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カイザー将軍
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私の父も母もカイザー将軍も法王も離縁に賛成で、マルクスは孤軍奮闘状態だったらしい。
ちなみに法王は、すっかり堕落してしまったが、実は六功臣の一人だ。私の母も元聖女で六功臣だったりする。もう一人はサーシャという魔女で、今は大陸に住んでいる。
マルクスの抵抗虚しく、廃后と離縁が正式に決まり、案の定、カイザー将軍が騒ぎ出した。
どこでどう聞いたのか分からないが、レイクウッド城にアポなしで訪ねて来た。
頭はすっかり禿げ上がってしまっているが、精悍な顔つきで、筋肉隆々のゴツい体付きをしている。
「フローラ、やったな。ジョージのくそガキに、お前は勿体なかったんだ。いやあ、よかった、よかった」
私が良かったと思うのはいいのだが、離縁したのを人から良かったと言われるのは微妙だ。
「おじ様、よくここがお分かりになりましたね」
「フローラの居場所を教えてくれたら味方になるぞ、ってマルクスに言ったら、すぐに教えてくれたぞ」
そんなに簡単に騙されて、一国の宰相としてどうなのかと思ったが、抜け目のないマルクスのことだ。どうせ負けると思って、カイザー将軍に恩を売ったに違いない。
「おじ様、お忙しいのでは? 御用なら私の方からお伺いしましたのに」
「ん? まあな。ハマーンとの再戦がありそうでな。それより、婿選びの話だ。ワシの息子のどれがいい? 結婚してても別れさせるから、誰でもいいぞ」
相変わらず言ってることが無茶苦茶だ。
「おじ様、私、しばらく結婚はちょっと……」
「何? そうか。じゃあ、とりあえず、護衛というのでどうだ?」
何か受け入れないとずっと付き纏われそうね。それに側に一人男性がいれば、多少の虫除けにはなるわね。
「では、遠慮なく。一番筋肉の少ない息子さんでお願いします」
「何だ筋肉は嫌いか」
「あまりゴツいのはちょっと……」
「そうか。では末っ子のリブルを使わそう」
「え? リブルですか? 子供のイメージしか……」
「もうあいつも二十歳だぞ。剣が得意で、余計な筋肉は動きの邪魔になるとか言って、しなやかな体を維持している。早速仕事を辞めさせて、こっちに来るようにさせる。住み込みで良いな」
そうか。リブルは同い年だ。
「え、ええ。でも、本人の希望もあるかと……」
「フローラの側が一番に決まっておろう」
「あの、おじ様……」
「分かっておる。気に入らなかったら、いつでも言ってくれ。フローラの好きにすればよい。無理強いはしないから安心しろ。息子たちもその点はわきまえておる」
「はい、よろしくお願いします」
リブルと話せばいいか。
リブルはカイザー五兄弟の中では割と普通の印象だった。一人だけ美人のおば様似で、割と美少年だったような記憶がある。もっとも最後に会ったのは十歳のときだから、今はどのように成長しているかはわからない。
カイザー将軍は満足げに頷いて、上機嫌で帰っていった。
ちなみに法王は、すっかり堕落してしまったが、実は六功臣の一人だ。私の母も元聖女で六功臣だったりする。もう一人はサーシャという魔女で、今は大陸に住んでいる。
マルクスの抵抗虚しく、廃后と離縁が正式に決まり、案の定、カイザー将軍が騒ぎ出した。
どこでどう聞いたのか分からないが、レイクウッド城にアポなしで訪ねて来た。
頭はすっかり禿げ上がってしまっているが、精悍な顔つきで、筋肉隆々のゴツい体付きをしている。
「フローラ、やったな。ジョージのくそガキに、お前は勿体なかったんだ。いやあ、よかった、よかった」
私が良かったと思うのはいいのだが、離縁したのを人から良かったと言われるのは微妙だ。
「おじ様、よくここがお分かりになりましたね」
「フローラの居場所を教えてくれたら味方になるぞ、ってマルクスに言ったら、すぐに教えてくれたぞ」
そんなに簡単に騙されて、一国の宰相としてどうなのかと思ったが、抜け目のないマルクスのことだ。どうせ負けると思って、カイザー将軍に恩を売ったに違いない。
「おじ様、お忙しいのでは? 御用なら私の方からお伺いしましたのに」
「ん? まあな。ハマーンとの再戦がありそうでな。それより、婿選びの話だ。ワシの息子のどれがいい? 結婚してても別れさせるから、誰でもいいぞ」
相変わらず言ってることが無茶苦茶だ。
「おじ様、私、しばらく結婚はちょっと……」
「何? そうか。じゃあ、とりあえず、護衛というのでどうだ?」
何か受け入れないとずっと付き纏われそうね。それに側に一人男性がいれば、多少の虫除けにはなるわね。
「では、遠慮なく。一番筋肉の少ない息子さんでお願いします」
「何だ筋肉は嫌いか」
「あまりゴツいのはちょっと……」
「そうか。では末っ子のリブルを使わそう」
「え? リブルですか? 子供のイメージしか……」
「もうあいつも二十歳だぞ。剣が得意で、余計な筋肉は動きの邪魔になるとか言って、しなやかな体を維持している。早速仕事を辞めさせて、こっちに来るようにさせる。住み込みで良いな」
そうか。リブルは同い年だ。
「え、ええ。でも、本人の希望もあるかと……」
「フローラの側が一番に決まっておろう」
「あの、おじ様……」
「分かっておる。気に入らなかったら、いつでも言ってくれ。フローラの好きにすればよい。無理強いはしないから安心しろ。息子たちもその点はわきまえておる」
「はい、よろしくお願いします」
リブルと話せばいいか。
リブルはカイザー五兄弟の中では割と普通の印象だった。一人だけ美人のおば様似で、割と美少年だったような記憶がある。もっとも最後に会ったのは十歳のときだから、今はどのように成長しているかはわからない。
カイザー将軍は満足げに頷いて、上機嫌で帰っていった。
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