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エレキテル

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「何なのです。手数料とは?」

 イライザが気丈にもギルドの職員とやり合っている。

「お嬢様、支援制度でお店を出しているんですから、売上の七割は手数料として納めてもらわないと。決まりですから」

 商業ギルドは五人のガラの悪い男を送り込んできた。

 客がそそくさと店から出ていく。

「ここの敷地はエドモンド商会から借りておりますし、住んでいるところもエドモンド商会の持ち家ですよ。ギルドのお世話にはなっておりませんが」

「この町で商売するにはギルドの登録が必要でしょう。エドモンド商会も登録されておられますよ。お嬢様だけ特別扱いできませんよ」

「だとしても、七割って何ですの?」

「支援制度の決まりでろ」

 イライザに迫っていた男が目を剥いて倒れた。

「「モノクロ参上」」

 俺とシロは背中を合わせて腕をくみ、店の入り口に立っていた。

「いつからギルドはショバ代を巻き上げるゴロつき集団になったんだ? お嬢さん、大丈夫ですか? 俺はモノクロのクロです」

 イライザ、シルフって呼ばないでね

「あ、クロ様っ。私、怖かったです」

 イライザが小走りで俺に抱きついて来た。

 案外ノリがいいな。

 あら? 子供の匂いがする。

 うーむ、大人びているかと思ったが、やはりまだ子供だな。

「お嬢さん、頑張りましたね。さあ、危ないですから、あちらの方のところに行って、俺たちの戦いぶりを見ていてください」

 俺はイライザをエマに任せた。

「おほほほ、お子ちゃま劇場は終わったかしら」

「俺をディスってどうするんだ、シロ?」

「そ、そうだったわね。クロ、謝るわ」

「さすがだ、シロ。悪いことをしても謝る大人はなかなかいない。そこのギルドの腐れ職員、謝るなら許してやってもいいぞ」

「さっきから何だよ、てめえらは。ってか、お姉さんの方、目元しか見えないが、激マブじゃないか? それともマスク美人ん~」

 また一人、倒れた。白目を剥いて痙攣している。

 超絶魔法エレキテル。

 電気を扱う魔法だ。

 今回は人体を流れる電気を増幅させ、ショートさせた。

 脳波を増幅させるとああなる。

 心臓を狙うと死ぬ。

「私はマスクをとっても美人だけど、残念ながらあなたたちにはお見せできないわ。で、次は誰が倒れる番?」

「お、お前たち、何をしたん~」

 もう一人倒れた。

 簡単に仲間が倒れていくのを見て、残った二人はようやく悟った。

 とんでもない化け物と対峙しているということを。

「どうかしら? そろそろ素直になれたんじゃないかしら」

 シロはローブを捲り上げ、ローブの下のミニスカートの美脚を披露して、倒れている男の上に片足を乗せてポーズをとった。

 めっちゃ格好いいが、女が素肌をほととんど見せないこの世界では、ミニスカートは刺激が強すぎる。

 しかも、パンチラしてないか?

 男二人の目はシロの脚に釘付けだ。

「シロの綺麗な足をそんな目で見ちゃいけないな」

 俺はソニックウェーブで二人の脳をやんわりと揺すった。

 男二人が頭を抱えてうずくまった。

「そこの三人は気絶しているだけだけど、殺すこともできるのよ。お前たちのような悪党は殺してもいいんだけど、お店にシミがついちゃうから、殺すなら外にするわ。さあ、まずは倒れている三人を外に出しなさい」

 殺すなら外と言った後に外に出せって、シロはエグいな。

「こ、殺さないでください。私たちはギルドに雇われたのです」

「お前、喋っている暇があったら、シロに言われた通り、早く三人を運び出せよ」

 男はギョッとして俺を見たが、すぐに残った二人で倒れている男三人を順番に店の外に出した。

 男たちが店からいなくなり、イライザはホッとしたようだ。

「イライザさん、エマさんと一緒にエドモンド商会でランチして来て下さい。エマさん、よろしくお願いします」

「か、かしこまりました」

 エマは少し俺たちのことが恐ろしくなったのかもしれない。

 強張った顔のまま、イライザを連れて、工房の方に入っていった。

 さて、先にギルドを潰しておくか。
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