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子供寮
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前回子供寮に来たときにはイライザがいたので隠れていたのだろう。
子供寮のフロントには人相の悪い管理人の男がいた。
管理人が訝しそうな目を俺たちに向け、カインに話しかけて来た。
「カイン、新入りか? そっちの女は未成年には見えないが……、娼館のマダムか……?」
男はそう言ったまま白目をむいて、カウンターに突っ伏した。
シロがエレキテルを放ったようだ。
「こんなに若くて綺麗で上品な娼館マダムがいるはずないでしょう。カイン、あれは何?」
「レイン子爵様から派遣してもらっている傭兵の一人です。フロントの後ろの部屋にも数名詰めているはずです」
カインの説明通りだった。
フロントでの物音に反応して、ゾロゾロと男たちが出て来たが、次々に白目をむいて倒れていった。
「ほかにも悪事に加担しているおバカはいるのかしら?」
「従業員としては、ほかに調理人が数名おりますが、今の魔法は何という魔法なのでしょうか?」
「何? あなたもかけて欲しいの?」
「いえ、申し訳ございません。不要な発言は慎みます」
「余計なお喋りしている暇があったら、まずは清掃員を手配しろよ。せっかく王妃様が手配された寮がゴミだらけだろうが」
「はい、すぐに手配致します」
「調理人はどこにいるの?」
「一階の奥です」
カインはそう言って、俺が以前に案内された方とは反対側の方に進んで行った。
「子供は何人いるの?」
「六歳から十五歳まで、全部で二百五十名ほどです。女の子が八割です」
「女の子の方が高く売れるからかしら?」
「その通りです」
「シロ、やはりこいつは殺そう」
「ま、待ってください。レイン様の指示でそうしていただけです」
「プリシラがそんな細かいことまで関与するとは思えないから、レインの指示でしょうね。後でもう一度、彼の脳を揺らしておきましょう」
調理場はちょうど夕食の仕込みを行っているらしく、数名の調理人が忙しく作業をしていた。
こちらに気づいても軽く会釈するだけで、手を止めることはない。
「この人たちは善良なのかしら?」
「善良かどうかは分かりかねますが、寮で行われていることは知らされておりません。子供との接触は禁止しています」
「配膳はどうしているの?」
「子供たち自身で行います」
スープは巨大な寸胴二つに作られていた。
パンも袋にぎっしと詰まっていた。
今日は何かのフライのようで、大きなフライヤーが三つ、盛大に泡立っていた。
「食事環境はいいのね?」
「はい、栄養面には十分に気をつけて、健康管理はしっかりと行なっています。看護士は病院勤めの子供たちが担当しています」
「病院って、子供が働いているの?」
「ええ、十二歳から勤務可能ですが……」
カインが、知らないのですか、と言う目をシロに向けていた。
シロが世間知らずのお嬢様だってバレたな、これは。
独り立ち支援制度は、孤児や家庭環境のよくない子供たちが犯罪に走らないようにする目的もある。
腹一杯食べられれば、人は余裕が出て、悪の道には進まないものだ。
「食事は合格のようだな。子供たちが給仕当番というのもいい。一部は働きに出ているのか?」
「はい、専門技術を身につけさせるためです」
「その方が高く売れるからか?」
「そ、そうですが、就きたい職業に就かせていますっ。売られると分かってしまうと精神的に病んでしまいますし、やりたくないことをさせるのもストレスが溜まりますから」
カインが言い訳に必死だ。
「ふん。商品として磨くためだろうが。ここでは楽しい思いをするが、突然、奴隷か娼婦として売られるわけか。まさに天国から地獄だな」
「でも、逆に言えば、身売りをやめれば、今の運営でも掃除以外は問題ないってことじゃない?」
確かにそう言えるが……。
「カインからの一方的な説明だけでは判断できないな。子供からも話を聞こう」
俺たちは子供たちと一緒に夕食を取ることにした。
子供寮のフロントには人相の悪い管理人の男がいた。
管理人が訝しそうな目を俺たちに向け、カインに話しかけて来た。
「カイン、新入りか? そっちの女は未成年には見えないが……、娼館のマダムか……?」
男はそう言ったまま白目をむいて、カウンターに突っ伏した。
シロがエレキテルを放ったようだ。
「こんなに若くて綺麗で上品な娼館マダムがいるはずないでしょう。カイン、あれは何?」
「レイン子爵様から派遣してもらっている傭兵の一人です。フロントの後ろの部屋にも数名詰めているはずです」
カインの説明通りだった。
フロントでの物音に反応して、ゾロゾロと男たちが出て来たが、次々に白目をむいて倒れていった。
「ほかにも悪事に加担しているおバカはいるのかしら?」
「従業員としては、ほかに調理人が数名おりますが、今の魔法は何という魔法なのでしょうか?」
「何? あなたもかけて欲しいの?」
「いえ、申し訳ございません。不要な発言は慎みます」
「余計なお喋りしている暇があったら、まずは清掃員を手配しろよ。せっかく王妃様が手配された寮がゴミだらけだろうが」
「はい、すぐに手配致します」
「調理人はどこにいるの?」
「一階の奥です」
カインはそう言って、俺が以前に案内された方とは反対側の方に進んで行った。
「子供は何人いるの?」
「六歳から十五歳まで、全部で二百五十名ほどです。女の子が八割です」
「女の子の方が高く売れるからかしら?」
「その通りです」
「シロ、やはりこいつは殺そう」
「ま、待ってください。レイン様の指示でそうしていただけです」
「プリシラがそんな細かいことまで関与するとは思えないから、レインの指示でしょうね。後でもう一度、彼の脳を揺らしておきましょう」
調理場はちょうど夕食の仕込みを行っているらしく、数名の調理人が忙しく作業をしていた。
こちらに気づいても軽く会釈するだけで、手を止めることはない。
「この人たちは善良なのかしら?」
「善良かどうかは分かりかねますが、寮で行われていることは知らされておりません。子供との接触は禁止しています」
「配膳はどうしているの?」
「子供たち自身で行います」
スープは巨大な寸胴二つに作られていた。
パンも袋にぎっしと詰まっていた。
今日は何かのフライのようで、大きなフライヤーが三つ、盛大に泡立っていた。
「食事環境はいいのね?」
「はい、栄養面には十分に気をつけて、健康管理はしっかりと行なっています。看護士は病院勤めの子供たちが担当しています」
「病院って、子供が働いているの?」
「ええ、十二歳から勤務可能ですが……」
カインが、知らないのですか、と言う目をシロに向けていた。
シロが世間知らずのお嬢様だってバレたな、これは。
独り立ち支援制度は、孤児や家庭環境のよくない子供たちが犯罪に走らないようにする目的もある。
腹一杯食べられれば、人は余裕が出て、悪の道には進まないものだ。
「食事は合格のようだな。子供たちが給仕当番というのもいい。一部は働きに出ているのか?」
「はい、専門技術を身につけさせるためです」
「その方が高く売れるからか?」
「そ、そうですが、就きたい職業に就かせていますっ。売られると分かってしまうと精神的に病んでしまいますし、やりたくないことをさせるのもストレスが溜まりますから」
カインが言い訳に必死だ。
「ふん。商品として磨くためだろうが。ここでは楽しい思いをするが、突然、奴隷か娼婦として売られるわけか。まさに天国から地獄だな」
「でも、逆に言えば、身売りをやめれば、今の運営でも掃除以外は問題ないってことじゃない?」
確かにそう言えるが……。
「カインからの一方的な説明だけでは判断できないな。子供からも話を聞こう」
俺たちは子供たちと一緒に夕食を取ることにした。
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