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カイン

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「目的? あなたを殺すこと」

 と言ってから、シロは間をおいた。

「ではないわね。まず、子供への支援制度だけど、王妃様の本来の意向に忠実に沿った内容での運営に変更しなさい。そうすれば、殺さないであげるわよ」

 俺はすぐに補足した。

「王妃様の善意を踏みにじるような真似は許さないぞ。今後は我々がギルドを監視するつもりだが、運営内容が少しでも王妃様の意に沿わないものであったら、その場でお前を処刑する。役に立たない悪党は生きている価値はないからな」

「かしこまりました」

 カインは素直に承諾した。

 何だこの男は? あっさりと従うのだな。

 計算高そうな男だ。俺たちに逆らうのは損と考えたのだろう。

「ただ、そうなると、私は私のボスに殺されてしまいます」

 少し間を空けて、カインが付け加えた。

「そんなことは俺たちの知ったことではない。俺たちからもお前のボスからも殺されないよう頑張るんだな」

 俺は突っぱねたが、シロは話の分かるいいお姉さんになりたいらしい。

「クロと違って慈悲深く優しい私は、お前にいいことを教えてあげるわ。お前のボスのレイン子爵は私たちに従うそうよ。それと、裏ボスのプリシアは、じきに粛正されるわよ」

「シロ、こんな男は死んだ方がいいのに、おせっかいなことだ」

「殺すことはいつでも出来るわよ。悪知恵の働く男は、使えるうちは使った方がいいわ」

「ありがとうございます。仰せのとおり、支援制度を本来の形で運用するようにします」

「ふん、調子のいい男だ。そうだ。子供寮に案内してもらおうか。どのように運用を立て直すか、さっそく見せてもらおう」

「かしこまりました。ジェシー、ついて来てくれるか」

 カインが後ろに控えていた女性に声をかけた。

 陰気女はジェシーというのか。

「ところで、この人相の悪い男たちはこのまま捨てていくのか?」

 俺はホールの中心に重ねて積み上げた男たちを指差した。

「ええ、死んではいないのでしょう?」

 カインはあまり気にしていない素振りだ。

「死んではいないが、放っておくと死ぬかも……」

「ジェシー、病院に連絡を頼む。私がお二方を子供寮にご案内するから、後から子供寮に来てくれ」

 カインという男、実に冷めた感じだな。

 俺たちにも何のこだわりもなく、気持ち悪いぐらい従順だ。

 信頼はできないが、仕事は出来るのだろう。

 シロの言うとおり、使えるうちは使った方がいい。

 カインと一緒にギルドを出ていこうとしたシロが、歩き出さないでいる俺を振り返った。

「クロ、行くわよ」

「ああ」

 ギルドには何人かがいたが、俺たちが出ていくとわかって、ほっとしたようだ。

 緊張していた雰囲気が弛緩していくのが分かる。

 子供支援制度で子供たちを食い物にしていたカインだが、商業ギルドの通常業務はそつなくこなしていたようだ。

 モナリザ先生の調査でも、カインの評判は悪くはないとのことだった。

 頭の切れる悪人か。

 使えるだけ使って、殺してしまうに限る。
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