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山賊の襲撃
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翌朝、ニーナに起こされた。
「シーファ様、そろそろ出発いたします。馬車でお休み下さいませ」
私はお酒には滅法強いはずだが、昨夜の記憶があまりない。
まずい。何か変なことを話していないだろうか。
「ニーナ、昨夜の私はどうだった?」
ニーナが目を逸らした。
「始終陽気でございました。ただ……」
私は説教の話をここで聞かされた。
ニーナには不細工でも自分だけを生涯愛する男を見つけるようにと、高らかに笑いながら上から目線で説教をかましたらしい。
あ、穴があったら、入りたい……。
まだ体が若くて、お酒に慣れていないのかもね。
「少し待ってね。私は毎朝瞑想をしているの。五分だけ待ってね」
「私はテントの中にいてもよろしいでしょうか」
「ええ、大丈夫よ」
私はシミュレーションを開始した。
このまま旅を続けた場合の検証だけなので、すぐに終わるかと思ったのだが、まずいことが起きることがわかった。
「ニーナ、この道の先に山賊が出るって噂はあるかしら?」
「いいえ、聞いたことはないです。ただ、この湖から山を一つ越えて、リンガの街に入るのですが、その山に山賊が住み着いてもおかしくはないです」
シミュレーションでは、山賊には遭遇するものの、何とか逃げられるのだが、どうしたものか。
「私はいつも瞑想しているのだけど、わりと勘が当たるのよ。山賊に注意するよう伝えてくれるかしら」
「分かりました」
ニーナは半信半疑のようだが、皆に伝えてはくれたようだ。
ただ、シミュレーションには、相変わらずブランが出て来ない。
ブランに何かあったらどうしようかと、だんだん心配になって来た。
「ブラン、帝国の最近の貴族の勢力状況について、知っていることを教えて頂戴」
私は盗賊が現れると思われる時間帯に、ブランを馬車の中に居させるようにした。
怪訝な顔をしつつも、ブランが馬車の中に来てくれた。
「どんなことをお知りになりたいですか?」
ブランは私が女性と分かったあとも、同じ態度で接してくれる。
私が口を開こうとしたとき、
「敵襲、敵襲」
アンの声が響き渡った。
同時にアンが弓矢をなん度も放つ音が聞こえて来た。
対人戦闘力のほとんどないガガが馬車の中に飛び込んできた。
それと入れ替わりにブランが御者台に出て行った。
「え? ブラン!?」
「シーファ様、伏せてください。ブランは一流の剣士でもあります。大丈夫です」
ニーナがそう言い残して、外に出て行った。
「失礼します」
伏せた私の背中を覆うようにガガが密着して来た。
「ガガ、あなた私の壁になってくれるの?」
「私は魔法で肉体強化が出来ます。シーファ様の壁になります。しばらく窮屈ですが、我慢してください」
ガガの香水だろうか。ふんわりとローズの香りがする。
私、汗臭くないかしら。
そんなくだらないことを考えていると、外から剣戟が聞こえて来た。
山賊たちの野太い声が聞こえて来る。
シミュレーションとは全く違う状況に、私は生きた心地がしなかった。
「逃げるんじゃないの? 交戦して大丈夫なの?」
私は震える声でガガに聞いた。
「恐らく逃げるよりも交戦した方が危険が少ないと判断したのだと思います」
ガガの声が落ち着いていたので、私も少し落ち着けた。
私はシミュレーションを始めた。
まずい、アンが危ない。
「ガガ、私はいいから、アンを守ってあげて。飛び道具を持つアンを山賊が狙っているわ。後方から攻撃されないよう守ってあげて。さあ、早くっ」
「しかし……」
「早くしなさいっ!」
私はガガを蹴飛ばした。
「は、はいっ」
ガガが馬車から飛び出して行った。
馬車の右側で弓を放っていたアンが鬼のような形相でガガを見た。
「あんた、シーファ様を守らず何してんのっ!」
「アンの後方を守れって、シーファ様に蹴飛ばされましたっ」
ガガは馬車の扉を持って、アンの後ろに回った。
その瞬間、数本の弓矢がガガの持っていた扉に突き刺さった。
アンは素早く反転し、弓の飛んできた方向に矢をいった。
うめき声が聞こえ、男が木の上から落ちて来た。
「助かったわ。さあ、シーファ様を守って」
私はその間もシミュレーションを続けたが、危機は回避できそうだった。
ブランがいなくても回避できるということで、問題ないだろう。
盗賊はどうやら退却したようだ。
ニーナが傷だらけで馬車に戻って来た。マリアも馬車に入って来て、治癒を開始した。
ニーナの傷がみるみるふさがって行く。
すぐにマリアは外に出て、アンとレイモアの治療を行なっている。
ブランとガガは馬車の修理をしているようで、すぐに出発するようだ。
「シーファ様、ご心配おかけしました。もう大丈夫です」
「ニーナ、大丈夫なの? 脂汗かいてるわよ」
「治す前の汗です。お見苦しいところをお見せしました」
