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最終話
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恐らく私の天職は内政だと思う。
国を富ませる政策のアイデアを次々と出して、議会にかけ、多数の人に吟味してもらった上で、法制化して施行した。
教育と文化にも力を入れ、農業や工業でも、次々と革命が起き、生産性が飛躍的に向上し、即位後の十年間で、アリタリア帝国は近隣諸国の中でも強国と言われるまでに成長した。
「これもジークが私を手伝ってくれるからなの。でも、本当は、私はジークを手伝いたいの。私よりも遥かに優れた手腕を持つあなたが、私のフォローにまわっているなんて、あまりにも惜しいわ」
「ははは、買い被りすぎだよ。ほら、あまり私を褒めるから、親衛隊長がムスッとしているぞ」
「リブルはいつもムスッとしているわよ。リブルなんか放っておけばいいのよ。いつまでも結婚しないで剣ばかり極めて、まるで剣と結婚しているみたいだわ」
リブルはこの十年間、ずっと私の親衛隊長を務めている。皇居で働く女官からすごい人気があるのだが、全く浮いた話がない。
「ははは、リブルは会ったときから全く変わっていないな。それはさておき、私を手伝う話は実現しそうだぞ。フローラ、君には仕上げを手伝って欲しいんだ」
「え? 仕上げって、どういうこと」
「十年前に君を妻にしたいと思ったとき、君と幸せになるには、どうすればいいか、考えたんだ」
「私は十分幸せよ。子供も授かったし」
私は皇子二人と皇女三人をもうけていた。
「でも、私を手伝いたいって夢があるのだろう?」
「ええ、そうよ」
「私も君に手伝って欲しいという夢があるんだ。これを実現させるときが来たと思うんだ」
「何? また何かサプライズがあるの?」
「そうなんだ。私はレンブラントの王位を継ぐことになったんだ」
「へ?」
「アリタリアとの平和条約の締結で、レンブラントも後方の憂いがなくなり、大きく国土を広げたのは知っての通りだ。一方のアリタリアも強国となり、しかも、強力な海軍を持つアリタリアは今後の世界進出の要となる。元々同じ民族の両国は、今こそ手を取り合うべきなんだ」
「理屈では分かるけど、よくお兄様たちがご納得されたわね」
「兄たちは馬鹿ではないんだよ。国の繁栄を一番期待できるものに王位を継がせることに反対はしない。私たち夫婦がいかに役に立つかを十年かけてアピールした結果、全員一致で後継者を私にすることに合意したんだ」
「すごいわね。ってことは、アリタリアの女王とレンブラントの王が夫婦ってこと?」
「そういうことだ。フローラはレンブラントの王妃でもあるけどね。レンブラントの内政を手伝って欲しいんだ、王妃様」
もうこの人には本当に敵わない。考えることが壮大で、それでいて、実行は綿密に計算されている。
アリタリアの内政が軌道に乗り、あまり手がかからなくなってきたとちょうど思っていたところに、こんな展開を用意しているなんて。
私はジークに抱きついて、キスをした。
「喜んでお手伝いします。王様」
国を富ませる政策のアイデアを次々と出して、議会にかけ、多数の人に吟味してもらった上で、法制化して施行した。
教育と文化にも力を入れ、農業や工業でも、次々と革命が起き、生産性が飛躍的に向上し、即位後の十年間で、アリタリア帝国は近隣諸国の中でも強国と言われるまでに成長した。
「これもジークが私を手伝ってくれるからなの。でも、本当は、私はジークを手伝いたいの。私よりも遥かに優れた手腕を持つあなたが、私のフォローにまわっているなんて、あまりにも惜しいわ」
「ははは、買い被りすぎだよ。ほら、あまり私を褒めるから、親衛隊長がムスッとしているぞ」
「リブルはいつもムスッとしているわよ。リブルなんか放っておけばいいのよ。いつまでも結婚しないで剣ばかり極めて、まるで剣と結婚しているみたいだわ」
リブルはこの十年間、ずっと私の親衛隊長を務めている。皇居で働く女官からすごい人気があるのだが、全く浮いた話がない。
「ははは、リブルは会ったときから全く変わっていないな。それはさておき、私を手伝う話は実現しそうだぞ。フローラ、君には仕上げを手伝って欲しいんだ」
「え? 仕上げって、どういうこと」
「十年前に君を妻にしたいと思ったとき、君と幸せになるには、どうすればいいか、考えたんだ」
「私は十分幸せよ。子供も授かったし」
私は皇子二人と皇女三人をもうけていた。
「でも、私を手伝いたいって夢があるのだろう?」
「ええ、そうよ」
「私も君に手伝って欲しいという夢があるんだ。これを実現させるときが来たと思うんだ」
「何? また何かサプライズがあるの?」
「そうなんだ。私はレンブラントの王位を継ぐことになったんだ」
「へ?」
「アリタリアとの平和条約の締結で、レンブラントも後方の憂いがなくなり、大きく国土を広げたのは知っての通りだ。一方のアリタリアも強国となり、しかも、強力な海軍を持つアリタリアは今後の世界進出の要となる。元々同じ民族の両国は、今こそ手を取り合うべきなんだ」
「理屈では分かるけど、よくお兄様たちがご納得されたわね」
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「すごいわね。ってことは、アリタリアの女王とレンブラントの王が夫婦ってこと?」
「そういうことだ。フローラはレンブラントの王妃でもあるけどね。レンブラントの内政を手伝って欲しいんだ、王妃様」
もうこの人には本当に敵わない。考えることが壮大で、それでいて、実行は綿密に計算されている。
アリタリアの内政が軌道に乗り、あまり手がかからなくなってきたとちょうど思っていたところに、こんな展開を用意しているなんて。
私はジークに抱きついて、キスをした。
「喜んでお手伝いします。王様」
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