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剣術師範
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俺は三歳になった。
魔法の訓練はミラ姉と毎日やっている。
ミランダさんがミラ姉と呼べというから、そう呼んでいる。
魔力はかなり増えたが、その分枯渇したときの気持ち悪さが半端ない。
正直サボりたいのだが、ミラ姉も一緒に訓練して、俺以上に辛そうなので、何とか我慢出来ている。
魔力の増加は十八歳で止まるのだそうだ。
ミラ姉は十八なので、もうほとんど増えないらしい。
俺は三年間でほぼ全ての魔法の発動方法を教わったが、魔力が足りなくて発動できない魔法が九つある。
超絶魔法と呼ばれる魔法で、一つ使えるだけでも、国を支配できると言われている。
それをミラ姉は五つも使える。
ミラ姉がいるだけで、他国は王国に強気に出られない。
そのため、ミラ姉は各国のスパイから常に命を狙われているらしい。
「頑張って来たけど、行けて七つまでだな。シルフィは九つ全部使えるようになって、私に時空魔法を見せてくれ」
最後の二つは時間魔法と空間魔法らしい。
「頑張ります」
俺は話せるようになっていた。
「でも、今日から剣術も始まります。魔力枯渇状態では立つこともできないです」
「シルフィ」
「何でしょう?」
「気力だ。気力で乗り切るのだ」
無理だろう、それ。
そして、魔力枯渇状態でミラ姉と二人で倒れているところに、剣術師範がやって来た。
「シルフィ様、王子たるもの、常に堂々と姿勢良くしていて下さいませ」
見上げると、金髪碧眼の男前美女がすらりと立っていた。
え? 女騎士?
「す、すいません。魔力枯渇状態で、立てないのです」
俺は息も絶え絶えで返答した。
「あ、ミランダ様まで! 淑女たるもの、常にお淑やかに姿勢良くしていて下さいませ」
「オスカル、魔力が枯渇すると、本当に立てないのだ」
ミラ姉も苦しそうに答えている。女騎士とは知り合いのようだ。
「なるほど。致し方ないですな。それでは、本日は寝ている敵の攻撃方法をお教えしましょう。申し遅れました。私は王国女性騎士団団長のオスカルと申します。王子様が八歳になられるまで、剣術をご指導致します。では、いざ参らん」
オスカルは倒れている俺の足を剣で打ってきた。
とっさになけなしの魔力で守備の魔法を唱えてガードする。
すぐに魔力が枯渇して、耐え難い悪寒が襲って来る。
気持ち悪くてたまらない。剣で打たれた方がマシじゃないか?
「ほう。とっさに守備魔法で防御なさるとは、見込みがございますぞ。寝ている敵は、逃げられないように、まずは足を封じます。膝か足首を狙って下さい。ここです」
「あいっ」
膝の痛いところを突かれた。
「王子様の大切なお体に傷はつけません。明日には傷が引くよう治癒を施しますのでご安心下さい。それと、ここです」
「い、痛い、痛い」
足首のくるぶしを左右はたかれた。
「シルフィ様、どこを攻撃するべきか、痛みで覚えて下さい。さあ、ミランダ様、治癒魔法をお願いします」
何だ? オスカルが治癒するのではないのか?
