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プロポーズ
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ジークから再度正式な婚姻の申し入れが私の父にあった。
海軍は結納品のつもりだったと言われ、父としては婚姻を承諾せざるを得ないが、一応私に受けていいかを確認してくれた。
ジークにすっかり心酔して、完全に落ちてしまっていた私は、二つ返事で了承した。こんな凄い人が出戻りの私を妻に迎えてくれるなんて、信じられなかった。しかも、結納品が海軍だなんて、スケールが大きすぎて、訳が分からない。身体中が歓びで震えた。
結婚式の後、ジークが私にぽつりと言った。
「海軍で間に合って良かったです。これでお断りされたら、打つ手がありませんでした」
海軍を結納品として献上されて、断る女性がいるだろうか?
ちなみに、海軍をアルタリアに献上する案は、ジークから国王に献策したそうだ。
レンブラントの海軍は、元々はアルタリアへの防衛のために維持しているが、仮に海軍がなくても、陸軍で圧倒できるため、海軍は不要だということ
アルタリアを攻めるよりも、海軍の予算を陸軍に回し、大陸に目を向けた方がいいこと
海軍を解散させるよりも、アルタリアにそのまま渡したほうが、解体費がかからず、総コストを抑えられること
アルタリアとの交易を盛んにして、関税を王家の収入源にすること
などを挙げて、説得したそうだ。
それでもなかなか説得は難しかったらしく、最後は王妃を味方につけて、私への結納品だと正直に話したところ、国王はようやく笑って許可してくれたという。
「ただし、条件があるのです」
「条件ですか?」
「はい、フローラ殿をこの国の女王にするよう両親から厳命されました」
「私をですか!?」
「はい、今の皇帝は愚鈍です。この国のためにも、あなたのような聡明な方が君主となって、国を導くべきです」
「それは流石にかなり難しいというか、無理があるのではないでしょうか」
「六功臣のうち、五人の賛成は得ています」
「え? 法王も承諾したのですか?」
「いいえ、法王以外の五人が賛成しています」
「ちょっと待ってください。サーシャ様は大陸に行ったまま行方不明と聞いていますが、見つかったのでしょうか」
「はい、サーシャは、今はアメリア・レンブラントと名乗っております。私の母です」
(マ、マジ……なの?)
「それから、法王はかつての敬虔さを失ってしまっていますので、社会の害悪として除去しなければなりません。その件については、すでにフローラ殿のお父上が動き出しています」
以前、父が忙しくて手が離せないと言っていたのは、法王対応のことだったようだ。
だが、ジークは海軍総督に就任することになっている。ジョージを王座からどのように引きずり下ろすのだろうか。
「マルクス殿がすでに動き始めました。軍部はカイザー将軍から協力をお約束して頂いております。六功臣のうち、五人を敵に回しては、皇帝であろうと勝ち目はありませんし、母が言うには切り札もあるそうです」
「私に何かお手伝いすることはありますか?」
「フローラ殿に活躍してもらうのは、女王になってからです。今はどっしりと構えていて下さい」
「あの、殿下、その、私のことは、フローラと呼んで下さいまし」
ジークは少し驚いた表情を見せたが、にっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。それでは、遠慮なくフローラと呼ばせて頂きます。私のこともジークと呼んでくれますか」
「かしこまりました。それと敬語も使わないで下さい」
「それはちょっと難しいです。私はあなたを尊敬していますので。自然と丁寧な言葉になってしまいますし、一番大切にしたいという気持ちの現れなのです」
「それは私にもわかります。私もジークには丁寧な言葉で話さないと、何だかしっくりとしません」
これから、夫婦の絆がもっと深まれば、お互いの話し方も変わるだろう。
まずは今夜が最初の一歩ね。
海軍は結納品のつもりだったと言われ、父としては婚姻を承諾せざるを得ないが、一応私に受けていいかを確認してくれた。
ジークにすっかり心酔して、完全に落ちてしまっていた私は、二つ返事で了承した。こんな凄い人が出戻りの私を妻に迎えてくれるなんて、信じられなかった。しかも、結納品が海軍だなんて、スケールが大きすぎて、訳が分からない。身体中が歓びで震えた。
結婚式の後、ジークが私にぽつりと言った。
「海軍で間に合って良かったです。これでお断りされたら、打つ手がありませんでした」
海軍を結納品として献上されて、断る女性がいるだろうか?
ちなみに、海軍をアルタリアに献上する案は、ジークから国王に献策したそうだ。
レンブラントの海軍は、元々はアルタリアへの防衛のために維持しているが、仮に海軍がなくても、陸軍で圧倒できるため、海軍は不要だということ
アルタリアを攻めるよりも、海軍の予算を陸軍に回し、大陸に目を向けた方がいいこと
海軍を解散させるよりも、アルタリアにそのまま渡したほうが、解体費がかからず、総コストを抑えられること
アルタリアとの交易を盛んにして、関税を王家の収入源にすること
などを挙げて、説得したそうだ。
それでもなかなか説得は難しかったらしく、最後は王妃を味方につけて、私への結納品だと正直に話したところ、国王はようやく笑って許可してくれたという。
「ただし、条件があるのです」
「条件ですか?」
「はい、フローラ殿をこの国の女王にするよう両親から厳命されました」
「私をですか!?」
「はい、今の皇帝は愚鈍です。この国のためにも、あなたのような聡明な方が君主となって、国を導くべきです」
「それは流石にかなり難しいというか、無理があるのではないでしょうか」
「六功臣のうち、五人の賛成は得ています」
「え? 法王も承諾したのですか?」
「いいえ、法王以外の五人が賛成しています」
「ちょっと待ってください。サーシャ様は大陸に行ったまま行方不明と聞いていますが、見つかったのでしょうか」
「はい、サーシャは、今はアメリア・レンブラントと名乗っております。私の母です」
(マ、マジ……なの?)
「それから、法王はかつての敬虔さを失ってしまっていますので、社会の害悪として除去しなければなりません。その件については、すでにフローラ殿のお父上が動き出しています」
以前、父が忙しくて手が離せないと言っていたのは、法王対応のことだったようだ。
だが、ジークは海軍総督に就任することになっている。ジョージを王座からどのように引きずり下ろすのだろうか。
「マルクス殿がすでに動き始めました。軍部はカイザー将軍から協力をお約束して頂いております。六功臣のうち、五人を敵に回しては、皇帝であろうと勝ち目はありませんし、母が言うには切り札もあるそうです」
「私に何かお手伝いすることはありますか?」
「フローラ殿に活躍してもらうのは、女王になってからです。今はどっしりと構えていて下さい」
「あの、殿下、その、私のことは、フローラと呼んで下さいまし」
ジークは少し驚いた表情を見せたが、にっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。それでは、遠慮なくフローラと呼ばせて頂きます。私のこともジークと呼んでくれますか」
「かしこまりました。それと敬語も使わないで下さい」
「それはちょっと難しいです。私はあなたを尊敬していますので。自然と丁寧な言葉になってしまいますし、一番大切にしたいという気持ちの現れなのです」
「それは私にもわかります。私もジークには丁寧な言葉で話さないと、何だかしっくりとしません」
これから、夫婦の絆がもっと深まれば、お互いの話し方も変わるだろう。
まずは今夜が最初の一歩ね。
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