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幼妻?

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 朝早く起きて、剣の訓練を行なう。

 毎日の日課だ。

 イライザはいつも黙って訓練の様子を見ている。

 朝食はエマが用意してくれて、おしゃれなリビングで、イライザと一緒に食べる。

 その後、イライザとエマと一緒に魔道具屋まで出勤する。

 結局、俺は流されるだけ流されて、魔道具屋の店舗もエドモンド商会の本店の敷地内に用意してもらった。

 接客は大人のエマに任せて、俺はバックヤードの工房で魔道具の製作に勤しむ。

 イライザは容器の製造や装飾で大活躍してくれた。

 俺は、毎日、魔力が切れるまで魔道具を作り続けた。

 修行と金儲けの一石二鳥だ。

 魔力切れ後、一時間ほど休んでから帰宅して、エマの作った夕食をイライザと食べる。

 そして、夜はベルンの練習だ。

 一日二時間は練習する。

 イライザは黙って聞いている。

 完全にイライザが奥さんみたいになってしまった。

 実に甲斐甲斐しく尽くしてくれるのだ。

(まずい、惚れてしまいそうだ)

 王子は侯爵以上でないと娶れない。

 また、国教で一夫一妻と決められているため、側室は持てない。

(不幸な恋だ。惚れてしまわないようにしないと)

「イライザさん、どうしたのですか?」

 ある晩、イライザが夜遅く俺の部屋に来た。

「シルフ様、何だか物音がして、怖くて眠れないのです」

(やばい、これは、実にやばい)

「護衛の人に来てもらいましょうか?」

「いいえ、大丈夫です。落ち着くまで、少しお話し相手になっていただけますか?」

(ちょっと待てよ。俺は意識し過ぎかもしれない。八歳と十二歳なんて、お子ちゃまじゃないか。ただ、イライザは話し方も仕草も大人びていて、子供って感じではないんだけどな)

「はい、いいですよ。どんなお話でしょうか?」

「なぜ私がシルフ様と暮らすことにエドモンド商会は全面支援するか、ご存知でしょうか」

「いいえ、何故でしょうか? 魔法が使えるからですか?」

「シルフ様のご正体に見当がついているからですわ。私は、父からシルフ様のお世話をするようにと言われております」

 イライザが恥ずかしそうに顔を伏せた。

 この表情が子供ではないのだ。

 いくら何でも十二歳に手を出すなよ、俺……。

 それはそうと、正体バレてる?

「父親に従う必要はないと思いますよ」

「私の意思ですわ」

 うーむ、俺も規格外の八歳だが、イライザも中身は大人なんじゃないのか?

「イライザさん、お店でお手伝いいただいて、本当に助かっています。しばらくこんな感じで、一緒に商売して行きませんか? 私はまだまだ子供ですので、まだ将来どうしたいとか定まってませんので」

 あ、イライザが嬉しそうだ。

 この表情は可愛いすぎる。

「はい、ありがとうございます。夜遅くお邪魔してしまって、申し訳ございませんでした」

 そうか、正体バレてるか。

 騒ぎだてしなければ、バレていても別にいい。

 イライザが部屋を出て行ってしばらくして、ミラ姉からの念波が届いた。

(シルフィ、どこにいる?)
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