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離れで話しました
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ジョージの失脚作戦は後日話をすることにして、いったん離れに案内したいということで、私たちを世話してくれるメイドを六人も紹介された。それぞれに専属メイドが付き、残りの二名はバックアップだそうだ。
ルカはメイドにかしずかれることに慣れていると思うが、私もローズもカレンも、最近は奉仕する方だったので、慣れるのに少し時間がかかった。
提供して頂いた部屋は素晴らしかった。それぞれの部屋に寝室と居間があったが、鳳凰殿と同じぐらいのクオリティだった。そして、私の部屋にはダイニングルームと応接室と会議室までついていた。
「いつでも仕事出来る環境だわ。気をつけないと仕事漬けになりそうね……」
私は自分の部屋を見回した後でそう呟いた。今日は夕食を本館の食堂で頂くことになっているが、それまでは自由時間だ。私はルカの部屋に行こうとして、ドアを開けた。すると、目の前にルカがいて鉢合わせになり、お互いに腰を抜かすほど驚いた。
「びっくりさせないでよぉ」
ルカが口を尖らせている。
「それはこっちのセリフよ。中に入って。アミーさん、お茶をいれてくださる? その後は下がっていて大丈夫よ」
アミーは私の専属メイドだ。私はルカを応接室に案内した。
「へえ、エリーゼのところには、接客用の施設もあるのね」
「会議室まであるのよ。いつまでも仕事しろって感じだわ」
「社長さんは大変ね」
アミーがお茶を持って来て、私たちに出した後、お辞儀をしてから退室した。
「ここのメイドさんは、すごく動きが洗練されているわよね」
「まるで私やローズやカレンがダメみたいに聞こえるけど、確かに素晴らしいわ。着替えのお手伝いも、かゆいところに手が届く感じで、とてもよかったわ。勉強になるわ」
「あなたは侍女としては、びっくりするほどダメだったわよ。私だから仕方ないけど。ここのメイドさんたちは、教育が行き届いているって感じよね」
「その通りよね。執事さんの間の悪さを何度も見て、少し心配していたのだけれど、間の取り方も素晴らしいわね」
私たちは中々本題に入れずにいたが、意を決して、ルカが話し始めた。
「それで、皇帝陛下のお言葉なんだけど……」
「どうだった?」
「私に結婚して欲しいって」
「え? もうプロポーズされたの? 会ったばかりで」
「それが、陛下からすると、十年近く我慢していたらしいの。どんなに私に恋焦がれていたかを話して下さったのだけれど、押し付けがましくなくて、何て言うのかしら。そう、まるで詩のようで、とても素敵な感じなのよ。私、感動してしまったわ」
「それは、どうも。ご馳走様です」
「茶化さないで。私、諦めてもらうつもりだったのに、諦める気は全然ないみたい。困ったわ」
「どうして困るの?」
「だって、よく知らない方だし。皇帝なのよ」
「皇帝って、王と同じでしょう。君主の妻は経験済みじゃない」
「それはそうだけど、交流会とか、どういう顔して、ジョージとマリアンヌに会えばいいのよ」
「それは確かに。でも、そういうこと考えてるってことは、結婚した場合も考えたのね」
「それは、そうよ。とてもいい人みたいなの」
「皇帝陛下はジョージのことをすごく嫌っているみたいよ。ジョージを王座から引きずり下ろすことを考えているみたいだから、私もお手伝いしたいって思ってるの」
「そうなの?」
「そう。それでジョージが国王でなくなれば、交流会も問題ないじゃない」
「交流会が嫌で結婚しないわけじゃないの。私は陛下には相応しくないのよ」
「それを決めるのはルカではなく、陛下だと思うわよ」
「あなた、陛下と同じことを言うのね」
「それが正しいからよ。でも、無理して答えを今出す必要はないと思うわ。自然に答えが出るまで待って下さるのでしょう?」
「ええ」
「大人の男でよかったじゃない。それに甘えるといいと思うわ」
「エリーゼ、あなた、本当に陛下と同じことを言うのね」
「何度も言うけど、それが正しいからよ」
ルカはとりあえず心の整理ができたのか、迷いが取れた顔つきになって、自分の部屋に戻って行った。