「馬車動かします」
ブランの声が外から聞こえ、馬車が動き始めた。
「シーファ様、そろそろ出発いたします。馬車でお休み下さいませ」
私はお酒には滅法強いはずだが、昨夜の記憶があまりない。
まずい。何か変なことを話していないだろうか。
「ニーナ、昨夜の私はどうだった?」
ニーナが目を逸らした。
「始終陽気でございました。ただ……」
私は説教の話をここで聞かされた。
ニーナには不細工でも自分だけを生涯愛する男を見つけるようにと、高らかに笑いながら上から目線で説教をかましたらしい。
あ、穴があったら、入りたい……。
まだ体が若くて、お酒に慣れていないのかもね。
「少し待ってね。私は毎朝瞑想をしているの。五分だけ待ってね」
「私はテントの中にいてもよろしいでしょうか」
「ええ、大丈夫よ」
私はシミュレーションを開始した。
このまま旅を続けた場合の検証だけなので、すぐに終わるかと思ったのだが、まずいことが起きることがわかった。
「ニーナ、この道の先に山賊が出るって噂はあるかしら?」
「いいえ、聞いたことはないです。ただ、この湖から山を一つ越えて、リンガの街に入るのですが、その山に山賊が住み着いてもおかしくはないです」
シミュレーションでは、山賊には遭遇するものの、何とか逃げられるのだが、どうしたものか。
「私はいつも瞑想しているのだけど、わりと勘が当たるのよ。山賊に注意するよう伝えてくれるかしら」
「分かりました」
ニーナは半信半疑のようだが、皆に伝えてはくれたようだ。
ただ、シミュレーションには、相変わらずブランが出て来ない。
ブランに何かあったらどうしようかと、だんだん心配になって来た。
「ブラン、帝国の最近の貴族の勢力状況について、知っていることを教えて頂戴」
私は盗賊が現れると思われる時間帯に、ブランを馬車の中に居させるようにした。
怪訝な顔をしつつも、ブランが馬車の中に来てくれた。
「どんなことをお知りになりたいですか?」
ブランは私が女性と分かったあとも、同じ態度で接してくれる。
私が口を開こうとしたとき、
「敵襲、敵襲」
アンの声が響き渡った。
同時にアンが弓矢をなん度も放つ音が聞こえて来た。
対人戦闘力のほとんどないガガが馬車の中に飛び込んできた。
それと入れ替わりにブランが御者台に出て行った。
「え? ブラン!?」
「シーファ様、伏せてください。ブランは一流の剣士でもあります。大丈夫です」
ニーナがそう言い残して、外に出て行った。
「失礼します」
伏せた私の背中を覆うようにガガが密着して来た。
「ガガ、あなた私の壁になってくれるの?」
「私は魔法で肉体強化が出来ます。シーファ様の壁になります。しばらく窮屈ですが、我慢してください」
ガガの香水だろうか。ふんわりとローズの香りがする。
私、汗臭くないかしら。
そんなくだらないことを考えていると、外から剣戟が聞こえて来た。
山賊たちの野太い声が聞こえて来る。
シミュレーションとは全く違う状況に、私は生きた心地がしなかった。
「逃げるんじゃないの? 交戦して大丈夫なの?」
私は震える声でガガに聞いた。
「恐らく逃げるよりも交戦した方が危険が少ないと判断したのだと思います」
ガガの声が落ち着いていたので、私も少し落ち着けた。
私はシミュレーションを始めた。
まずい、アンが危ない。
「ガガ、私はいいから、アンを守ってあげて。飛び道具を持つアンを山賊が狙っているわ。後方から攻撃されないよう守ってあげて。さあ、早くっ」
「しかし……」
「早くしなさいっ!」
私はガガを蹴飛ばした。
「は、はいっ」
ガガが馬車から飛び出して行った。
馬車の右側で弓を放っていたアンが鬼のような形相でガガを見た。
「あんた、シーファ様を守らず何してんのっ!」
「アンの後方を守れって、シーファ様に蹴飛ばされましたっ」
ガガは馬車の扉を持って、アンの後ろに回った。
その瞬間、数本の弓矢がガガの持っていた扉に突き刺さった。
アンは素早く反転し、弓の飛んできた方向に矢をいった。
うめき声が聞こえ、男が木の上から落ちて来た。
「助かったわ。さあ、シーファ様を守って」
私はその間もシミュレーションを続けたが、危機は回避できそうだった。
ブランがいなくても回避できるということで、問題ないだろう。
盗賊はどうやら退却したようだ。
ニーナが傷だらけで馬車に戻って来た。マリアも馬車に入って来て、治癒を開始した。
ニーナの傷がみるみるふさがって行く。
すぐにマリアは外に出て、アンとレイモアの治療を行なっている。
ブランとガガは馬車の修理をしているようで、すぐに出発するようだ。
「シーファ様、ご心配おかけしました。もう大丈夫です」
「ニーナ、大丈夫なの? 脂汗かいてるわよ」
「治す前の汗です。お見苦しいところをお見せしました」
「馬車動かします」
ブランの声が外から聞こえ、馬車が動き始めた。
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