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ジョージが来ました

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 ルカはジョージのモラハラ、DVの被害をほとんど受けていないため、心の傷は少ないはずだ。だが、私は服毒死までさせられているため、すずきさゆりの人格が入っていなければ、ジョージとまともに向き合うことは出来なかったと思う。

 婚儀の前夜パーティで、私はマリアンヌとジョージと話していた。私の横にはルークがついていてくれる。私のことが心配なようだ。

「マリアンヌ、こんなに美しいお姉さんがいらっしゃるなんて、早く教えてくれたらよかったのに」

 ジョージはにこやかに私に挨拶してきた。社交界デビューのときのようだ。

「王様、お上手ですこと」

 私は無難に答えておいた。マリアンヌは不機嫌そうだ。ついでにルークも不機嫌そうだ。

「陛下、お姉様は犬しか愛せない変人ですので、お目汚しになるかと思いまして、紹介しなかったのです」

 マリアンヌはジョージが私に興味を持たないように必死だが、私もその方が助かる。

「犬ですか?」

「はい、人は裏切りますから。私は裏切らない犬が好きなのです。エカテリーナ様も多くは語られませんが、王様とのことで、色々とお悩みになったようですわ」

「そ、それは誤解です」

「そうですか? エカテリーナ様はひどく傷つかれまして、自害なさろうとされましたのよ」

 ジョージは私と直接話すのを避けるようだ。

「マリアンヌ、君のお姉様は誤解されておられるようだ。君から説明しておいてくれないか。私は少し酔ったようだ。風に当たってくる」

 そう言い残して、ジョージは逃げて行った。

「お姉様、どうしたの? まるで陛下を追及しているようじゃない」

「どうもしません。王妃様、王様から大事にしてもらってますか?」

「ええ、まあ、以前ほどではないけど。それより、後宮のことで相談があるのだけど、どこかで話せない?」

 マリアンヌはルークに聞こえないようにヒソヒソ話で私に聞いてきた。

「王妃様、後宮の財政建て直しの話でしたら、もうそろそろ手遅れですわよ。まさか、こんなに無茶苦茶にするなんて、想像以上にダメダメだったみたいですね、王妃様」

「なっ。あなた知ってて!」

 私はマリアンヌを見下ろした。

「マリアンヌ、あなた欲張り過ぎたのよ。あのまま私に任せておけばいいものを。浅はかな女だわ。自業自得よ、私は助けないわよ」

「エリーゼ、あなたっ!?」

 マリアンヌは今にも私につかみかかってくるような勢いだ。

「こんなところで王妃様が乱闘するの? そもそも武道の達人の私に勝てるつもり? 考えるのね。でも、マリアンヌ、あなたはジョージに殺されたりしないから大丈夫よ。贅沢できなくなるだけ。大したことではないわ」

「エリーゼ様、そろそろ行きましょう」

 ルークが頃合いを見て、声をかけてくれた。

「マリアンヌ、王妃らしくしていられるのもあと少しよ。それでは、ごきげんよう」

「エリーゼ、陛下に言って処罰してもらうわよっ」

 ルークが冷たい目でマリアンヌを横目で見た。

「マリアンヌさん、帝国民であるエリーゼ様が、王国の王ごときに処罰出来るとでも? 勘違いも甚だしい。まあ、いい。頼むのは自由だ。頼んでみるがいい」

 ルークはそうマリアンヌに言い残して、私をエスコートした。他の国賓に私を紹介するつもりのようだ。
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