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竪穴からの脱出
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壁を登りながら考えた。
どうやら、俺は、サイレスと聖女たちにぶち込まれた魔法を蓄えていて、それを放出することができたらしい。
風はお尻、火は口、水はおまた、雷は全身から出すことができた。
他の魔法も食らっていたような気がするが、溜まっている感がないため、放出するレベルに達していないかもしれない。
ロッククライミングは初めてだが、体重が軽いせいか、すいすいと登れてしまう。疲れもしないし、全く滑らないため、オリンピックで金メダルが取れるかもと思った。
などと考えているうちに、壁を登り切った。
穴の出口に到達してみたら、森の中ではなく、木と草で出来た巨大なふたで穴が覆いかぶされていた。
ちょっと押しただけではびくともしない。
(しまったな。火魔法が残っていたら、燃やせたかもしれないのに)
そう思ったが、後の祭りだ。
穴の直径は20メートルぐらいある。どこかに抜け穴がないかとふたの円周を見回してみたが、どこにも隙間がなかった。
(まじか。いつかふたが開くのを待つしかないってことか?)
このまま壁に何時間も張り付いていることになるが、いろいろと落ち着いて考えるのにいい時間だと思うことにした。
この世界がどんなところかわからないが、骸骨が動いていること自体には驚かれなかったので、ファンタジーな世界なのだろう。
自分の体がどうなってしまったのかさっぱりわからないが、とにかくサーシャにもう一度憑依したいという気持ちが強い。
あんなに心地いい感覚は初めてだった。サーシャはどう感じたのだろうか。
そこまで考えて、ふと思った。妻以外の女性に興味を持つのは結婚して以来初めてのことだ。
こちらの世界に来てから、前の世界の妻のことが気になってはいるが、どうしようもない。子供も大きくなって、妻とはすっかり家族になってしまっていたため、懐かしくは思うが、会いたくて仕方がないといった感情は湧かなかった。
妻の実家は大金持ちなので、生活には困らないだろう。子供ももう中学生だし、親父がいなくてもやって行けるだろう。
妻とはずっとセックスレスだった。アラフォーのおっさんではあるが、この世界で新しい恋をしても罰は当たらないだろう。サーシャの顔が頭に浮かんできたが、自分がスケルトンであることを忘れていた。
(骸骨ではさすがに恋は無理だな。憑依させてくれるだけで十分と考えるしかないか)
そんなことを思いながら、穴の入り口付近の壁に張り付いて何日か過ごした。
そして、遂に変化がおとずれた。
多くの人たちの足音や話声が近づいて来たのだ。じっと息をひそめていると、ふたがゆっくりと上昇し始めた。
隙間が出来たので、俺はすぐに外にはい出した。
次の瞬間、光輝く物体が俺に激突し、俺の骸骨は穴の中に戻されてしまった。
だが、俺は、俺の意識体とでもいうべきものは、穴から外に出たままの状態だった。
(俺って、一体何ものなの?)
そんな考えがふっと頭をよぎったが、光る球が次から次へと俺に向かって来た。当たるとものすごく痛くて、我慢できずに大声で喚き散らしたつもりだが、声は出なかった。
飛ばされることもなく、何発も光をぶつけられる。まばゆいばかりの光が散乱する中、光が飛んでくる方向を見ると、10メートルほど先に銀色の鎧に身を包んだ騎士のような恰好をした軍団がいた。白いライフル銃のようなものを構えて、俺に向けて銃口から白い光を放出していた。
戦国時代の鉄砲隊のように5人一組で何列かになり、光を放った列が最後尾に回り、次の列が前に出て光を一斉発射することで連射してくるのだ。
逃げたいのだが、動き方がよくわからず、ずっと的になり続けるしかなかった。
今回は気絶することができず、数分間打たれっぱなしで、ずっと耐えるしかなかったのだが、ようやく攻撃が終わるときが来た。
「打ち方やめっ」
鉄砲隊の後方にいる一人だけ赤い軍服のようなものを着た人物の声だった。
ヘルメットと仮面をしていて正体不明だが、あの体の曲線は絶対に女だ。形のいい鼻と口をしている。
(うう、気持ち悪い。吐きそう……)
俺は突然気分が悪くなり、盛大に吐いた。正確には吐いたような気分になった。
『スキル「光魔法」を会得しました』
(吐くと光魔法なんだ……)
超新星爆発のような光の嵐が、俺を中心に巻き起こった。周りにいた数十人もの人間が、一瞬で灰になってしまった。
どうやら、俺は、サイレスと聖女たちにぶち込まれた魔法を蓄えていて、それを放出することができたらしい。
風はお尻、火は口、水はおまた、雷は全身から出すことができた。
他の魔法も食らっていたような気がするが、溜まっている感がないため、放出するレベルに達していないかもしれない。
ロッククライミングは初めてだが、体重が軽いせいか、すいすいと登れてしまう。疲れもしないし、全く滑らないため、オリンピックで金メダルが取れるかもと思った。
などと考えているうちに、壁を登り切った。
穴の出口に到達してみたら、森の中ではなく、木と草で出来た巨大なふたで穴が覆いかぶされていた。
ちょっと押しただけではびくともしない。
(しまったな。火魔法が残っていたら、燃やせたかもしれないのに)
そう思ったが、後の祭りだ。
穴の直径は20メートルぐらいある。どこかに抜け穴がないかとふたの円周を見回してみたが、どこにも隙間がなかった。
(まじか。いつかふたが開くのを待つしかないってことか?)
