公爵令嬢は皇太子の婚約者の地位から逃げ出して、酒場の娘からやり直すことにしました

もぐすけ

文字の大きさ
上 下
19 / 47
第三章 起業と領地経営

農業演習

しおりを挟む
酒場経営が軌道に乗り始め、ルイーゼ、アンリ、リンクの三人は、離れの執務室で今後について話していた。

「アードレー家が味方についたことで、王家を倒す計画を十年は前倒し出来ますよ!」

リンクはとても嬉しそうだ。

「え~とっ、いつの間に私たちは、王家を倒すことになっていたのでしたっけ?」

ルイーゼは戸惑いながらリンクに尋ねると、アンリが代わりに答えた。

「あれ? 姉さまは皇太子を蹴飛ばしても大丈夫なぐらいの力をつけるって、お母様にお話しされてませんでしたっけ?」

アンリが肘でルイーゼの腕をツンツンしてくる。

「それは確かに言ったけど」

「あの皇太子をぶん殴るんですよね!?」

なぜかアンリの鼻息が荒い。

「まあ、殴れるものなら、殴りたいわね」

ルイーゼはハンカチの屈辱を思い出した。

「では、殴りましょう。私はあの皇太子が大嫌いなのです」

リンクまで過激な発言をして来た。リンクが人を嫌うなんて珍しい。皇太子と何かあったのだろうか?

「王家を倒すには、アードレー家を王家を含めた国内全ての貴族を敵に回しても余裕で勝てるようにする必要があります。絶対的な力を示さないと、内乱が起き、国が疲弊してしまいますから」

そんなものなのだろうか。話が大きすぎて、ルイーゼにはピンと来なかった。

そんなルイーゼの表情を見て、リンクが補足をした。

「ルイーゼさんは、接戦を何とか制して勝つのと圧倒的に敵を蹴散らすのと、どちらがお好きですか?」

「圧倒的に蹴散らす方です……」

ルイーゼはそう答えるのが何だか恥ずかしかったので、小声で答えた。

「ですよね、私もそっちの方が好きです。アードレー家を無敵にしましょう。そのためには、領地経営の改革が必要です。まずはルイーゼさんには実地研修をして頂きたいです」

「何をするのでしょうか?」

「農民になって、税金を納めませんか?」

「はい?」

「ちょうど今、働き手が病死してしまって、このままでは税金が納められず、領主に接収されてしまう農地があります。この農地を私たちで引き継ぎませんか?」

「何をしていいのか全く分からないのですが……」

「私も農作業には詳しくないので、組織から技術指導者を手配してもらうようにしました。老夫婦に扮して、農業のイロハを教えてもらうことになっています。私とルイーゼさんは若夫婦役です。アンリは私の妹役です。この五人で農業します」

「えっ? 夫婦ですって!?」

「すいません、お嫌かもしれませんが、役人に怪しまれないように前の農家と同じ家族構成にしたいのです」

(やりますっ!)

などと食いついては、いい女が台無しだ。仕方ないわね、という態度と表情を作る。

「仕方がないです」

「すいません。農作業はかなり厳しいので、労働担当に別の人間を用意しています。ですから、ルイーゼさんとアンリは農作業は見ているだけで大丈夫です。日に焼けるのも不味いでしょうから、木陰から眺めていればいいです」

(何だか随分楽そうね。まるで毎日ピクニック気分かも)

「リンクさんは農作業されるのですか?」

「ええ、私はいつも体を鍛えておりますので、いい運動になって丁度いいです」

(じょ、上半身裸になって、た、耕したり、す、するのかしら?)

「どうかしましたか?」

「いいえ、何でもありません」

私はすまして答えた。

「そうですか。緩い体験学習ですので、ご心配なく」

農業演習、楽しすぎるんじゃないっ!?
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人 世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。 デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女 小国は栄え、大国は滅びる。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」 アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。 金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。 私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

処理中です...