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第三章 起業と領地経営
慰労会
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一号店の初日は無事終了した。
掃除が終わり、従業員全員で食卓を囲んだ。ルイーゼたちはこれには参加しない。オーナーが出しゃばるのはよろしくないからだ。
賄いご飯の食事の前に、各セクションのリーダーから問題点を三つまで挙げてもらい、改善策を全員で出し合うようにしてもらった。この仕事後のミーティングにも時給は支給されるが、一言も発言しないと時給を下げると言ってあるため、割と活発に意見が出た。
さあ、いよいよ賄い飯での食事会が始まる。この食事が非常に美味であるため、これを楽しみにしている従業員は多い。今日は打ち上げということで、アルコール飲み放題と言ってある。
ルイーゼは最初の乾杯の音頭だけ取ることにした。
「皆さん、今日はご苦労様でした。これからも皆さんでこの酒場を盛り立てて行ってね。私がいるとリラックス出来ないだろうから、今日は早々に失礼するわね。では、カンパーイ」
従業員全員がジョッキを上げて乾杯した。
ルイーゼ、アンリ、リンクは従業員たちの挨拶を受けながら酒場を出た。馬車で屋敷に向かうが、リンクはいつも御者席に座り、決してホロには入って来なかった。リンクは常にルイーゼをお姫様のように扱い、決して馴れ馴れしくしないのだ。
酒場から従業員の歓声が聞こえて来た。「ルイーゼの酒場はルイーゼさんのものではなく、従業員たちのものです。そう従業員に思わせるように振る舞って下さい」とリンクに言われたことをルイーゼは思い出していた。
***
離れでの慰労会はダイニングで行うことにした。
夜勤のメイドに言って、何本かワインを持って来させた。ツマミはルイーゼが腕を振るった。リンクとのメニュー作りで料理の腕はなかなかのものになっていた。
三人は乾杯した。
ルイーゼはこの前のように醜態をさらさないようにあまりお酒は口にしないようにした。アンリは15歳で成人したばかりなのに異様にお酒に強い。全く酔わず、水のように飲んでいる。
リンクも強い。ルイーゼはこの二人が酔ったところを見たことがなかった。
お互いの働きを讃え合った後、ルイーゼは自分の中でずっとモヤモヤしていた問題を切り出した。
「私、皇太子殿下からは完全に逃げ切れましたし、両親とも和解しました。お店もオープンすることが出来ました。もうこれ以上お二人の貴重なお時間を私のために費やすのは、申し訳ないです」
「え? 私たちはお払い箱なのでしょうか?」
リンクとアンリは驚いている。
「いえ、そういう意味ではなく、これ以上はご迷惑かと」
リンクはホッとした様子で、返答した。
「全然迷惑ではないです。私たちが邪魔なら出ていきますが、そうでなければ、そんなことはおっしゃらず、ずっと使って下さい」
「私もずっといてくれるとありがたいのですが、そのう、契約期間はどうなっているのでしょうか?」
「ルイーゼさんが幸せになるまでです」
「私、今、多分幸せと思います」
「我々がいなくなってもですか?」
「それは……。一緒にいるから幸せなんだと思います」
「では、それはまだ幸せではないです。私たちがルイーゼさんの人生に必要なくなったとき、我々との契約は終了です」
(それって、一生一緒にいられるってこと? 私はそうして欲しいけど、この人たちの人生ってどうなっているの? それに、私は契約ではなく、友人として一緒にいたい)
ルイーゼは思い切って言ってみることにした。
掃除が終わり、従業員全員で食卓を囲んだ。ルイーゼたちはこれには参加しない。オーナーが出しゃばるのはよろしくないからだ。
賄いご飯の食事の前に、各セクションのリーダーから問題点を三つまで挙げてもらい、改善策を全員で出し合うようにしてもらった。この仕事後のミーティングにも時給は支給されるが、一言も発言しないと時給を下げると言ってあるため、割と活発に意見が出た。
さあ、いよいよ賄い飯での食事会が始まる。この食事が非常に美味であるため、これを楽しみにしている従業員は多い。今日は打ち上げということで、アルコール飲み放題と言ってある。
ルイーゼは最初の乾杯の音頭だけ取ることにした。
「皆さん、今日はご苦労様でした。これからも皆さんでこの酒場を盛り立てて行ってね。私がいるとリラックス出来ないだろうから、今日は早々に失礼するわね。では、カンパーイ」
従業員全員がジョッキを上げて乾杯した。
ルイーゼ、アンリ、リンクは従業員たちの挨拶を受けながら酒場を出た。馬車で屋敷に向かうが、リンクはいつも御者席に座り、決してホロには入って来なかった。リンクは常にルイーゼをお姫様のように扱い、決して馴れ馴れしくしないのだ。
酒場から従業員の歓声が聞こえて来た。「ルイーゼの酒場はルイーゼさんのものではなく、従業員たちのものです。そう従業員に思わせるように振る舞って下さい」とリンクに言われたことをルイーゼは思い出していた。
***
離れでの慰労会はダイニングで行うことにした。
夜勤のメイドに言って、何本かワインを持って来させた。ツマミはルイーゼが腕を振るった。リンクとのメニュー作りで料理の腕はなかなかのものになっていた。
三人は乾杯した。
ルイーゼはこの前のように醜態をさらさないようにあまりお酒は口にしないようにした。アンリは15歳で成人したばかりなのに異様にお酒に強い。全く酔わず、水のように飲んでいる。
リンクも強い。ルイーゼはこの二人が酔ったところを見たことがなかった。
お互いの働きを讃え合った後、ルイーゼは自分の中でずっとモヤモヤしていた問題を切り出した。
「私、皇太子殿下からは完全に逃げ切れましたし、両親とも和解しました。お店もオープンすることが出来ました。もうこれ以上お二人の貴重なお時間を私のために費やすのは、申し訳ないです」
「え? 私たちはお払い箱なのでしょうか?」
リンクとアンリは驚いている。
「いえ、そういう意味ではなく、これ以上はご迷惑かと」
リンクはホッとした様子で、返答した。
「全然迷惑ではないです。私たちが邪魔なら出ていきますが、そうでなければ、そんなことはおっしゃらず、ずっと使って下さい」
「私もずっといてくれるとありがたいのですが、そのう、契約期間はどうなっているのでしょうか?」
「ルイーゼさんが幸せになるまでです」
「私、今、多分幸せと思います」
「我々がいなくなってもですか?」
「それは……。一緒にいるから幸せなんだと思います」
「では、それはまだ幸せではないです。私たちがルイーゼさんの人生に必要なくなったとき、我々との契約は終了です」
(それって、一生一緒にいられるってこと? 私はそうして欲しいけど、この人たちの人生ってどうなっているの? それに、私は契約ではなく、友人として一緒にいたい)
ルイーゼは思い切って言ってみることにした。
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