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第一章 イグアスのダンジョン

魔力の測定

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「おじさん。金になる魔物を狩って、地上に出て換金して、生活用品を揃えない?」

何だか調子の狂う娘だな。

「分かった。だが、外に出るのは少しだけだぞ」

髭面なので、俺だとは誰も気がつかないだろう。

この娘の魔力はかなりの容量だ。しかも、癖のない素直な魔力で、どの系統の魔法にも使える全系統魔力だ。

「おい、魔力量を計ったことはあるか?」

「あるよ、魔力計でね。測定不能だった」

ほう、ちょっと自慢している顔だな。

「機械ではなく魔法医師の測定を受けたことはあるか?」

「ないわよ。だって、あれ、胸を触られるじゃない」

魔法医師が魔力量を測定するには、女性の場合は胸を触診する必要がある。しかも、何度か揉んで、魔力の流れを調べる必要がある。そのため、通常は女性の魔法医師が測定を行う。

「女の先生だからそれぐらい大丈夫だろうに。それに」

おっと、俺は何を言おうとしているんだ。胸の大小は魔力とは無関係だ。

「それにそんなちっちゃい胸って言いたいわけ?」

あれ? 睨んだ顔が聖女に似ていて、ドキリとした。

「いいや、まさか。機械で測定不能なのだから、触診でしか計れないだろう、と言おうとしたんだ」

俺は何とか誤魔化した。

「そういうことにしておいてあげるわ。魔法が使えないから計っても意味がないから計ってないわよ」

「魔力が自然回復する時間は分かるか?」

「すぐに回復するから気にしたことないわよ」

この娘、ひょっとしてすごい逸材じゃないか? 

「魔力を鍛えたことはあるか?」

ルシアが不思議そうな顔をした。こいつ、ところどころで聖女に表情が似てやがる。

「魔力って鍛えられるものなの?」

「ああ、全部使い切ることを繰り返すだけだが、そうすることで鍛えられる」

「魔力を使い切ったことは一度もないわ」

「何だと!? お前、歳は幾つだ。無限魔力者になれるかもしれないのに、一度も訓練していないとは何事だ!」

「ちょっと、おじさん、手が痛い」

しまった。つい興奮してしまった。この娘、無限魔力者の適正持ちであることは間違いないのだ。

「すまない。少し興奮してしまった」

「20歳よ」

「え?」

化粧っけはないし、やせ細って、胸も貧弱だし、最初は男かと思ったが、これで20歳!?

「何よ。幼児体形だっていいたいの?」

「いや、そういう訳では」

実はそういう訳だったんだが、それよりも、もう20歳ということは魔力が伸びることはない。今から訓練しても遅いだろう。非常に残念だ。

「もう訓練しても遅いってこと?」

「そうだ。女性の場合は15歳から18歳ぐらいまでだ」

あの才能溢れる聖女でさえ無限魔力者にはなれなかったのだ。そんなに簡単になれるわけはないか。無限魔力者になっていれば、聖女は死ぬことはなかったのに。

「おじさん?」

「ああ、すまない。ダメ元でいいから、一度、魔力を全部使ってみないか?」

魔物も狩れるし、どれだけ容量があるか分かるし、一石二鳥だな。

今、俺たちがいるダンジョンは世界に7つあるダンジョンの1つ、イグアスのダンジョンだ。地下58階まで踏破されているが、最深階が何階であるかはまだ分かっていない。

ダンジョンは古代文明の遺跡で、最深階には古代人が眠っているとか、宝物が隠されているとか言われているが、まだ誰も最深階まで踏破した者がいないため、何階まであるのかは不明だ。

俺たちが倒した魔王が、別のダンジョンであるナイアガラのダンジョンの98階まで踏破したのが最深記録だが、それでも最深階ではなかった。

おっと、また思考がそれてしまった。イグアスのダンジョンで、今、冒険者がいないフロアを魔法で探索してみた。地下7階か。

「ルシア、地下7階に行くぞ」

「え?」

俺はルシアの手を取って、元来た道を駆け始めた。
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