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第五章 告白
結婚式前夜
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ルイーゼとリンクの結婚式の前にルイーゼの戴冠式が先に行われることとなった。
現王朝から王位の継承を行ったのち、すぐに結婚式に移る予定だ。ルイーゼの母は先王の妹であるため、ルイーゼは皇室の血を継いでおり、血統的な問題はない。
リンクは婚礼の儀式の準備に忙殺されているため、戴冠式はアードレー家に身を寄せていた宰相のマルクス、副宰相のリットンとクラウスが中心となって、準備を進めた。
史上初の女王の誕生ということで、先例のないことが多く、多くは王妃の戴冠式の儀礼を流用した。その際、アルバートの正妃が協力を申し出た。アルバートの執拗な虐めから解放してくれたクラウスの役に少しでも立ちたいとのことだった。
ちなみに、ルイーゼの刺繍事件に関わった側室二名は既に流刑になっている。アルバートの妾たちは、クラウスの配下の女性部隊に配属された者や今回解放されて静養中の者などがいるが、クラウスは彼女たちから絶大な人気を誇っていた。
「もうパパったら、姉さまへの愛はなくなってしまったのね。いつもいつも美しい女性数人に囲まれて、デレデレしちゃって。節操ないわね」
クラウスのルイーゼへの忠誠心は揺るぎなかったが、彼も男だった。彼女たちのあの手この手の攻めに何度も陥落してしまい、不本意にもハーレムを作ってしまったのだ。もちろんルイーゼからは軽蔑されてしまい、「ハーレムさん」と呼ばれるようになってしまう。
「ルイーゼ様、私は彼女たちを捨ててはおけないのです。何卒ご高配を」
「はいはい、あなたの人生なんだから、好きにするといいのよ、ハーレムさん」
「ルイーゼ様……」
クラウスはルイーゼに軽蔑されながらも、アルバートの妾全員の面倒をみるという漢気を見せたのであった。
一方、アンリはというと、絶賛社内恋愛中だった。農業演習で知り合った組織のマッチョな同僚二人からほぼ同時に告白され、今日はこっち、明日はあっちと二人を振り回して、小悪魔ぶりを遺憾なく発揮していた。
「ねえ、アンリ、マッチョさんたち両方とお付き合いしているようだけど、どちらかに決めないの?」
「もう決められないんで、どちらかが諦めるまで待ってるんですよ」
「マッチョさんたちもとんだ娘を好きになってしまって大変ね……」
***
そして、結婚式の前夜となった。
戴冠式、結婚式の前に、アードレー家の当主の継承が本邸の大ホールで行われた。
ロバート、マリアンヌ、ルイーゼ、リンクが壇上に立ち、ホールにはアードレー家本邸の使用人全員と親戚筋および契約貴族が集合している。その数は三千名を超えていた。
アルバートの戴冠式では代理人を出していた貴族も、ここには当主自らが出席している。明日の戴冠式、結婚式にも参列を予定していた。
「アードレー家当主は、今、この瞬間から、我が娘、ルイーゼに委ねる。皆のもの、これまでと同じように新当主を盛り立てて欲しい」
ホールから大きな歓声が上がり、盛大な拍手が鳴り響く。
「皆さま、私は、全ての人が、自分の思ったこと、好きなことを自由にできる国を皆さまといっしょに作っていきたいと思っています。皆さん、いっしょに頑張りましょうね」
拍手と声援でホール全体が震えた。
参加している人たち全てが、ルイーゼがもたらしてくれる明るい未来を確信していた。
現王朝から王位の継承を行ったのち、すぐに結婚式に移る予定だ。ルイーゼの母は先王の妹であるため、ルイーゼは皇室の血を継いでおり、血統的な問題はない。
リンクは婚礼の儀式の準備に忙殺されているため、戴冠式はアードレー家に身を寄せていた宰相のマルクス、副宰相のリットンとクラウスが中心となって、準備を進めた。
史上初の女王の誕生ということで、先例のないことが多く、多くは王妃の戴冠式の儀礼を流用した。その際、アルバートの正妃が協力を申し出た。アルバートの執拗な虐めから解放してくれたクラウスの役に少しでも立ちたいとのことだった。
ちなみに、ルイーゼの刺繍事件に関わった側室二名は既に流刑になっている。アルバートの妾たちは、クラウスの配下の女性部隊に配属された者や今回解放されて静養中の者などがいるが、クラウスは彼女たちから絶大な人気を誇っていた。
「もうパパったら、姉さまへの愛はなくなってしまったのね。いつもいつも美しい女性数人に囲まれて、デレデレしちゃって。節操ないわね」
クラウスのルイーゼへの忠誠心は揺るぎなかったが、彼も男だった。彼女たちのあの手この手の攻めに何度も陥落してしまい、不本意にもハーレムを作ってしまったのだ。もちろんルイーゼからは軽蔑されてしまい、「ハーレムさん」と呼ばれるようになってしまう。
「ルイーゼ様、私は彼女たちを捨ててはおけないのです。何卒ご高配を」
「はいはい、あなたの人生なんだから、好きにするといいのよ、ハーレムさん」
「ルイーゼ様……」
クラウスはルイーゼに軽蔑されながらも、アルバートの妾全員の面倒をみるという漢気を見せたのであった。
一方、アンリはというと、絶賛社内恋愛中だった。農業演習で知り合った組織のマッチョな同僚二人からほぼ同時に告白され、今日はこっち、明日はあっちと二人を振り回して、小悪魔ぶりを遺憾なく発揮していた。
「ねえ、アンリ、マッチョさんたち両方とお付き合いしているようだけど、どちらかに決めないの?」
「もう決められないんで、どちらかが諦めるまで待ってるんですよ」
「マッチョさんたちもとんだ娘を好きになってしまって大変ね……」
***
そして、結婚式の前夜となった。
戴冠式、結婚式の前に、アードレー家の当主の継承が本邸の大ホールで行われた。
ロバート、マリアンヌ、ルイーゼ、リンクが壇上に立ち、ホールにはアードレー家本邸の使用人全員と親戚筋および契約貴族が集合している。その数は三千名を超えていた。
アルバートの戴冠式では代理人を出していた貴族も、ここには当主自らが出席している。明日の戴冠式、結婚式にも参列を予定していた。
「アードレー家当主は、今、この瞬間から、我が娘、ルイーゼに委ねる。皆のもの、これまでと同じように新当主を盛り立てて欲しい」
ホールから大きな歓声が上がり、盛大な拍手が鳴り響く。
「皆さま、私は、全ての人が、自分の思ったこと、好きなことを自由にできる国を皆さまといっしょに作っていきたいと思っています。皆さん、いっしょに頑張りましょうね」
拍手と声援でホール全体が震えた。
参加している人たち全てが、ルイーゼがもたらしてくれる明るい未来を確信していた。
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