王子に転生したのですが、教育が厳し過ぎるので家出しました。神の加護で魔法が出来ますので、身分を隠して、魔道具屋を始めようと思います

もぐすけ

文字の大きさ
上 下
4 / 30

剣術師範

しおりを挟む
 俺は三歳になった。

 魔法の訓練はミラ姉と毎日やっている。

 ミランダさんがミラ姉と呼べというから、そう呼んでいる。

 魔力はかなり増えたが、その分枯渇したときの気持ち悪さが半端ない。

 正直サボりたいのだが、ミラ姉も一緒に訓練して、俺以上に辛そうなので、何とか我慢出来ている。

 魔力の増加は十八歳で止まるのだそうだ。

 ミラ姉は十八なので、もうほとんど増えないらしい。

 俺は三年間でほぼ全ての魔法の発動方法を教わったが、魔力が足りなくて発動できない魔法が九つある。

 超絶魔法と呼ばれる魔法で、一つ使えるだけでも、国を支配できると言われている。

 それをミラ姉は五つも使える。

 ミラ姉がいるだけで、他国は王国に強気に出られない。

 そのため、ミラ姉は各国のスパイから常に命を狙われているらしい。

「頑張って来たけど、行けて七つまでだな。シルフィは九つ全部使えるようになって、私に時空魔法を見せてくれ」

 最後の二つは時間魔法と空間魔法らしい。

「頑張ります」

 俺は話せるようになっていた。

「でも、今日から剣術も始まります。魔力枯渇状態では立つこともできないです」

「シルフィ」

「何でしょう?」

「気力だ。気力で乗り切るのだ」

 無理だろう、それ。

 そして、魔力枯渇状態でミラ姉と二人で倒れているところに、剣術師範がやって来た。

「シルフィ様、王子たるもの、常に堂々と姿勢良くしていて下さいませ」

 見上げると、金髪碧眼の男前美女がすらりと立っていた。

 え? 女騎士?

「す、すいません。魔力枯渇状態で、立てないのです」

 俺は息も絶え絶えで返答した。

「あ、ミランダ様まで! 淑女たるもの、常にお淑やかに姿勢良くしていて下さいませ」

「オスカル、魔力が枯渇すると、本当に立てないのだ」

 ミラ姉も苦しそうに答えている。女騎士とは知り合いのようだ。

「なるほど。致し方ないですな。それでは、本日は寝ている敵の攻撃方法をお教えしましょう。申し遅れました。私は王国女性騎士団団長のオスカルと申します。王子様が八歳になられるまで、剣術をご指導致します。では、いざ参らん」

 オスカルは倒れている俺の足を剣で打ってきた。

 とっさになけなしの魔力で守備の魔法を唱えてガードする。

 すぐに魔力が枯渇して、耐え難い悪寒が襲って来る。

 気持ち悪くてたまらない。剣で打たれた方がマシじゃないか?

「ほう。とっさに守備魔法で防御なさるとは、見込みがございますぞ。寝ている敵は、逃げられないように、まずは足を封じます。膝か足首を狙って下さい。ここです」

「あいっ」

 膝の痛いところを突かれた。

「王子様の大切なお体に傷はつけません。明日には傷が引くよう治癒を施しますのでご安心下さい。それと、ここです」

「い、痛い、痛い」

 足首のくるぶしを左右はたかれた。

「シルフィ様、どこを攻撃するべきか、痛みで覚えて下さい。さあ、ミランダ様、治癒魔法をお願いします」

 何だ? オスカルが治癒するのではないのか?

「オスカル、私も魔力が枯渇しているのだぞ」

「ミランダ様、シルフィ様の可愛らしいお体にアザがついてしまいます。それに枯渇状態からの枯渇は、魔力増強にはもってこいではありませんか」

「いや、苦しいわりにはほとんど効果がないのだ。ええい、ち、治癒……」

 ミラ姉は脂汗を流しながら、俺に治癒魔法をかけてくれた。

 痛みがすぐに引いていく。

「明日からは剣術の稽古を最初に行い、その次に魔法の訓練という順番にしましょう。今日はもう無理そうですから、これで終わりにします。さあ、抱っこさせて下さい」

 オスカルは俺を抱いて、頬を擦り寄せて来る。

「うーーん、ステーシア様に似ていらっしゃって、かわゆいのでちゅねえ。食べちゃいたいわあ」

 何なんだ、このお姉さんは。

 王宮は美人だらけだが、おかしな性格の人ばかりだ。

 だが、オスカルの指導はそれは厳しいものだった。

 オスカルは俺のことが大好きなようで、厳しいのは俺の命を守るためだというのがよく分かるから、何とか我慢できた。

 ふと思ったが、魔法も剣術も、教師が美人じゃなかったら、とても我慢できないぞ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

スキル【レベル転生】でダンジョン無双

世界るい
ファンタジー
 六年前、突如、異世界から魔王が来訪した。「暇だから我を愉しませろ」そう言って、地球上のありとあらゆる場所にダンジョンを作り、モンスターを放った。  そんな世界で十八歳となった獅堂辰巳は、ダンジョンに潜る者、ダンジョンモーラーとしての第一歩を踏み出し、ステータスを獲得する。だが、ステータスは最低値だし、パーティーを組むと経験値を獲得できない。スキルは【レベル転生】という特殊スキルが一つあるだけで、それもレベル100にならないと使えないときた。  そんな絶望的な状況下で、最弱のソロモーラーとしてダンジョンに挑み、天才的な戦闘センスを磨き続けるも、攻略は遅々として進まない。それでも諦めずチュートリアルダンジョンを攻略していたある日、一人の女性と出逢う。その運命的な出逢いによって辰巳のモーラー人生は一変していくのだが……それは本編で。 小説家になろう、カクヨムにて同時掲載 カクヨム ジャンル別ランキング【日間2位】【週間2位】 なろう ジャンル別ランキング【日間6位】【週間7位】

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

処理中です...