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ブルー

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 私たちは王都に潜入し、帝国が経営する旅館を拠点としていた。

 そこにレイモアが先日話していた頭の切れる人物を連れて来た。

 これが男?

 どこからどう見ても女にしか見えない。

 しかも、金髪碧眼の相当な美人だ。

 胸はさすがにないが、腰がくびれた体型も女としか思えない。

「シーファ様、ご紹介します。ブルーです。ほら、ブルー、ちゃんと挨拶して」

 レイモアがブルーの頭を無理矢理下げさせた。

 ブルーは頭を上げた後、私をチラリと見ただけだった。

「すいません。あまり話さないのです。申し訳ないのですが、先日私たちに話していただいた『戦略』を直接シーファ様からブルーにご説明頂けますでしょうか」

 あまりというか、全く話さないではないか。

「ええ、いいわよ」
 
 私は、革命を蜂起させて王政を終焉させるまでの概略を説明した。

 ブルーは黙って聞いていたが、私の話が終わると、私の目をじっと見てから、口を開いた。

「まだ十六七にしか見えないが、何故そんなに洞察力が高いのだ。実に興味深く面白い戦略だ。やってみよう」

 割と話すじゃないの。でも、この人、本当に男?

 声変わりしてないのでは?

「資金はどれぐらい必要かしら?」

「今、準備しているというシーファ様の私兵たちの維持費だけでいい。我々はブラン様から給金を頂いている。それゆえ、我々に報酬は不要だ。革命資金は、市民の富裕層を動かして、奴らに出させるようにすればいい」

「分かったわ。最初は何をするつもり?」

「市民に新たな税金をかけるよう王政に働きかける」

「どうやって?」

「宮廷貴族の何人かと懇意にしている。彼らに新税制を王に献策させる」

 私は素早くシミュレーションした。

「王が新税制を採用せざるを得ない状況に追い込むために、財政をもう少し脆弱にする必要があるわ。国境の緊張を高めるよう私兵を国境に一時的に配備するわ」

 兵を配備するだけで、王国も何らかの手を打たねばならなくなるはずで、軍事費を使わせることができる。

「それと、これをユリカ姫に買わせましょう」

 私は「エメラルドの滝」をブルーに見せた。

「なるほど。二つとも即効性がある。並行して進めよう」

 試しに私が「エメラルドの滝」の販売をユリカ姫に直接交渉するシミュレーションをしてみた。

 ダメだ。宝石以前に私の存在が危険と判断され、捕まえられて地下牢行きだ。

 ブルーに任せよう。

「作戦が決まったら教えてね」

「エメラルドの滝」は王家のものだと主張され、強引に奪われる可能性もあるため、細かい作戦は実行前にシミュレーションして検証したいのだ。

「了解した。レイモア、今日から私もこちらの旅館に滞在出来るよう手配を頼む」

「分かったわ。ブルー、今日はよく話すわね」

 ブルーはレイモアの言葉を無視して、部屋を出て行った。

 後ろ姿も女にしか見えなかった。

「ねえ、レイモア、ブルーって本当に男?」

 私は確かめたくて仕方がなかった。

「はい。確かです。実は、私は彼としちゃったことがあるので……」

「そ、そう。それは確かね」
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