4 / 4
竪穴からの脱出
しおりを挟む
壁を登りながら考えた。
どうやら、俺は、サイレスと聖女たちにぶち込まれた魔法を蓄えていて、それを放出することができたらしい。
風はお尻、火は口、水はおまた、雷は全身から出すことができた。
他の魔法も食らっていたような気がするが、溜まっている感がないため、放出するレベルに達していないかもしれない。
ロッククライミングは初めてだが、体重が軽いせいか、すいすいと登れてしまう。疲れもしないし、全く滑らないため、オリンピックで金メダルが取れるかもと思った。
などと考えているうちに、壁を登り切った。
穴の出口に到達してみたら、森の中ではなく、木と草で出来た巨大なふたで穴が覆いかぶされていた。
ちょっと押しただけではびくともしない。
(しまったな。火魔法が残っていたら、燃やせたかもしれないのに)
そう思ったが、後の祭りだ。
穴の直径は20メートルぐらいある。どこかに抜け穴がないかとふたの円周を見回してみたが、どこにも隙間がなかった。
(まじか。いつかふたが開くのを待つしかないってことか?)
このまま壁に何時間も張り付いていることになるが、いろいろと落ち着いて考えるのにいい時間だと思うことにした。
この世界がどんなところかわからないが、骸骨が動いていること自体には驚かれなかったので、ファンタジーな世界なのだろう。
自分の体がどうなってしまったのかさっぱりわからないが、とにかくサーシャにもう一度憑依したいという気持ちが強い。
あんなに心地いい感覚は初めてだった。サーシャはどう感じたのだろうか。
そこまで考えて、ふと思った。妻以外の女性に興味を持つのは結婚して以来初めてのことだ。
こちらの世界に来てから、前の世界の妻のことが気になってはいるが、どうしようもない。子供も大きくなって、妻とはすっかり家族になってしまっていたため、懐かしくは思うが、会いたくて仕方がないといった感情は湧かなかった。
妻の実家は大金持ちなので、生活には困らないだろう。子供ももう中学生だし、親父がいなくてもやって行けるだろう。
妻とはずっとセックスレスだった。アラフォーのおっさんではあるが、この世界で新しい恋をしても罰は当たらないだろう。サーシャの顔が頭に浮かんできたが、自分がスケルトンであることを忘れていた。
(骸骨ではさすがに恋は無理だな。憑依させてくれるだけで十分と考えるしかないか)
そんなことを思いながら、穴の入り口付近の壁に張り付いて何日か過ごした。
そして、遂に変化がおとずれた。
多くの人たちの足音や話声が近づいて来たのだ。じっと息をひそめていると、ふたがゆっくりと上昇し始めた。
隙間が出来たので、俺はすぐに外にはい出した。
次の瞬間、光輝く物体が俺に激突し、俺の骸骨は穴の中に戻されてしまった。
だが、俺は、俺の意識体とでもいうべきものは、穴から外に出たままの状態だった。
(俺って、一体何ものなの?)
そんな考えがふっと頭をよぎったが、光る球が次から次へと俺に向かって来た。当たるとものすごく痛くて、我慢できずに大声で喚き散らしたつもりだが、声は出なかった。
飛ばされることもなく、何発も光をぶつけられる。まばゆいばかりの光が散乱する中、光が飛んでくる方向を見ると、10メートルほど先に銀色の鎧に身を包んだ騎士のような恰好をした軍団がいた。白いライフル銃のようなものを構えて、俺に向けて銃口から白い光を放出していた。
戦国時代の鉄砲隊のように5人一組で何列かになり、光を放った列が最後尾に回り、次の列が前に出て光を一斉発射することで連射してくるのだ。
逃げたいのだが、動き方がよくわからず、ずっと的になり続けるしかなかった。
今回は気絶することができず、数分間打たれっぱなしで、ずっと耐えるしかなかったのだが、ようやく攻撃が終わるときが来た。
「打ち方やめっ」
鉄砲隊の後方にいる一人だけ赤い軍服のようなものを着た人物の声だった。
ヘルメットと仮面をしていて正体不明だが、あの体の曲線は絶対に女だ。形のいい鼻と口をしている。
(うう、気持ち悪い。吐きそう……)
俺は突然気分が悪くなり、盛大に吐いた。正確には吐いたような気分になった。
『スキル「光魔法」を会得しました』
(吐くと光魔法なんだ……)
超新星爆発のような光の嵐が、俺を中心に巻き起こった。周りにいた数十人もの人間が、一瞬で灰になってしまった。
どうやら、俺は、サイレスと聖女たちにぶち込まれた魔法を蓄えていて、それを放出することができたらしい。
風はお尻、火は口、水はおまた、雷は全身から出すことができた。
他の魔法も食らっていたような気がするが、溜まっている感がないため、放出するレベルに達していないかもしれない。
ロッククライミングは初めてだが、体重が軽いせいか、すいすいと登れてしまう。疲れもしないし、全く滑らないため、オリンピックで金メダルが取れるかもと思った。
などと考えているうちに、壁を登り切った。
穴の出口に到達してみたら、森の中ではなく、木と草で出来た巨大なふたで穴が覆いかぶされていた。
ちょっと押しただけではびくともしない。
(しまったな。火魔法が残っていたら、燃やせたかもしれないのに)
そう思ったが、後の祭りだ。
穴の直径は20メートルぐらいある。どこかに抜け穴がないかとふたの円周を見回してみたが、どこにも隙間がなかった。
(まじか。いつかふたが開くのを待つしかないってことか?)