ルカは気まずいかもしれないけど、私としては、ジョージとマリアンヌがびっくりするところを見たいと思った。だが、それよりも何よりも、そんな気まずさなんて気にならないほど、ルカには陛下と幸せになって欲しいと思う。
ルカはメイドにかしずかれることに慣れていると思うが、私もローズもカレンも、最近は奉仕する方だったので、慣れるのに少し時間がかかった。
提供して頂いた部屋は素晴らしかった。それぞれの部屋に寝室と居間があったが、鳳凰殿と同じぐらいのクオリティだった。そして、私の部屋にはダイニングルームと応接室と会議室までついていた。
「いつでも仕事出来る環境だわ。気をつけないと仕事漬けになりそうね……」
私は自分の部屋を見回した後でそう呟いた。今日は夕食を本館の食堂で頂くことになっているが、それまでは自由時間だ。私はルカの部屋に行こうとして、ドアを開けた。すると、目の前にルカがいて鉢合わせになり、お互いに腰を抜かすほど驚いた。
「びっくりさせないでよぉ」
ルカが口を尖らせている。
「それはこっちのセリフよ。中に入って。アミーさん、お茶をいれてくださる? その後は下がっていて大丈夫よ」
アミーは私の専属メイドだ。私はルカを応接室に案内した。
「へえ、エリーゼのところには、接客用の施設もあるのね」
「会議室まであるのよ。いつまでも仕事しろって感じだわ」
「社長さんは大変ね」
アミーがお茶を持って来て、私たちに出した後、お辞儀をしてから退室した。
「ここのメイドさんは、すごく動きが洗練されているわよね」
「まるで私やローズやカレンがダメみたいに聞こえるけど、確かに素晴らしいわ。着替えのお手伝いも、かゆいところに手が届く感じで、とてもよかったわ。勉強になるわ」
「あなたは侍女としては、びっくりするほどダメだったわよ。私だから仕方ないけど。ここのメイドさんたちは、教育が行き届いているって感じよね」
「その通りよね。執事さんの間の悪さを何度も見て、少し心配していたのだけれど、間の取り方も素晴らしいわね」
私たちは中々本題に入れずにいたが、意を決して、ルカが話し始めた。
「それで、皇帝陛下のお言葉なんだけど……」
「どうだった?」
「私に結婚して欲しいって」
「え? もうプロポーズされたの? 会ったばかりで」
「それが、陛下からすると、十年近く我慢していたらしいの。どんなに私に恋焦がれていたかを話して下さったのだけれど、押し付けがましくなくて、何て言うのかしら。そう、まるで詩のようで、とても素敵な感じなのよ。私、感動してしまったわ」
「それは、どうも。ご馳走様です」
「茶化さないで。私、諦めてもらうつもりだったのに、諦める気は全然ないみたい。困ったわ」
「どうして困るの?」
「だって、よく知らない方だし。皇帝なのよ」
「皇帝って、王と同じでしょう。君主の妻は経験済みじゃない」
「それはそうだけど、交流会とか、どういう顔して、ジョージとマリアンヌに会えばいいのよ」
「それは確かに。でも、そういうこと考えてるってことは、結婚した場合も考えたのね」
「それは、そうよ。とてもいい人みたいなの」
「皇帝陛下はジョージのことをすごく嫌っているみたいよ。ジョージを王座から引きずり下ろすことを考えているみたいだから、私もお手伝いしたいって思ってるの」
「そうなの?」
「そう。それでジョージが国王でなくなれば、交流会も問題ないじゃない」
「交流会が嫌で結婚しないわけじゃないの。私は陛下には相応しくないのよ」
「それを決めるのはルカではなく、陛下だと思うわよ」
「あなた、陛下と同じことを言うのね」
「それが正しいからよ。でも、無理して答えを今出す必要はないと思うわ。自然に答えが出るまで待って下さるのでしょう?」
「ええ」
「大人の男でよかったじゃない。それに甘えるといいと思うわ」
「エリーゼ、あなた、本当に陛下と同じことを言うのね」
「何度も言うけど、それが正しいからよ」
ルカはとりあえず心の整理ができたのか、迷いが取れた顔つきになって、自分の部屋に戻って行った。
ルカは気まずいかもしれないけど、私としては、ジョージとマリアンヌがびっくりするところを見たいと思った。だが、それよりも何よりも、そんな気まずさなんて気にならないほど、ルカには陛下と幸せになって欲しいと思う。
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