このまま壁に何時間も張り付いていることになるが、いろいろと落ち着いて考えるのにいい時間だと思うことにした。
この世界がどんなところかわからないが、骸骨が動いていること自体には驚かれなかったので、ファンタジーな世界なのだろう。
自分の体がどうなってしまったのかさっぱりわからないが、とにかくサーシャにもう一度憑依したいという気持ちが強い。
あんなに心地いい感覚は初めてだった。サーシャはどう感じたのだろうか。
そこまで考えて、ふと思った。妻以外の女性に興味を持つのは結婚して以来初めてのことだ。
こちらの世界に来てから、前の世界の妻のことが気になってはいるが、どうしようもない。子供も大きくなって、妻とはすっかり家族になってしまっていたため、懐かしくは思うが、会いたくて仕方がないといった感情は湧かなかった。
妻の実家は大金持ちなので、生活には困らないだろう。子供ももう中学生だし、親父がいなくてもやって行けるだろう。
妻とはずっとセックスレスだった。アラフォーのおっさんではあるが、この世界で新しい恋をしても罰は当たらないだろう。サーシャの顔が頭に浮かんできたが、自分がスケルトンであることを忘れていた。
(骸骨ではさすがに恋は無理だな。憑依させてくれるだけで十分と考えるしかないか)
そんなことを思いながら、穴の入り口付近の壁に張り付いて何日か過ごした。
そして、遂に変化がおとずれた。
多くの人たちの足音や話声が近づいて来たのだ。じっと息をひそめていると、ふたがゆっくりと上昇し始めた。
隙間が出来たので、俺はすぐに外にはい出した。
次の瞬間、光輝く物体が俺に激突し、俺の骸骨は穴の中に戻されてしまった。
だが、俺は、俺の意識体とでもいうべきものは、穴から外に出たままの状態だった。
(俺って、一体何ものなの?)
そんな考えがふっと頭をよぎったが、光る球が次から次へと俺に向かって来た。当たるとものすごく痛くて、我慢できずに大声で喚き散らしたつもりだが、声は出なかった。
飛ばされることもなく、何発も光をぶつけられる。まばゆいばかりの光が散乱する中、光が飛んでくる方向を見ると、10メートルほど先に銀色の鎧に身を包んだ騎士のような恰好をした軍団がいた。白いライフル銃のようなものを構えて、俺に向けて銃口から白い光を放出していた。
戦国時代の鉄砲隊のように5人一組で何列かになり、光を放った列が最後尾に回り、次の列が前に出て光を一斉発射することで連射してくるのだ。
逃げたいのだが、動き方がよくわからず、ずっと的になり続けるしかなかった。
今回は気絶することができず、数分間打たれっぱなしで、ずっと耐えるしかなかったのだが、ようやく攻撃が終わるときが来た。
「打ち方やめっ」
鉄砲隊の後方にいる一人だけ赤い軍服のようなものを着た人物の声だった。
ヘルメットと仮面をしていて正体不明だが、あの体の曲線は絶対に女だ。形のいい鼻と口をしている。
(うう、気持ち悪い。吐きそう……)
俺は突然気分が悪くなり、盛大に吐いた。正確には吐いたような気分になった。
『スキル「光魔法」を会得しました』
(吐くと光魔法なんだ……)
超新星爆発のような光の嵐が、俺を中心に巻き起こった。周りにいた数十人もの人間が、一瞬で灰になってしまった。
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