このまま壁に何時間も張り付いていることになるが、いろいろと落ち着いて考えるのにいい時間だと思うことにした。
この世界がどんなところかわからないが、骸骨が動いていること自体には驚かれなかったので、ファンタジーな世界なのだろう。
自分の体がどうなってしまったのかさっぱりわからないが、とにかくサーシャにもう一度憑依したいという気持ちが強い。
あんなに心地いい感覚は初めてだった。サーシャはどう感じたのだろうか。
そこまで考えて、ふと思った。妻以外の女性に興味を持つのは結婚して以来初めてのことだ。
こちらの世界に来てから、前の世界の妻のことが気になってはいるが、どうしようもない。子供も大きくなって、妻とはすっかり家族になってしまっていたため、懐かしくは思うが、会いたくて仕方がないといった感情は湧かなかった。
妻の実家は大金持ちなので、生活には困らないだろう。子供ももう中学生だし、親父がいなくてもやって行けるだろう。
妻とはずっとセックスレスだった。アラフォーのおっさんではあるが、この世界で新しい恋をしても罰は当たらないだろう。サーシャの顔が頭に浮かんできたが、自分がスケルトンであることを忘れていた。
(骸骨ではさすがに恋は無理だな。憑依させてくれるだけで十分と考えるしかないか)
そんなことを思いながら、穴の入り口付近の壁に張り付いて何日か過ごした。
そして、遂に変化がおとずれた。
多くの人たちの足音や話声が近づいて来たのだ。じっと息をひそめていると、ふたがゆっくりと上昇し始めた。
隙間が出来たので、俺はすぐに外にはい出した。
次の瞬間、光輝く物体が俺に激突し、俺の骸骨は穴の中に戻されてしまった。
だが、俺は、俺の意識体とでもいうべきものは、穴から外に出たままの状態だった。
(俺って、一体何ものなの?)
そんな考えがふっと頭をよぎったが、光る球が次から次へと俺に向かって来た。当たるとものすごく痛くて、我慢できずに大声で喚き散らしたつもりだが、声は出なかった。
飛ばされることもなく、何発も光をぶつけられる。まばゆいばかりの光が散乱する中、光が飛んでくる方向を見ると、10メートルほど先に銀色の鎧に身を包んだ騎士のような恰好をした軍団がいた。白いライフル銃のようなものを構えて、俺に向けて銃口から白い光を放出していた。
戦国時代の鉄砲隊のように5人一組で何列かになり、光を放った列が最後尾に回り、次の列が前に出て光を一斉発射することで連射してくるのだ。
逃げたいのだが、動き方がよくわからず、ずっと的になり続けるしかなかった。
今回は気絶することができず、数分間打たれっぱなしで、ずっと耐えるしかなかったのだが、ようやく攻撃が終わるときが来た。
「打ち方やめっ」
鉄砲隊の後方にいる一人だけ赤い軍服のようなものを着た人物の声だった。
ヘルメットと仮面をしていて正体不明だが、あの体の曲線は絶対に女だ。形のいい鼻と口をしている。
(うう、気持ち悪い。吐きそう……)
俺は突然気分が悪くなり、盛大に吐いた。正確には吐いたような気分になった。
『スキル「光魔法」を会得しました』
(吐くと光魔法なんだ……)
超新星爆発のような光の嵐が、俺を中心に巻き起こった。周りにいた数十人もの人間が、一瞬で灰になってしまった。
0
お気に入りに追加
9
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。
SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。
サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる