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第一章 逃亡
事前訓練
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酒場の娘の衣装に着替えた後、お尻を触られない訓練が始まった。
給仕するために歩いているときにお尻を触ってくる男性客が多いらしい。後は注文をメモしているときにも気をつける必要がある。
「お食事するところよね。そんな不埒な真似が許されるのかしら」
「もちろん許されていないです。ですが、叱られること覚悟で触ってくるのです。むしろ、叱られたいのです」
(なんなのよ、それは!?)
「ですので、万一、触られた場合、決して悲鳴をあげたり、嫌がったりせず、極めて冷静に、虫を見るような目で相手を見てください」
「分かったわ」
「では、行きますよ。ベッドに沿って歩いてください。私がお尻を触りに行くのでよけて下さい。よけるのに成功しても、失敗しても、冷静に対処して虫を見る目ですよ」
「ちょっと待って。訓練にかこつけて、私のお尻を触りたいだけなんじゃ?」
「な、何をおっしゃって、お、女同士ですよ」
「まあ、いいわ。色々お世話になっているからね。さあ、来なさい!」
ルイーゼはアンリから、百発百中お尻を触られ、そして、揉まれた。だが、お陰で、もう触られても平気になり、虫を見るような目もどんどんと研ぎ澄まされて行ったようだ。その証拠に、アンリが精神的ダメージを受けるようになった。
「も、もう大丈夫です。こっちが精神的にキツくなって来ました。自分が虫になったような気がします。次の特訓です。変顔をお願いします。出来るだけ長時間維持できる顔をお願いします」
「変顔って何? 手本見せてくれる?」
「手本ですか。例えば、こんなのどうですか?」
アンリはゴリラ顔を披露した。
「え? そんな顔で給仕するの? いくら何でもおかしいわよ」
「では、これはどうですか?」
今度はシャクレ顔を披露した。アンリの可憐な顔が台無しだ。
「それなら、出来そうだけど、本当にそんな顔になったらどうしよう」
「あっ、ルイーゼ様、私が練習してどうするんですか? ルイーゼ様どうそ」
「じゃあ、これは?」
「ヒッ、それはホラー過ぎます!」
アンリは背筋がゾッとした。ルイーゼの変顔は、目がただれ、鼻の下が異様に伸びて、顎が外れるぐらい落ちて、顔が溶けたようになっているのだ。素顔の美貌の片鱗もない。
「じゃあ、これは?」
「ぎゃあっ! も、もうルイーゼ様のオリジナル変顔は止めにしましょう」
アンリは心臓が止まるほど驚いた。顔のパーツが全て中央に集まって、気持ち悪いことこの上なかった。ルイーゼの顔は異様に柔らかいのだろうか。
「ルイーゼ様、ちょっとだけシャクレをお願いします」
「こう?」
「いや、もう少しこう出来ませんか? それと目が変になりすぎです」
「こうかな?」
美人二人が真剣に変顔の微調整を行っている姿は異様だ。
「それぐらいがちょうどいいです。普段は俯いて、顔を上げたときにその顔出来ますか?」
「多分、大丈夫かな」
「じゃあ、明日からその顔でよろしくお願いします。では、晩御飯まで少しお休みしますか?」
何だかんだで二人とも逃走の疲れが溜まっていた。
「ええ、ベッドが一つしかないけど、半分使うわよ」
「はい、申し訳ないですが、私も半分使います」
ルイーゼはこの数時間でかなりアンリと打ち解けた気がした。特に変顔合戦は面白かった。あんな可愛い顔のアンリの崩れた顔を見て、何だか距離が縮まったような気がしたのだ。
二人はダブルベッドをまるで姉妹のように仲良くシェアして、ガッツリと昼寝した。
給仕するために歩いているときにお尻を触ってくる男性客が多いらしい。後は注文をメモしているときにも気をつける必要がある。
「お食事するところよね。そんな不埒な真似が許されるのかしら」
「もちろん許されていないです。ですが、叱られること覚悟で触ってくるのです。むしろ、叱られたいのです」
(なんなのよ、それは!?)
「ですので、万一、触られた場合、決して悲鳴をあげたり、嫌がったりせず、極めて冷静に、虫を見るような目で相手を見てください」
「分かったわ」
「では、行きますよ。ベッドに沿って歩いてください。私がお尻を触りに行くのでよけて下さい。よけるのに成功しても、失敗しても、冷静に対処して虫を見る目ですよ」
「ちょっと待って。訓練にかこつけて、私のお尻を触りたいだけなんじゃ?」
「な、何をおっしゃって、お、女同士ですよ」
「まあ、いいわ。色々お世話になっているからね。さあ、来なさい!」
ルイーゼはアンリから、百発百中お尻を触られ、そして、揉まれた。だが、お陰で、もう触られても平気になり、虫を見るような目もどんどんと研ぎ澄まされて行ったようだ。その証拠に、アンリが精神的ダメージを受けるようになった。
「も、もう大丈夫です。こっちが精神的にキツくなって来ました。自分が虫になったような気がします。次の特訓です。変顔をお願いします。出来るだけ長時間維持できる顔をお願いします」
「変顔って何? 手本見せてくれる?」
「手本ですか。例えば、こんなのどうですか?」
アンリはゴリラ顔を披露した。
「え? そんな顔で給仕するの? いくら何でもおかしいわよ」
「では、これはどうですか?」
今度はシャクレ顔を披露した。アンリの可憐な顔が台無しだ。
「それなら、出来そうだけど、本当にそんな顔になったらどうしよう」
「あっ、ルイーゼ様、私が練習してどうするんですか? ルイーゼ様どうそ」
「じゃあ、これは?」
「ヒッ、それはホラー過ぎます!」
アンリは背筋がゾッとした。ルイーゼの変顔は、目がただれ、鼻の下が異様に伸びて、顎が外れるぐらい落ちて、顔が溶けたようになっているのだ。素顔の美貌の片鱗もない。
「じゃあ、これは?」
「ぎゃあっ! も、もうルイーゼ様のオリジナル変顔は止めにしましょう」
アンリは心臓が止まるほど驚いた。顔のパーツが全て中央に集まって、気持ち悪いことこの上なかった。ルイーゼの顔は異様に柔らかいのだろうか。
「ルイーゼ様、ちょっとだけシャクレをお願いします」
「こう?」
「いや、もう少しこう出来ませんか? それと目が変になりすぎです」
「こうかな?」
美人二人が真剣に変顔の微調整を行っている姿は異様だ。
「それぐらいがちょうどいいです。普段は俯いて、顔を上げたときにその顔出来ますか?」
「多分、大丈夫かな」
「じゃあ、明日からその顔でよろしくお願いします。では、晩御飯まで少しお休みしますか?」
何だかんだで二人とも逃走の疲れが溜まっていた。
「ええ、ベッドが一つしかないけど、半分使うわよ」
「はい、申し訳ないですが、私も半分使います」
ルイーゼはこの数時間でかなりアンリと打ち解けた気がした。特に変顔合戦は面白かった。あんな可愛い顔のアンリの崩れた顔を見て、何だか距離が縮まったような気がしたのだ。
二人はダブルベッドをまるで姉妹のように仲良くシェアして、ガッツリと昼寝した。
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