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合流した
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私は商店区の「侍女の店」に向かった。
まだ店は準備中で、一階の扉は閉まったままだが、三階の窓が開いていた。
(王妃、いるわね)
私は安心した。鍵を開けて中に入ると、三階の階段からこちらをのぞいている王妃と目が合った。
「エリーゼ!?」
王妃が階段を落ちるように降りて来て、私に抱きついた。
「成功したわよっ。案外すんなり行って、自分でもビックリよ!」
王妃は服も着替えていて、リラックス出来ていたようだ。王妃が妹みたいに可愛く感じられて、よしよししたくなる。
「王妃様、後宮は大騒ぎでした」
「エリーゼ、その王妃様ってのはやめにしない? 王妃だってバレるのもまずいし。ひょっとして自分の名前は呼びにくいのかしら?」
「そうなんです。呼ばれたら振り向きそうですし」
「じゃあ、ルカは?」
子供の頃、鏡の自分に向かってつけた名だ。ちなみに王妃と私の名前はエカテリーナだ。
「一人遊びしていた可哀想な子供だったころの黒歴史を思い出しませんか?」
「そうだけど、慣れるわよ。あと、敬語も終わりにして」
「分かりました、ではなくて、分かったわ、ルカ」
「改めてよろしくね、エリーゼ。で、これからどうするの?」
「しばらくは後宮から仕入れたものを売るつもりよ。王室ものって女子の憧れのはずなの。後宮で作られたものって、一番出来がいい超一級品を妃たちが使って、それ以外を侍女や女官が使っていて、不良品は捨てているのよ。不良品を拾って来て、再生すれば売れるわよ」
「ゴミを拾うの?」
「ゴミといっても、デザインや形は悪くないのよ。処分に困っているから、回収に行けば喜んで渡してくれるわ」
「でも、外に出す許可をくれるかしら」
「マリアンヌから許可を取るわよ。ゴミを外に捨てるよって言うわ」
「あはは、嘘は言ってないね」
「マリアンヌとはしばらく縁を切らないでおくわ。王妃の私を追い詰めた真犯人はジョージだし、マリアンヌはなんだかんだ言ってエリーゼの妹なのよ。マリアンヌに何かあると、私にも少なからず被害が出るのよ」
「いいわよ。私はまだあまり実害受けてないから」
「ただ、私は酷い目にあったから、いつかはお仕置きするけどね。今は利用価値があるってだけ。あと、後宮の製糸工場は私が管理するわ。カイゼンして、生産効率を上げて、原価を下げるわ。その上で、後宮からの直接販売はやめて、私たち経由でしか売れなくするの」
「独占代理店契約を結ぶのね」
「そうよ。資金はルカが持って来た宝石類を売って調達するわ」
「後宮が商売相手になって、私は王妃だってことが、いつかバレないかしら?」
「出来るだけ表には出てこないで。人を何人か雇って、裏から操作するの。表に出るときは顔に仮面をしてくれる? 実はそういうの、憧れてたのよ」
「え? 私は憧れてないけど……」
「ああ、前世の私がね。膝に猫を乗っけて、猫を撫でながら、色々と部下に指図するのに憧れていたのよ」
「あなた、猫を克服したのっ!?」
「だから、前世の私よ。ちょっと変な人みたいなの。気にしないで。はい、これ、仮面ね」
私はオペラ座の怪人で使うような仮面をルカに渡した。
「あら? 何だか面白そうね」
ルカはさっそく仮面をつけた。なかなか似合っている。
「思った以上に素敵よ。鏡見てみて」
私はルカに手鏡を見せた。
「いいわね、これ。おーほほほほ」
(案外乗りやすいわね、昔の私……)
さあ、忙しくなるわよ。
まだ店は準備中で、一階の扉は閉まったままだが、三階の窓が開いていた。
(王妃、いるわね)
私は安心した。鍵を開けて中に入ると、三階の階段からこちらをのぞいている王妃と目が合った。
「エリーゼ!?」
王妃が階段を落ちるように降りて来て、私に抱きついた。
「成功したわよっ。案外すんなり行って、自分でもビックリよ!」
王妃は服も着替えていて、リラックス出来ていたようだ。王妃が妹みたいに可愛く感じられて、よしよししたくなる。
「王妃様、後宮は大騒ぎでした」
「エリーゼ、その王妃様ってのはやめにしない? 王妃だってバレるのもまずいし。ひょっとして自分の名前は呼びにくいのかしら?」
「そうなんです。呼ばれたら振り向きそうですし」
「じゃあ、ルカは?」
子供の頃、鏡の自分に向かってつけた名だ。ちなみに王妃と私の名前はエカテリーナだ。
「一人遊びしていた可哀想な子供だったころの黒歴史を思い出しませんか?」
「そうだけど、慣れるわよ。あと、敬語も終わりにして」
「分かりました、ではなくて、分かったわ、ルカ」
「改めてよろしくね、エリーゼ。で、これからどうするの?」
「しばらくは後宮から仕入れたものを売るつもりよ。王室ものって女子の憧れのはずなの。後宮で作られたものって、一番出来がいい超一級品を妃たちが使って、それ以外を侍女や女官が使っていて、不良品は捨てているのよ。不良品を拾って来て、再生すれば売れるわよ」
「ゴミを拾うの?」
「ゴミといっても、デザインや形は悪くないのよ。処分に困っているから、回収に行けば喜んで渡してくれるわ」
「でも、外に出す許可をくれるかしら」
「マリアンヌから許可を取るわよ。ゴミを外に捨てるよって言うわ」
「あはは、嘘は言ってないね」
「マリアンヌとはしばらく縁を切らないでおくわ。王妃の私を追い詰めた真犯人はジョージだし、マリアンヌはなんだかんだ言ってエリーゼの妹なのよ。マリアンヌに何かあると、私にも少なからず被害が出るのよ」
「いいわよ。私はまだあまり実害受けてないから」
「ただ、私は酷い目にあったから、いつかはお仕置きするけどね。今は利用価値があるってだけ。あと、後宮の製糸工場は私が管理するわ。カイゼンして、生産効率を上げて、原価を下げるわ。その上で、後宮からの直接販売はやめて、私たち経由でしか売れなくするの」
「独占代理店契約を結ぶのね」
「そうよ。資金はルカが持って来た宝石類を売って調達するわ」
「後宮が商売相手になって、私は王妃だってことが、いつかバレないかしら?」
「出来るだけ表には出てこないで。人を何人か雇って、裏から操作するの。表に出るときは顔に仮面をしてくれる? 実はそういうの、憧れてたのよ」
「え? 私は憧れてないけど……」
「ああ、前世の私がね。膝に猫を乗っけて、猫を撫でながら、色々と部下に指図するのに憧れていたのよ」
「あなた、猫を克服したのっ!?」
「だから、前世の私よ。ちょっと変な人みたいなの。気にしないで。はい、これ、仮面ね」
私はオペラ座の怪人で使うような仮面をルカに渡した。
「あら? 何だか面白そうね」
ルカはさっそく仮面をつけた。なかなか似合っている。
「思った以上に素敵よ。鏡見てみて」
私はルカに手鏡を見せた。
「いいわね、これ。おーほほほほ」
(案外乗りやすいわね、昔の私……)
さあ、忙しくなるわよ。
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