事に終わって欲しい。リンクはそう願うのだった。
***
アンリは組織の魔法使いのところにいた。整形魔法を解除するためだ。
アンリは三十歳になったが、美貌はいささかも衰えていない。マッチョ二人は依然健在で、相変わらずアンリは二人と仲良くお付き合いしている。
マッチョ二人はアンリの素顔を知らない。今日、整形魔法を解くことで、二人とも失うかもしれないが、アンリは母親に激似している本来の自分の容姿が好きだった。
「魔法を解くわよ。いいわね?」
「はい、お願いします」
魔法使いは魔法を解いた。髪と目の色も元に戻した。そして、黙って鏡を置いた。
「ああ、本当の私だわ。お帰りなさい。アンリ・アードレー」
アンリの美貌はさらに磨きがかかり、母のルイーゼとはわずか二歳の差で、双子かと見紛うほど酷似していた。
アンリは普段通り、アードレー家に出勤した。使用人たちが狼狽えているのがおかしい。それはそうだ。ルイーゼがアンリのコスプレをして歩いているように見えたからだ。
アンリは執務室のドアの前まで来た。緊張する。ルイーゼが自分を受け入れてくれるかどうか、一抹の不安があった。
「姉さま、おはようございます」
「あら? 髪の色と目の色を変えたの? 化粧の仕方も変わって、随分と見た目が変わったわね、アンリ。ひょっとして結婚相手を決めたのかしら?」
「姉さま、結婚もですが、その前にお話が」
「なあに?」
(姉さまは私の容姿を見て、自分に似ていると思わないのかしら。毎回、姉さまには拍子抜けさせられるわ)
「今の私の容姿が本来の私の容姿で、今までは魔法で姿を少し変えてました」
「ええ、知ってたわよ」
「え? リンクがすでに話したのでしょうか」
「いいえ、最初から気づいていたわよ。元の髪と目の色は分からなかったけれど、顔が私に似ていることには気づいていたわよ。ただ、ここまで似ているとは思わなかったけど。あなた、お母様の隠し子でしょう!」
(なるほど、そう来たか。ただ、完全に間違っているのに、言ってやったみたいなドヤ顔を決めるのはやめてほしい)
「いいえ、姉さま、私はあなたの娘です」
ルイーゼの目が点になった。そして、そのまま椅子の上で気を失ってしまった。
アンリは慌ててルイーゼのところに駆け寄った。よかった、死んではいない。
「姉さま、大丈夫? 医者を、誰か医者を呼んできてっ」
その後、ルイーゼはウェディングドレスに着替え、三千人の参加者が見守る中、正装で身を固めた緊張気味のリンクの隣に進み、教皇の前で二人で交互に宣誓し、指輪の交換を行った。
そして、ルイーゼはリンクと誓いの口づけを交わした。
結婚式は無事終了し、ルイーゼは初夜を迎えた。初めてはすでに先日フライングしてしまっている。婚前交渉が死罪という法律も撤廃しようと思うが、あの日は二人で夫婦になると誓ったのだから、ギリギリセーフということにしている。
寝室にリンクが入って来た。リンクはルイーゼに優しい。寝所でも最初から最後までソフトに扱ってくれる。自分勝手な動きがなく、常にルイーゼを第一に考えてくれた。
(私、幸せすぎて、とろけそうですわ)
***
そして、十四年の時が経過した。
今日はルイーゼの命日だった日だ。
朝からリンクは緊張していた。クラウスは死を回避して、すでに子供が二十人もいて、殺しても死にそうにないが、ルイーゼが死を回避しているかどうか、今日が過ぎないと安心できない。
リンクとルイーゼの間にはまだ子供がいない。避妊しているわけではないので、リンクに問題があるのではないかとリンクは心配していた。別の世界のルイーゼはアンリを産んでいるから母体に問題はないからだ。
今日という日が無事に終わって欲しい。リンクはそう願うのだった。
***
アンリは組織の魔法使いのところにいた。整形魔法を解除するためだ。
アンリは三十歳になったが、美貌はいささかも衰えていない。マッチョ二人は依然健在で、相変わらずアンリは二人と仲良くお付き合いしている。
マッチョ二人はアンリの素顔を知らない。今日、整形魔法を解くことで、二人とも失うかもしれないが、アンリは母親に激似している本来の自分の容姿が好きだった。
「魔法を解くわよ。いいわね?」
「はい、お願いします」
魔法使いは魔法を解いた。髪と目の色も元に戻した。そして、黙って鏡を置いた。
「ああ、本当の私だわ。お帰りなさい。アンリ・アードレー」
アンリの美貌はさらに磨きがかかり、母のルイーゼとはわずか二歳の差で、双子かと見紛うほど酷似していた。
アンリは普段通り、アードレー家に出勤した。使用人たちが狼狽えているのがおかしい。それはそうだ。ルイーゼがアンリのコスプレをして歩いているように見えたからだ。
アンリは執務室のドアの前まで来た。緊張する。ルイーゼが自分を受け入れてくれるかどうか、一抹の不安があった。
「姉さま、おはようございます」
「あら? 髪の色と目の色を変えたの? 化粧の仕方も変わって、随分と見た目が変わったわね、アンリ。ひょっとして結婚相手を決めたのかしら?」
「姉さま、結婚もですが、その前にお話が」
「なあに?」
(姉さまは私の容姿を見て、自分に似ていると思わないのかしら。毎回、姉さまには拍子抜けさせられるわ)
「今の私の容姿が本来の私の容姿で、今までは魔法で姿を少し変えてました」
「ええ、知ってたわよ」
「え? リンクがすでに話したのでしょうか」
「いいえ、最初から気づいていたわよ。元の髪と目の色は分からなかったけれど、顔が私に似ていることには気づいていたわよ。ただ、ここまで似ているとは思わなかったけど。あなた、お母様の隠し子でしょう!」
(なるほど、そう来たか。ただ、完全に間違っているのに、言ってやったみたいなドヤ顔を決めるのはやめてほしい)
「いいえ、姉さま、私はあなたの娘です」
ルイーゼの目が点になった。そして、そのまま椅子の上で気を失ってしまった。
アンリは慌ててルイーゼのところに駆け寄った。よかった、死んではいない。
「姉さま、大丈夫? 医者を、誰か医者を呼んできてっ」
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