タイムリープしてクラス転移したおっさん、殺人鬼となる

もぐすけ

文字の大きさ
上 下
13 / 24
ダンジョン編(殺人鬼)

ストレス

しおりを挟む
―― 佐伯の憑依視点

 佐伯の親父は工務店を経営しているようだ。寝る前に佐伯は家族のことを思い出している。妹がいるようだが、佐伯に顔が似ていて、気の毒だった。隣には今日無事に仲間に加わった佐竹が寝ている。

 サイコな俺は一人部屋だ。絵梨花がいなければ危険はないのだが、佐伯がサイコな俺を怖がっているため、別部屋となった。

 女子は、絵梨花と加世子と、今日もう一人仲間に加わった恭子が、同じ部屋で寝ている。

 加世子は顔の火傷が完治してからは、精神も随分と落ち着いたようで、転移前の明るい性格に戻りつつあるが、人を二人殺しているので、気を付けないといけない。

 麗亜は何と山口のところに行ってしまった。あんな奴のところに行っても不幸になるだけだと思うのだが、男女の仲はよく分からない。魔王と魔女ということで、悪を極めるつもりなのだろうか。

 山口は麗亜と合流してからは、もう俺たちを追って来なくなった。

(山口のやつ、女が欲しかっただけか?)

 佐竹が言っていたが、山口は最初は三班を狙っていたらしい。山口と麗亜が付き合っていたという話は記憶にないが、別に絵梨花でなくてもよかったみたいだ。

 ということで、今日は本当に色々なことがあった。俺は一回死んだし。当面の問題は佐伯を守ることだ。一番危ないのはサイコな俺だ。あと念のために加世子もマークしておこう。

***

 男三人、女三人の総勢六人の混成パーティは、ナビゲーターのカナの作戦に従って、地下一階の最強種トロールを狩るべく、今日から訓練をすることになっていた。

 今回、カナが作戦を立案するにあたって、いくつかのことが判明した。

 まず、ナビゲーターには実体と幻影体があり、通常は実体の意識をコピーした幻影体がナビしてしているが、混成班をナビするため、二班、三班、五班の幻影体を合体させたらしい。どうやら俺は、合体操作中の実体の胸を揉んだらしい。

 次に、ナビゲーターは鑑定スキルで、班のメンバーのステータスを参照するが、ロールとスキルは最初の一つだけしか見えないらしい。従って、俺が死神から得たロールやスキル、他人から得たスキルは、俺にしか見えない。

 朝食後、訓練に向かう前に、佐伯と加世子から、武器と防具の支給を受けた。武器や防具は、工作のスキルを持つ佐伯と、鍛治のスキルを持つ加世子が、作製したり、加工したものを使用する。

 俺は昨日の午後、佐伯と加世子の作業を見ていたが、佐伯は木、加世子は鉄を扱って、上手く役割分担していた。だが、佐伯は加世子を相当に恐れている感じだった。

(佐伯はストレスでおかしくなるんじゃないか)

 武器と防具を装備して、すぐに訓練に向かった。トロールの前に、オーガの何体かと戦ったが、楽勝だった。
 
 佐竹の加入は非常に大きい。オーガは低脳であるため、ヘイト管理が容易い。ヘイトを佐竹に向けさせれば、オーガは物理攻撃しかしてこないため、敵の攻撃が全く当たらなくなるのだ。しかも、佐竹はヘイトを集める魔法も使える。

 その間に攻撃力のある恭子、俺が攻撃して、絵梨花が治癒役をこなし、佐伯と加世子は最後方で武器や防具のメンテを行った。

 恭子は最初のうちは、サイコな俺の後ろで見ているだけの感じだったが、上手くコツを掴み出して、サイコな俺とのコンビネーションがどんどんよくなっていくのが、佐伯の目を通して見て、よく分かった。

(何だかとてもいい感じだが、佐伯はどうやって死ぬのだろう。何とか回避したいな)

「オーガ六体が一日のノルマだけど、この調子なら、あっという間だな」

 佐竹が昼食のおにぎりを食べながら話し始めた。

「そうね。とりあえず、あの嫌なプレッシャーからは解放されそうね」

 絵梨花が答えた。ポイントの貯金はあるものの、一日のノルマが達成できないと、いつか貯金がなくなると言うプレッシャーが半端ないらしい。

 サイコな俺は二人の会話の様子を淡々とした表情で見ている。昨日、絵梨花から佐竹と佐伯は攻撃しないように念入りに注意されていたが、今のところ機能しているようだ。

「もう、トロールってのも大丈夫じゃない?」

 加世子のあっけらかんとした言い方に、恭子が反論した。

「私の二班もいい感じだったが、トロールに出会って、私以外、あっという間に皆殺しにされた。すごく強いぞ」

「もうあと数日は訓練が必要です。トロールには再生能力がありますので、それを上回る攻撃力が必要です。今の倍の手数が欲しいです」

 カナに従った方がいい。

 こういった話にも佐伯は加わらず、昼食を食べ終わると、すぐに武器と防具の整備に取り掛かった。

(こいつ、かなり危ないんじゃないか?)

 ぶつぶつ言いながら武器を磨いている。思考が悲しみ一色だ。どうする? 話しかけるか?

 元々ストレス過多だったところに、拠り所としていた権田が死亡し、色々気を使ってくれていた麗亜が消えて、心が折れた感じだ。

 そして、やはり、危惧していたことが起きてしまう。

 お昼休み後のオーガとの一戦目に、精神錯乱状態になってしまった佐伯が、加世子に襲いかかったのだ。

『おい、佐伯っ』

 俺の声に佐伯が少しビクッとした直後、佐伯は加世子に喉を切り裂かれていた。

(加世子、相変わらず躊躇しないな。電光石火の早技じゃないかっ!)

 加世子たちの前にいた絵梨花が事件に気づいたときには、すでに佐伯は死亡していた。

 そして、俺は何と次に山口に臨終憑依するのであった。

――  データ
 キョウコ 外科医11 手術
     (忍術、弓術、拳法、
      柔術、盗賊技)
      点滴、輸血
 カヨコ  小悪魔10 治癒
     (鍛治、刀技、大工)
      デトクス、キュア
 サタケ  隠密6 絶対回避
      ヘイト
 エリカ  エロ聖女10 悩殺技
     (応援歌)
      チャーム、キュア、クレイジー
 キリキ  殺人鬼(死神の使い)11 殺人技
     (臨終憑依、一念通天、剣術、
      ボクシング、槍術、空手)
      キル、パージ
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

処理中です...