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クラウス
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シルフィの失踪につづき、ミランダが行方不明となり、王位継承権第三位のクラウスに王位を継ぐ芽が出てきた。
(こうなってくると、プリシラの悪巧みに手など貸さなければよかったな)
クラウスは一言でいうと、やさぐれていた。
王室に生まれたものの、ずっと脇役の人生を送る運命を受け止められなかったのだ。
クラウスはミランダより二ヶ月後に産まれた。兄が一人いたが夭折している。
たった二ヶ月の差で、王に子供ができない間は王位継承権第二位だった。
そして、シルフィが生まれ、第三位となった。
王国の王位継承権は王の長男が第一位、それ以外は、王の姪、甥の年齢順となっていた。
シルフィとミランダには、魔法でも継承権でも敵わなかったので、クラウスはすっかり諦めて、不貞腐れていたのだった。
(あいつらが自由に生きたいのであれば、自由に生きればいいのだ。敵対するのはまずい。ちょっかいさえ出さなければ、王位にも俺にも興味は持たないはずだ)
書斎であれこれ考えていたクラウスの前に執事が現れた。
少し様子がおかしい。
「クラウス様、モノクロ様をご案内致しました」
「セバス、お前、操られているじゃないか」
クラウスはすぐにセバスチャンにかけられている催眠効果を中和させた。
「クラウス様、私は何を……?」
「誰に会った? モノクロって何だ?」
「あ、あ、あ、……クラウス様、モノクロ様をご案内致しました」
(何だと!? 催眠効果が再燃しているっ!?)
驚くべき魔法だ。
こんな魔法を使う魔法使いは、ミランダかシルフィだけだ。
「「モノクロ参上!」」
書斎の入り口に白の女と黒の少年が横を向いて立っていた。
「ミランダ! と、シルフィか?」
「ち、違うわよ、私はシロよっ」
「人違いだ。俺はクロだ」
いくら何でも無理があるのだが、ミランダとシルフィはモノクロで通すつもりでいた。
「何の真似だ? 変な格好をして、覆面をしている以外は、ミランダは口調を変えているだけだし、シルフィは声を低くしているだけじゃないか」
「変な格好だと? シロ、こいつ黙らせた方がいい」
「そうね、クロ。知らない人の名前を出されちゃって、嫌になっちゃうわ」
クラウスは素早く計算した。
どういう茶番なのか分からないが、調子を合わせた方がいい。
「わ、悪かった。私の勘違いだ。知り合いによく似ていると思ったら、全くの人違いだった」
「む? いい態度だ。錯乱でもしたのかと思ったぞ。どうだ? 格好いいだろう?」
「うん、格好いいと思う」
クラウスは棒読みした。
「クラウス様、どうなさったのですか!? 操られてしまっているのですかっ」
セバスチャンはそう言ったまま眠ってしまった。
モノクロだけではなく、クラウスからもスリープをかけられたのだ。
「執事の教育がなっていないわね」
「済まない。で、モノクロ殿、用件を聞かせて欲しい」
「クラウス、あなた、プリシラに手を貸して、子供たちを酷い目に合わせているらしいわね」
「その件か。非常に後悔している。すぐに償いたいが、何をすればいい?」
「あら? 素直ね。どうしちゃったのかしら?」
「ミラ、いや、シロさん? でいいのか?」
「シロでいいわよ」
「シロ、俺には優秀な従姉弟がいてな。彼女や彼と比べて、自分があまりにも平凡なので、彼女たちに嫉妬して、嫌がらせをしてしまったのだ。でも、そうではなく、彼女たちの助けになるようなことをすべきだったのだ」
「シロ、クラウス兄は随分と物分かりが良くなったんじゃないか?」
「クロ、クラウスでしょ。兄は余計よ」
「そうだった。オホン。クラウスは随分と物分かりが良くなったんじゃないか?」
「そうね。クラウス、あなたの従姉弟たちをどう助けるの? 聞かせてくれる?」
この茶番はいつまで続くのかとクラウスは一瞬思ったが、むしろいい機会かもしれない。
「あ、ああ。彼女たちは失踪中なのだが、恐らく王室の生活が窮屈なのだろう。そこでだ。私が王を継いで、彼女たちを自由にすることが、助けになるように思うんだ。彼女たちの生活に干渉せず、しかし、彼女たちの意見をよく聞いて、国政に取り入れようと思う」
「シロ、クラウス兄は無茶苦茶いいことを言う」
「クロ、こんなところに救世主がいるとはな」
「シロ、女言葉で話してくれ」
「あら? つい興奮してしまったわ。クロも兄は余計だからね」
「クラウス、非常にいい案だと思うが、きっと従姉弟たちは、お前に善政が出来るかどうか心配していると思うぞ。今回の子供たちへの仕打ちは許し難いものだ」
「今回の件は償えるだけ償う。今後の施策については見ていて欲しい。私は政治をしたいのに、出来ない境遇に反発していただけだ。政治ができるのであれば、どうせやるなら、善政を行いたい」
「クラウス、分かったわ。お前がどういう政治を行うのか、見せてもらうわ。私たちがダメだと思ったら、短い人生になっちゃうからね」
「心得ている」
「シロ、あとはプリシラだな」
「そうね。クラウス、プリシラは操ってないの?」
「プリシラさんは魔法使いだ。操れない」
「それは初耳だぞ」
「シル、いや、クロ。プリシラさんと姉のステーシア叔母様は、王国女学園では有名なウィッチー姉妹だったぞ」
「それも初耳だ」
「私もよ」
(こうなってくると、プリシラの悪巧みに手など貸さなければよかったな)
クラウスは一言でいうと、やさぐれていた。
王室に生まれたものの、ずっと脇役の人生を送る運命を受け止められなかったのだ。
クラウスはミランダより二ヶ月後に産まれた。兄が一人いたが夭折している。
たった二ヶ月の差で、王に子供ができない間は王位継承権第二位だった。
そして、シルフィが生まれ、第三位となった。
王国の王位継承権は王の長男が第一位、それ以外は、王の姪、甥の年齢順となっていた。
シルフィとミランダには、魔法でも継承権でも敵わなかったので、クラウスはすっかり諦めて、不貞腐れていたのだった。
(あいつらが自由に生きたいのであれば、自由に生きればいいのだ。敵対するのはまずい。ちょっかいさえ出さなければ、王位にも俺にも興味は持たないはずだ)
書斎であれこれ考えていたクラウスの前に執事が現れた。
少し様子がおかしい。
「クラウス様、モノクロ様をご案内致しました」
「セバス、お前、操られているじゃないか」
クラウスはすぐにセバスチャンにかけられている催眠効果を中和させた。
「クラウス様、私は何を……?」
「誰に会った? モノクロって何だ?」
「あ、あ、あ、……クラウス様、モノクロ様をご案内致しました」
(何だと!? 催眠効果が再燃しているっ!?)
