皇帝から離縁されたら、他国の王子からすぐに求婚されました

もぐすけ

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ジョージ

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「フローラが再婚しただと?」

 執務室で、ジョージはマルクスを睨んだが、マルクスは飄々としていた。今日はセリーヌは体調不良ということで、同席していない。

「はい、それよりも、陛下。法王ですが、諜報部が検挙に踏み切りました。孤児院で人身売買まで行っていて、その上、娼館経営にも関わっており、証拠不十分でしたが、問答無用で検挙したそうです」

「何だと? そんな無茶なことをスタンレー卿が!?」

「陛下、お父上からスタンレー卿がブチ切れたときのことをお聞きになったことはないのですか?」

 ジョージは知っていた。だからこそ、フローラを簡単には離縁出来ず、セリーヌを使ってフローラ自身にも離縁を望むようにしたのだ。

「それで、法王は?」

「検挙中に銃撃戦となり、スタンレー卿に射殺されました」

「何っ!?」

「まあ、現行犯ですから。仕方ないです」

「し、しかし、六功臣だぞ」

「スタンレー卿も六功臣ですし。まあ、私もですが。それで、まずいことに陛下が法王の悪事に加担していたという証拠が出て参りまして」

「何を言う。濡れ衣だ」

「陛下が法王に資金提供をしているかをセリーヌ皇后に確認したところ、頻繁に資金をお出ししていると仰ってました」

「セリーヌは純粋で、何も深く考えず、そのまま返答するのだ。それはそなたも知っておろう」

「いいえ、優しい性格だとはお聞きしておりましたが、深く考えないというのは、存じ上げないです。深く考えないような人物を皇后に推挙されるはずがないですし、陛下の言い逃れとしか聞こえないです」

「言い逃れとは何だっ!?」

「陛下、お父上は立派なお方でしたが、陛下は違うようですな。お父上からの遺言で、六功臣が全員賛成した場合には、もう五功臣ですが、皇帝の座を五功臣が推薦する人物に譲位するという条項があるのはご存知ですか?」

「もちろん知っているが、五人に減っているから無効だ。それにサーシャが行方不明ではないか」

「無効かどうかは私たちが決めます。それから、サーシャは見つかりました。フローラ様の夫になった方の母になってました」

 ジョージは全てが分かったという顔になった。

「お前たち、邪魔になった法王を殺したなっ」

 マルクスはそれには答えず、背筋を伸ばし、襟を正して、ジョージに向かい合った。

「マルクス・サーグランデが先帝に変わって、ジョージ・リッチモンドに申し渡す。ジョージ・リッチモンドは、皇帝に不適格であると五功臣が判断した。ジョージ・リッチモンドは、速やかに五功臣が推挙するフローラ・スタンレーに皇帝の座を譲位せよ」

 ジョージは驚いて目を見開いた。

「フローラだとっ!? そんなバカことが許されるものかっ!」

 ジョージがマルクスにつかみ掛かろうとしたとき、衛兵を引き連れて、カイザー将軍が執務室に入って来た。

「ジョージ、この場で処刑されたいのか? 出来れば、盟友の息子は殺したくはないぞ」

 カイザー将軍の重厚な声に、ジョージは膝を落として、がっくりとうなだれた。

 ジョージは北の流刑島にセリーヌと一緒に流された。
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