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第二章 地上の動き

兄妹の再会

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メリンダは手を広げている兄の胸に頭から突っ込んで行った。

この半年間の両親や自分の苦労を思い出しているうちに、自然に頭突き体勢に変化していったのだ。

ライルは強烈な頭突きを腹に食らい、うめき声を漏らしながら、地面にうずくまってしまった。

感動的な兄妹の再会を予想していた面々は、しばらく唖然としていたが、ルシアが最初に動いた。

「ライル、大丈夫!? この娘はライルに何てことするのっ!」

ルシアがメリンダを睨みつける。ライルから妹だとは聞いていたが、いきなり頭突きをかましてくるような性格破綻者だとは聞いていない。

「あなた誰? 兄さんの何?」

メリンダもルシアを睨みつける。

「私はルシアよ。ライルの…… 何かしら?」

ルシアが首を傾げている。

(何だか調子の狂う人ね)

メリンダは力が抜けるのを感じた。

「ルシアは俺の大切な人だ」

ライルがよろよろと立ち上がりながら宣言した。

「そうよ、大切な人よっ」

ルシアがもう一度メリンダを睨み返すが、ライルが力を抜けとばかりにルシアの肩をぽんぽんと叩いた。

「メリンダ、久しぶりだな。お友達もご無沙汰だな」

ライルがルミエールたちを見ると、ルミエールたちが軽く会釈をしてきた。

「兄さんはこんなところで、この人と何をしているのよ?」

メリンダは兄の横に知らない女がいることがどうしても許せなかった。

「何をって、飯食って、イチャイチャして、寝ているだけだ。お前こそ、何をしに来た?」

妹に生き方を指図されるいわれはない。ライルはあえてしれっと答えた。

メリンダは拳をギュッとにぎって、うつむいてふるふると震えている。

「ちょっとメリンダ、落ち着きなよ。もう、ライルさんのことになると、どうしてこんなに熱くなるのかしら」

見かねたルミエールが間に入った。

「ねえ、この子ブラコン?」

ルシアがルミエールに小声で聞いてきた。

(見ればわかるでしょう。みんな分かっていることをなぜあえて口にするのよ!)

ルミエールはそう思ったが、仕方なく頷いた。ライルは苦笑している。

ただ、幸いにも、メリンダはスターシアとナタリーに抑え込まれていて、ルシアの発言は聞こえなかったようだ。

ライルがルシアの肩に手を乗せた。

「メリンダには色々と苦労をかけてしまった。ルシアも優しくしてくれると助かる」

ルシアは頷いて、抑え込まれているメリンダの方に近づいて行った。

「分かったわ。メリンダ、改めて挨拶するわ。私はルシア、ライルの大切な人よ。あなたもライルの大切な人なのでしょう? 仲良くしましょう」

そう言ってルシアはメリンダに右手を差し出した。

メリンダはまだ納得のいかない顔をしていたが、自分が子供のような態度をしてしまっていることは自覚している。仲直りのチャンスをくれたルシアの顔をたてて、手を出して握手に応じた。

(む? 何でこんなに強く握るのかしら)

ルシアの力が少し強いのではないかとメリンダは思った。少し痛い。ルシアを見ると、ニッコリと微笑んでいる。

(こ、この女!)

メリンダもニッコリしたまま、強く握り返した。ルシアがピクリと反応して、さらに強く握り返して来る。

(な、何の、もっとやれるわよ)

メリンダもさらに強く握り返す。

二人がずっと微笑みながら、何だか堅すぎる握手をずっとしているのを見て、ルミエールが叫んだ。

「ちょっと、もう離れなさいよっ」

ルミエールにそれぞれ腕を掴まれて、二人はようやく手を離した。二人とも右手が真っ赤になっているが、痩せ我慢して、何事もなかったようにしている。

(何なのよ、全く。先が思いやられるわね)

ルミエールはため息をついた。

「よし、仲直りしたところで、長旅で疲れているだろう。まずは中に入って休め」

(ライルさん、仲直りなんてしてないわよ、この二人は! いったいどこを見ているのよ。これだから男は……)

ルミエールはそう思ったが、ライルに促され、メリンダたちといっしょに目の前の豪邸に案内された。
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