「オスカル、私も魔力が枯渇しているのだぞ」
「ミランダ様、シルフィ様の可愛らしいお体にアザがついてしまいます。それに枯渇状態からの枯渇は、魔力増強にはもってこいではありませんか」
「いや、苦しいわりにはほとんど効果がないのだ。ええい、ち、治癒……」
ミラ姉は脂汗を流しながら、俺に治癒魔法をかけてくれた。
痛みがすぐに引いていく。
「明日からは剣術の稽古を最初に行い、その次に魔法の訓練という順番にしましょう。今日はもう無理そうですから、これで終わりにします。さあ、抱っこさせて下さい」
オスカルは俺を抱いて、頬を擦り寄せて来る。
「うーーん、ステーシア様に似ていらっしゃって、かわゆいのでちゅねえ。食べちゃいたいわあ」
何なんだ、このお姉さんは。
王宮は美人だらけだが、おかしな性格の人ばかりだ。
だが、オスカルの指導はそれは厳しいものだった。
オスカルは俺のことが大好きなようで、厳しいのは俺の命を守るためだというのがよく分かるから、何とか我慢できた。
ふと思ったが、魔法も剣術も、教師が美人じゃなかったら、とても我慢できないぞ。
魔法の訓練はミラ姉と毎日やっている。
ミランダさんがミラ姉と呼べというから、そう呼んでいる。
魔力はかなり増えたが、その分枯渇したときの気持ち悪さが半端ない。
正直サボりたいのだが、ミラ姉も一緒に訓練して、俺以上に辛そうなので、何とか我慢出来ている。
魔力の増加は十八歳で止まるのだそうだ。
ミラ姉は十八なので、もうほとんど増えないらしい。
俺は三年間でほぼ全ての魔法の発動方法を教わったが、魔力が足りなくて発動できない魔法が九つある。
超絶魔法と呼ばれる魔法で、一つ使えるだけでも、国を支配できると言われている。
それをミラ姉は五つも使える。
ミラ姉がいるだけで、他国は王国に強気に出られない。
そのため、ミラ姉は各国のスパイから常に命を狙われているらしい。
「頑張って来たけど、行けて七つまでだな。シルフィは九つ全部使えるようになって、私に時空魔法を見せてくれ」
最後の二つは時間魔法と空間魔法らしい。
「頑張ります」
俺は話せるようになっていた。
「でも、今日から剣術も始まります。魔力枯渇状態では立つこともできないです」
「シルフィ」
「何でしょう?」
「気力だ。気力で乗り切るのだ」
無理だろう、それ。
そして、魔力枯渇状態でミラ姉と二人で倒れているところに、剣術師範がやって来た。
「シルフィ様、王子たるもの、常に堂々と姿勢良くしていて下さいませ」
見上げると、金髪碧眼の男前美女がすらりと立っていた。
え? 女騎士?
「す、すいません。魔力枯渇状態で、立てないのです」
俺は息も絶え絶えで返答した。
「あ、ミランダ様まで! 淑女たるもの、常にお淑やかに姿勢良くしていて下さいませ」
「オスカル、魔力が枯渇すると、本当に立てないのだ」
ミラ姉も苦しそうに答えている。女騎士とは知り合いのようだ。
「なるほど。致し方ないですな。それでは、本日は寝ている敵の攻撃方法をお教えしましょう。申し遅れました。私は王国女性騎士団団長のオスカルと申します。王子様が八歳になられるまで、剣術をご指導致します。では、いざ参らん」
オスカルは倒れている俺の足を剣で打ってきた。
とっさになけなしの魔力で守備の魔法を唱えてガードする。
すぐに魔力が枯渇して、耐え難い悪寒が襲って来る。
気持ち悪くてたまらない。剣で打たれた方がマシじゃないか?
「ほう。とっさに守備魔法で防御なさるとは、見込みがございますぞ。寝ている敵は、逃げられないように、まずは足を封じます。膝か足首を狙って下さい。ここです」
「あいっ」
膝の痛いところを突かれた。
「王子様の大切なお体に傷はつけません。明日には傷が引くよう治癒を施しますのでご安心下さい。それと、ここです」
「い、痛い、痛い」
足首のくるぶしを左右はたかれた。
「シルフィ様、どこを攻撃するべきか、痛みで覚えて下さい。さあ、ミランダ様、治癒魔法をお願いします」
何だ? オスカルが治癒するのではないのか?
「オスカル、私も魔力が枯渇しているのだぞ」
「ミランダ様、シルフィ様の可愛らしいお体にアザがついてしまいます。それに枯渇状態からの枯渇は、魔力増強にはもってこいではありませんか」
「いや、苦しいわりにはほとんど効果がないのだ。ええい、ち、治癒……」
ミラ姉は脂汗を流しながら、俺に治癒魔法をかけてくれた。
痛みがすぐに引いていく。
「明日からは剣術の稽古を最初に行い、その次に魔法の訓練という順番にしましょう。今日はもう無理そうですから、これで終わりにします。さあ、抱っこさせて下さい」
オスカルは俺を抱いて、頬を擦り寄せて来る。
「うーーん、ステーシア様に似ていらっしゃって、かわゆいのでちゅねえ。食べちゃいたいわあ」
何なんだ、このお姉さんは。
王宮は美人だらけだが、おかしな性格の人ばかりだ。
だが、オスカルの指導はそれは厳しいものだった。
オスカルは俺のことが大好きなようで、厳しいのは俺の命を守るためだというのがよく分かるから、何とか我慢できた。
ふと思ったが、魔法も剣術も、教師が美人じゃなかったら、とても我慢できないぞ。
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