驚くべき魔法だ。
こんな魔法を使う魔法使いは、ミランダかシルフィだけだ。
「「モノクロ参上!」」
書斎の入り口に白の女と黒の少年が横を向いて立っていた。
「ミランダ! と、シルフィか?」
「ち、違うわよ、私はシロよっ」
「人違いだ。俺はクロだ」
いくら何でも無理があるのだが、ミランダとシルフィはモノクロで通すつもりでいた。
「何の真似だ? 変な格好をして、覆面をしている以外は、ミランダは口調を変えているだけだし、シルフィは声を低くしているだけじゃないか」
「変な格好だと? シロ、こいつ黙らせた方がいい」
「そうね、クロ。知らない人の名前を出されちゃって、嫌になっちゃうわ」
クラウスは素早く計算した。
どういう茶番なのか分からないが、調子を合わせた方がいい。
「わ、悪かった。私の勘違いだ。知り合いによく似ていると思ったら、全くの人違いだった」
「む? いい態度だ。錯乱でもしたのかと思ったぞ。どうだ? 格好いいだろう?」
「うん、格好いいと思う」
クラウスは棒読みした。
「クラウス様、どうなさったのですか!? 操られてしまっているのですかっ」
セバスチャンはそう言ったまま眠ってしまった。
モノクロだけではなく、クラウスからもスリープをかけられたのだ。
「執事の教育がなっていないわね」
「済まない。で、モノクロ殿、用件を聞かせて欲しい」
「クラウス、あなた、プリシラに手を貸して、子供たちを酷い目に合わせているらしいわね」
「その件か。非常に後悔している。すぐに償いたいが、何をすればいい?」
「あら? 素直ね。どうしちゃったのかしら?」
「ミラ、いや、シロさん? でいいのか?」
「シロでいいわよ」
「シロ、俺には優秀な従姉弟がいてな。彼女や彼と比べて、自分があまりにも平凡なので、彼女たちに嫉妬して、嫌がらせをしてしまったのだ。でも、そうではなく、彼女たちの助けになるようなことをすべきだったのだ」
「シロ、クラウス兄は随分と物分かりが良くなったんじゃないか?」
「クロ、クラウスでしょ。兄は余計よ」
「そうだった。オホン。クラウスは随分と物分かりが良くなったんじゃないか?」
「そうね。クラウス、あなたの従姉弟たちをどう助けるの? 聞かせてくれる?」
この茶番はいつまで続くのかとクラウスは一瞬思ったが、むしろいい機会かもしれない。
「あ、ああ。彼女たちは失踪中なのだが、恐らく王室の生活が窮屈なのだろう。そこでだ。私が王を継いで、彼女たちを自由にすることが、助けになるように思うんだ。彼女たちの生活に干渉せず、しかし、彼女たちの意見をよく聞いて、国政に取り入れようと思う」
「シロ、クラウス兄は無茶苦茶いいことを言う」
「クロ、こんなところに救世主がいるとはな」
「シロ、女言葉で話してくれ」
「あら? つい興奮してしまったわ。クロも兄は余計だからね」
「クラウス、非常にいい案だと思うが、きっと従姉弟たちは、お前に善政が出来るかどうか心配していると思うぞ。今回の子供たちへの仕打ちは許し難いものだ」
「今回の件は償えるだけ償う。今後の施策については見ていて欲しい。私は政治をしたいのに、出来ない境遇に反発していただけだ。政治ができるのであれば、どうせやるなら、善政を行いたい」
「クラウス、分かったわ。お前がどういう政治を行うのか、見せてもらうわ。私たちがダメだと思ったら、短い人生になっちゃうからね」
「心得ている」
「シロ、あとはプリシラだな」
「そうね。クラウス、プリシラは操ってないの?」
「プリシラさんは魔法使いだ。操れない」
「それは初耳だぞ」
「シル、いや、クロ。プリシラさんと姉のステーシア叔母様は、王国女学園では有名なウィッチー姉妹だったぞ」
「それも初耳だ」
「私もよ」
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